開演前からオーディエンスの注目を集めるのは、ステージの真ん中にそびえ立つ大きな謎の卵。場内には獣のようなおぞましいうめき声が鳴り響く。うめき声はどんどん大きくなり、会場が暗転。ステージには宇宙開発を行っているという科学技術会社・RABBIT TO THE MOONのアンドロイド“E9”が現れ、この卵が地底人の卵であることを話し始めた。彼女の話によると、RABBIT TO THE MOONは人類の限界を超えた新たな生命体として地底人を作り出そうとしているらしい。彼女は「皆さんに目の前にある卵を孵化させる瞬間をお見せしたいと思います。しかし、この卵が孵化するにはいくつかの条件がございます」と話し、研究員にバトンタッチ。研究員は地底人が化学物質とウサギの遺伝子を掛け合わせて作った人工生命体であること、そして卵を孵化させるには会場の音と体温が関係してくることを説明した。研究員が「今からお前たちにやってもらうことは簡単だ。この会場にWurtSというアーティストを連れてきた。彼のライブを全力で楽しむこと、ただそれだけだ。それでは実験開始」と述べると、ステージにバンドメンバー、DJのウサギ、WurtSが登場。WurtSはギターを携え、11月16日にリリースしたEP「MOONRAKER」の収録曲「コズミック」で“実験”をスタートさせた。
少年性のある気だるげな歌声と歪んだギターサウンドが溶け合うように場内に広がり、会場の温度はたちまち上昇。WurtSのバックに立つウサギもノリノリで無邪気に踊る。キャッチーなギターリフで始まったのは「魔法のスープ」。ビビッドなライトに彩られながらWurtSとバンドメンバーが開放感のあるメロディを思いきり放つと、オーディエンスは共鳴するように腕を高く掲げた。
その後WurtSは「僕の個人主義」で鮮烈なサウンドをバックにシニカルな言葉を吐き捨てるように歌った。「オブリビエイト」を軽やかに届けたあと、彼はひと呼吸置き、「改めまして、WurtSです」とフレンドリーに観客に手を振って挨拶。そして「もうツアーファイナルなのかという気持ち。この1年の集大成を見せられたらいいなと思っているので、今日は楽しんで帰ってください」と声を弾ませ、心地のいい空気が流れるナンバー「BOY MEETS GIRL」をスタンドマイクで歌い上げた。「NERVEs」ではハンドマイクでステージを歩きながらリリックを放ち、お立ち台に上がってフロアを見渡す。フロアではスケール感のあるEDMサウンドに身を委ねてオーディエンスが自由に体を揺らした。続く「Talking Box(Dirty Pop Remix)」でもダンサブルなビートに合わせて観客が飛び跳ね、ダンスフロアと化した会場にはますます熱気があふれていく。WurtSとウサギのみで届けたのはメロディアスなナンバー「Capital Bible」。WurtSはスタンドマイクの前に立ち、胸をくすぐるようなチルなトラックに乗せてリリックを紡いだ。
WurtSとウサギが一度ステージをあとにすると、ステージ上の大きな卵の殻にピキッとヒビが入る。するとアンドロイド・E9がステージに現れ、「やつらに操られていたわ! みんなよく聞いて、これは罠よ!」と焦った様子で観客に呼びかけた。E9は「地底人の卵は別名・悪魔のしもべ。彼らを誕生させてはならない。今すぐここから……」と言葉を続けようとするも、背後から研究員が現れてE9のスイッチを切ってしまう。「すまない、邪魔が入った」と研究員がE9を抱えて舞台を去ると、WurtSとバンドメンバーは「SPACESHIP」で実験を再開した。ウサギはステージの前方に進み出て、右手を上げてWurtSとともに観客を扇動。続いてマーチングドラムから始まるEDMナンバー「SWAM」を投下すると、観客の興奮は目に見えるように一層高まっていった。
最新EPの表題曲「MOONRAKER」では月のようなミラーボールの光が広がる景色の中でドラマティックな世界観が描かれた。「ブルーベリーハニー」からはWurtSが再びギターを手に取って演奏。甘いメロディを歌いながら軽やかに音を奏で、「分かってないよ」ではみずみずしいギターサウンドを感情を解放するように響かせた。ウサギがコミカルに踊ったディスコ調のナンバー「リトルダンサー」を経て、ライブは終盤へ。WurtSは「SIREN」を疾走感のあるビートに乗せてクールに歌い上げたかと思えば、「しゃべることをメモに書いてたのに全部忘れちゃった」とあどけなく述べ、無意識のギャップで自然と観客を惹き付けた。最後に彼は「もうすぐ12月でということで、クリスマスの歌を歌いたいと思います」と話し、90年代のJ-POPを感じさせるクリスマスソング「サンタガール」を披露。レトロなサウンドときらめくようなメロディに合わせて、オーディエンスがゆったりと左右に手を振ってピースフルな光景が広がった。
