アルバム「不出来」の1曲目でもあるカオティックな曲「模造紙ヒデキちゃん」でライブはスタート。断片と化した声が流れる中、中嶋イッキュウ(Vo, G)が空気を切り裂くようなギターノイズを発し、ほかのメンバーも順番にステージに上って演奏に参加していく。その後も「アンドロイド」「冗談検定」と、アルバム「不出来」からの新曲を連発。鋭く尖ったギターと、荒々しく地を這うベース、手数の多いタイトなドラム、そして艶めかしさを含んだボーカルが渾然一体となって独自の世界を作り出した。その強烈なステージングに圧倒されているかに見えたオーディエンスだったが、続く「おもてなし」で一気に熱狂。曲が終わった瞬間、満員のフロアから大歓声が沸き上がった。
鳴り止まない拍手の中で、中嶋は「『不出来』というアルバムを出しての『Zang-Neng tour』というツアーなので、今日は一番不出来なライブをして帰ろうと思います」と冗談めかして挨拶。その言葉の通りに実行したのか、「おちゃんせんすぅす」の終盤に中嶋のギターソロを軸とした各メンバーとの掛け合いセッションが披露されるも、なんとも“Zang-Neng”な出来に。これについて中嶋は「いつもは私がギターソロをやらせてもらってるんだけど、今日はみんなで一緒にやれてうれしかった。バンドって感じがした」と喜びつつ、「tricotの曲の中で『おちゃんせんすぅす』が一番好きという人には本当に申し訳ない瞬間でした。CD通りのところがほとんどなかったので……」と笑っていた。
ライブが折り返し地点を過ぎ、「#アチョイ」を皮切りにアルバム「不出来」に収録されているバラエティに富んだ曲を4人は次々に繰り出していく。そして中嶋は「よくも悪くも、すごいアルバムを作ってしまったんですけど、そのアルバムのツアーにたくさん人が来てくれて、なんならいつもより盛り上がっているのを見ると、『変な人たちばっかりやな』と思ってしまいます。幼い頃からちょっと変だと言われることが多かったんですけど、こんなに仲間がいるなら変もアリかなと思えてきました」と、観客に笑顔で語りかけた。そしてライブ本編はテレビドラマ「夫婦円満レシピ~交換しない?一晩だけ~」のオープニングテーマである、バンド屈指のポップチューン「アクアリウム」でハッピーな空気の中フィナーレを迎えた。
アンコールで再びステージに姿を現した4人は、「POOL」を経てグランジ調のアルバム表題曲「不出来」をパフォーマンス。どこか脱力した演奏は曲が進むにつれてどんどんノイズをまとい始め、耳をつんざくような大音量のノイズショーになだれ込んでいった。そしてこの日の1曲目「模造紙ヒデキちゃん」での演出を逆再生するように1人ずつメンバーがステージを去り、最後に1人残ったキダ モティフォ(G, Cho)が強烈なフィードバック音を発振。神々しい光を浴びながら数分間にわたって会場を強烈な爆音で包んだのち、キダはギターを置いて袖に消えた。その後、誰もいないステージにスポットライトが当たり、in the blue shirtがリミックスを手掛けた「上出来 - 不出来Remix」が流れてライブは終幕した。
なお、このライブの中で5月27日に大阪・GORILLA HALL OSAKAでtricot主催イベント「爆祭Vol.15~イッキュウ爆誕祭~Vol.19でやれよな~」が開催されることがアナウンスされた。このイベントには中嶋がボーカルを務めるもう1つのバンド、ジェニーハイも出演。彼女はこのライブの2日後に誕生日を迎えるということで、当日は今までにない特別な1日になることが期待できそうだ。
tricot「Zang-Neng tour 2023」2023年2月12日 LIQUIDROOM セットリスト
01. 模造紙ヒデキちゃん
02. アンドロイド
03. 冗談検定
04. おもてなし
05. 右脳左脳
06. アナメイン
07. おちゃんせんすぅす
08. WARP
09. #アチョイ
10. OOOL
11. crumb
12. 秘蜜
13. 鯨
14. ステンノー
15. あふれる
16. アクアリウム
<アンコール>
17. POOL
18. 不出来
19. 上出来 - 不出来Remix
※記事初出時、カメラマンクレジットに誤りがありました。お詫びして訂正します。
となりのぽんたさん @nijiiro_ponta
@natalie_mu 写真…ツアーファイナル感ないしメンバーの良さもよくわからない…ちょっと残念です…