ツアータイトルに冠されている「RUMBLE FISH=闘魚」は美しく優美な容姿を持ちながら、雄同士が出会うと死闘を繰り広げる魚で、英語のスラングで「ケンカ」を意味する言葉。約3カ月に及んだ対バンツアーは追加公演の会場と同じZepp Haneda(TOKYO)で幕を開け、ROTTENGRAFFTY、coldrain、Dragon Ash、THE ORAL CIGARETTES、GASTUNK、TOTALFAT、Crossfaith、CVLTE、NOISEMAKERという9組を迎えて6都市のZeppで展開された。実質的なツアーファイナルとなった追加公演に招聘されたVAMPROSE所属のASH DA HEROは、HYDEの直系とも言える後輩。以前から親交を深めてきた2組の競演は、苛烈な盛り上がりを見せた。この記事では、2日間の公演のうち初日の模様をレポートする。
先攻を務めるASH DA HEROのメンバーはお馴染みのSE「Super Dinosaur」に乗せて、弾むような足取りで観客の前へ。フロントマンであるASH(Vo)はステージを踏み締めるように現れセンターに躍り出ると、「Are you fuckin' ready?」とHYDEのキメ台詞を拝借して、「HERO IS BACK 2」をフルスロットルで叩き込んだ。先輩に臆することなくNarukaze(G)、Sato(B)、WANI(Dr)、Dhalsim(DJ)もそれぞれの楽器を繰り、轟音とエネルギッシュなパフォーマンスでたちまち会場を飲み込んでいく。ASHは観客の反応を目にしながら「楽しめるやつ、どれだけいるんだよ? 規制がある中でも君たちだったらできるはず!」と激しく煽り、四つ打ちのビートで踊らせる「YELLOW FEVER DANCE」を皮切りに、「DAIDARA」「WARAWARA」とアグレッシブなロックチューンを連投。最新アルバム「Genesis」を引っ提げてのワンマンツアーも始まったばかりとあって、5人は勢いのある一枚岩のアンサンブルでオーディエンスを圧倒してみせた。
序盤から十二分にヒートアップしていたASH DA HEROだが、「最高ですね。全員120点満点! 最後のHYDEさんまでぶっ壊れていきましょう」と言い放ったASHの言葉を機に、「Genesis」の収録曲を中心とした最新のサウンドを観客に提示する。中でも出色だったのは、5つの青い照明を背にパフォーマンスされた「レーゾンデートル」。「憧れは 憧れって 割り切れば きっと 楽だよな」と歌うこの曲を、楽器隊のメンバーは凛とした表情を浮かべながら奏で、ASHはマイクを握り締めて歌詞の言葉1つひとつに力を込めた。
「このステージに立たせてもらっている意味……言葉にするととめどない思いがあふれ出てきて止まりません」。そんな言葉を神妙な表情で口にしたASHだったが、「名前だけでも覚えて帰ってください……なーんて言うつもりはさらさらありません。ちょっとでも『いい』と思ったらガッツリファンになって帰ってください! 大好きだからこそぶっ飛ばします」とHYDEに対して宣戦布告して「Just do it」につなげる。WANIが活躍するBPMの高いメロコアナンバー「Remember」を経て、5人は自分たちの世界に対するアティチュードをサウンドとリリックに込めた「世界をぶん殴れ」を豪快にプレイ。ステージに自分たちの存在を刻み付けるように縦横無尽に暴れ回り、徹頭徹尾自分たちのスタイルを貫いたステージングで約1時間の出番を駆け抜けた。
対するHYDEは4人のパフォーマーが担ぐ神輿の玉座に構え、覇者の貫禄を漂わせながら登場。「RUMBLE FISH」本編および各地の夏フェスでの経験を血肉にしたダイナミックなボーカルで「LET IT OUT」を絶唱し、たちまちフロアを狂騒状態に導く。さらに、間髪を入れずに「AFTER LIGHT」「DEFEAT」とライブの定番曲をリミッターを外したかのような勢いでパフォーマンス。後輩ASH DA HEROを圧倒する熱気を放ちながらその歌声を轟かせた。その後、「よく来ましたね」と穏やな声で口にするも、「これ(『RUMBLE FISH』)はナワバリ争いなんです。我々もナワバリ争いは負けてられません」と宣言したHYDE。彼はフェスでの声出しルールが話題になったことを率直に口にしながら、「我々がコロナ禍の中でも活動できていたのは、君たちが1つひとつ大事に俺たちを守ってくれたからだよな。この場所は君たちが守ったんだ!」と叫び、自身の楽曲の中でもひときわ攻撃力の高い「MAD QUALIA」で熱狂を煽る。さらにHYDEはライブではまだ一度も披露していなかった「ON MY OWN」を初パフォーマンスするというサプライズでファンを喜ばせた。