観客がアンコールを求める拍手を贈ると、ステージには研究員が登場。「実験は失敗してしまった」と研究員が述べるも、次の瞬間に卵からピキっという音が聞こえる。「何? 卵が動いた……! お前たち、これが最後のチャンスだぞ」と研究員が言い残して舞台を去ると、入れ替わるようにWurtSとバンドメンバーがステージに姿を現した。
WurtSがギターを熱くかき鳴らして演奏し始めたのは「ふたり計画」。その熱につられるように会場のボルテージは一気に上がり、すさまじいエネルギーが充満していく。WurtSは「TikTokでお題を集めて曲を作る、みたいなことをしていたんですよ。けっこう前からちょっとずつ作っていて。急なんですけど、それを披露してみようかなって。うまくできるかわからないんですけど、デモみたいな感じで聞いてくれたらうれしいです」と話し、未発表の新曲「COOLじゃない?」をパフォーマンス。等間隔の心地のいいビートに乗せてナチュラルに言葉を紡ぎ、「これもいつか出したいなと思ってるので、楽しみにしていてください。本当に今日はありがとうございました。ツアーをやってきてちょっと成長できたかなと思います。自分の進化を最後の曲で披露したいです」と述べた。WurtSによると、地底人の卵がどうなるのかという結末は、次のミュージックビデオにつながっていくらしい。「じゃあ一緒に卵、割っちゃいましょう!」と彼は観客に呼びかけ、最後にハンドマイクで「地底人」をリラックスした様子で届けた。
WurtSとバンドメンバーがステージを去ったあとも、暗闇の中で大きな卵が存在感を放つ。うめき声が響きわたり、舞台は赤い照明に照らされて場内は不穏な雰囲気に包まれた。アンドロイド・E9が「遅かったか……!」とステージに駆け込み、「あなたたち、何をしたかわかってるの? 地底人たちはこれから10年もの間、人間によって残酷な実験の被験者になるのよ! あなたちは悪魔を生み出した。いや、あなたたちが悪魔のしもべなのよ」と言い放つ。次の瞬間、卵が割れて隙間からぎょろっと目玉がのぞき、観客のどよめきの中でこの日の実験は幕引きとなった。
WurtSは2023年3月よりライブハウスツアー「WurtS LIVEHOUSE TOUR I」を開催する。WurtSのオフィシャルアプリでは、有料会員を対象にチケットの先行予約を12月6日まで受け付けている。
WurtS「WurtS LIVE 2022」2022年11月29日 Zepp DiverCity(TOKYO) セットリスト
01. コズミック
02. 魔法のスープ
03. 僕の個人主義
04. オブリビエイト
05. BOY MEETS GIRL
06. NERVEs
07. Talking Box(Dirty Pop Remix)
08. Capital Bible
09. SPACESHIP
10. SWAM
11. MOONRAKER
12. ブルーベリーハニー
13. 分かってないよ
14. リトルダンサー
15. SIREN
16. サンタガール
<アンコール>
17. ふたり計画
18. COOLじゃない?
19. 地底人
WurtS LIVEHOUSE TOUR I
2023年3月24日(金)石川県 金沢EIGHT HALL
2023年3月26日(日)香川県 高松MONSTER
2023年3月28日(火)広島県 広島CLUB QUATTRO
2023年3月29日(水)福岡県 BEAT STATION
2023年4月7日(金)宮城県 Rensa
2023年4月9日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
2023年6月12日(月)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2023年6月13日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2023年6月26日(月)大阪府 BIGCAT
2023年6月27日(火)大阪府 BIGCAT
2023年7月5日(水)東京都 LIQUIDROOM
2023年7月6日(木)東京都 LIQUIDROOM
WurtS @wurts2021
ナタリーにて、「WurtS LIVE 2022」ツアーファイナルのライブレポートが公開されました👏👏👏
写真たっぷりです📸ただならぬ存在感だった“地底人の卵”も🥚当日のセトリは @SpotifyJP プレイリストでお楽しみください👇(スタッフ)
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