「今日はとうとうASH DA HEROと対バン。本当に素敵な後輩でギラギラとした、僕とは真逆な人間ですが、誕生日(の数字)が真逆なんです」とASHとの不思議な縁を語ったHYDEは、さまざまなバンドと熱戦を展開した「RUMBLE FISH」を振り返る。すべての競演アーティストがHYDEファンの温かな反応を絶賛していたことに言及し、「ASH DA HEROの最新アルバムが売れないと隠居できない(笑)」と冗談交じりにトーク。フロアに和やかな空気をもたらしつつ、“秘蔵っ子”と語るダークかつキャッチーなメロディが印象的な新曲「PANDORA」を初披露してフロアの盛り上がりを加速させた。「ANOTHER MOMENT」「DUALITY」「6 or 9」というライブ映えするナンバーを畳みかけ、会場のボルテージを十分に引き上げたところでHYDEは「ここで可愛い、ちょっと憎たらしいASH!」とASHを呼び込む。HYDEの力強い抱擁を受けたASHは、「物心ついたときからのロックスターと同じステージに立ってる。憧れている舞台とか、憧れている夢とかいろいろあるけど、信じ続けて、擦り傷作りながら、骨を折りながら、這いつくばって走り続けていれば夢は叶うということが証明できている気がします」と胸を張った。そこからマイクを手に向かい合った2人が歌い出したのは「GLAMOROUS SKY」。ロックスター然とした華やかな空気をまといながらHYDEとASHの2人は息の合ったハーモニーを響かせ、オーディエンスを魅了していく。ASHは間奏で即興のラップを繰り出し、この日限りのセッションに彩りを添えた。
「日本で一番最強のロックスター!」と言い残して疾風怒涛のように去ったASHを「かわいいでしょ?」と改めて紹介したHYDE。そして「やっぱりライブハウスはいいね。この距離感とみんなの笑顔がたまらないよね。みんなは僕に会えてうれしいだろうけど、僕もうれしいんだよ」と素直な感情をあらわにする。またさまざまな刺激を受けた対バンツアーについて改めて触れ、「ライブでは戦ってますが、(競演アーティストたちは)戦友みたいな気持ち」「(対バンでの経験を経て)次帰ってきたときはモンスターのようなバンドになっていたいと思うので、楽しみにしていてください」と未来への思いを馳せた。その後HYDEがさらなる飛躍を誓うように「BELIEVING IN MYSELF」をエモーショナルに歌い上げて、この日のライブはフィナーレへ。深い余韻が残る中、誰もいなくなったステージには、HYDEとASH DA HEROの“一騎討ち”を象徴するように向かい合った2匹の闘魚の姿がゆらめいていた。
「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」2022年9月4日 Zepp Haneda(TOKYO)公演セットリスト
ASH DA HERO
01. HERO IS BACK 2
02. YELLOW FEVER DANCE
03. DAIDARA
04. WARAWARA
05. Merry Go Round
06. エゴイスト
07. Avengers
08. レーゾンデートル
09. Just do it
10. Remember
11. 世界をぶん殴れ
HYDE
01. LET IT OUT
02. AFTER LIGHT
03. DEFEAT
04. MAD QUALIA
05. SICK
06. SET IN STONE
07. THE ABYSS
08. ON MY OWN
09. PANDORA
10. ANOTHER MOMENT
11. DUALITY
12. 6 or 9
13. GLAMOROUS SKY with ASH(
14. BELIEVING IN MYSELF
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HYDEがZepp Hanedaに帰還、後輩ASH DA HEROと「RUMBLE FISH」追加公演で一騎討ち - 音楽ナタリー - 最新ニュース https://t.co/XxakGjHkoO