このライブはEveにとって初の日本武道館公演で、4月より開催された過去最大規模の全国ツアー「Eve Live Tour 2022 廻人」の追加公演として行われた。チケットは立ち見席まで含めてソールドアウトし、多数の観客がEveの最新の世界を体感した。この記事では初日29日公演の模様をレポートする。
開演時刻を迎え、ステージ前に張られた紗幕には廃墟のような映像が広がる。そのドアに人間の手がかかり、開いた先には幾重にも重なった階段が広がっていた。階段を上がっていく映像に重なって今回のツアー、そして最新アルバムのタイトル「廻人」が映し出される。それと同時にバンドメンバーのNuma(G)、masahito nakamura(B)、堀正輝(Dr)がステージに登場。アルバムの1曲目を飾る「廻人(instrumental)」が演奏される中、黒いコートに身を包んだEveがせり上がりで現れると客席からは大きな拍手が沸き起こった。
最初にEveが歌ったのは「藍才」。オーディエンスが腕にはめた自動制御のLEDバンドが青色に光る中、Eveはゆったりとした歌声で「廻人」の世界の幕開けを飾った。グルーヴィなベースラインに乗せて「夜は仄か」のシニカルな歌詞を届けたあとは、浮遊感に満ちたサウンドが印象的な「YOKU」をパフォーマンス。オーディエンスをじっくりと独自の世界へと引き込んでいった。
バンドメンバーが「doublet -inst-」を奏でると同時に、紗幕には「Smile」の文字が踊り、ここからは2020年発売のメジャー2ndアルバム「Smile」の世界へ誘うことを暗示する。ステージ上に多数の炎がゆらめく中、Eveは哀切なボーカルで「LEO」を披露。さらに「レーゾンデートル」「いのちの食べ方」と疾走感あふれるロックチューンを連投し、観客を大いに熱狂させた。
「Slumber -inst-」からはさらにEveのキャリアを遡り、2019年にリリースされたメジャー1stアルバム「おとぎ」のターンへと突入。紗幕に映し出されたアニメーションに合わせてオーディエンスの小気味よいハンドクラップが響いた「トーキョーゲットー」では、エモーショナルに歌い上げるEveのシルエットが場内のテンションをさらに引き上げる。その熱気は続く「アウトサイダー」のイントロで紗幕が落とされ、Eveの生身の姿があらわにされた瞬間にますます上昇。「ラストダンス」ではEveがセンターのマイクスタンドから離れ、ハンドマイクを握ってステージ左右を行き来しパワフルなボーカルを聴かせた。
ライブ前半を終えたEveは白い衣装にチェンジし、ここで初めて「こんばんは、Eveです」とMCに突入した。11曲をノンストップで駆け抜けたEveは「暑いね(笑)」と笑顔を見せつつ、初の日本武道館ライブを迎えた心境を「ふわふわしてたけど、ようやく『みんなとライブできてるんだ』と実感が湧いてきて」と語った。そして2020年に予定していたアリーナツアーが新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止になったことを振り返り「当たり前にできていたことができなくなって、大切さに気付かされました。そのとき思った感情を忘れたくなくて書いた曲があります」と曲紹介へと入った。
「この日のために作ったんじゃないかというくらい大切な曲です」とEveが語った曲は、「廻人」の収録曲でありこの日がライブ初披露となった「杪夏」。SUNNY(Key)のピアノとストリングスチームを加えた重厚なアンサンブルに乗せて、Eveは情感たっぷりのボーカルを武道館に響かせた。さらにEveは同じ構成で「蒼のワルツ」「心海」も歌唱。壮大な自然をとらえた映像とともに、武道館のスケールにふさわしい圧倒的なパフォーマンスを披露した。
ライブは再びこれまでのアルバムの世界を追う流れへと戻り、「fanfare」の演奏からは2017年リリースのアルバム「文化」の楽曲が披露されていく。グリーンのシャツにルーズなパンツという衣装に着替えたEveは、軽やかにリズムを刻みつつ「ナンセンス文学」を歌う。彼の歌声やバンドメンバーの演奏に対し、オーディエンスも息ぴったりのハンドクラップで応えた。「あと3曲やったら帰ります。全力でやるんで、着いて来れますか武道館!」と叫んだEveはステージの端まで行き来しつつ「ドラマツルギー」をアグレッシブにパフォーマンスした。
ここでステージ前には再び紗幕が降り、これまでに流れたさまざまな映像が早回しの逆回転で映し出された。開演時に戻ったかのように、紗幕にはオープニングで登場した廃墟が再び現れるが、そこにはところどころブロックノイズがかかり、ドアを開ける手元も人間のものからEveの世界ではおなじみの“ひとつめ様”のものに変化している。不穏な雰囲気が武道館に満ちた瞬間、Eveはオープニングを再現するかのごとくせり上がりで改めて登場した。
何が起こるのかと見つめるオーディエンスに放たれた楽曲は「廻廻奇譚」。Eveを代表するヒットナンバーに、武道館の客席はこの日一番の盛り上がりを見せる。最後にEveは「みんなまだ踊れる? ジャンプできる?」と煽り、「退屈を再演しないで」を届ける。ミラーボールがきらめく中で披露されたディスコチューンに乗せて、観客は心地よさそうに体を揺らしていた。
アンコールを求める熱烈な手拍子に応えて白いパーカー姿でステージに現れたEveは、映画「バブル」のオープニング主題歌「Bubble feat.Uta」を華やかにパフォーマンス。そして「武道館、本当にすごいです。『文化』から5年が経って、こんなに曲を作るとも、こんなところでライブをやるとも思っていませんでした」とこれまでの道のりを振り返り、「僕ひとりの力でできたことではないです。皆さんがいるからライブができています」とファンやバンドメンバー、彼が敬愛するクリエイターやスタッフへの感謝の思いを改めて語った。
「みんなのことは赤の他人とは思っていないので、遊びに来たくなったら、現実逃避したくなったらまた来てください。それまで心を豊かにして、お互いに成長した姿で会いましょう」とファンに誓ったEveは、ギターをかき鳴らしつつ「君に世界」を披露。最後に銀テープが舞う中で「群青讃歌」を力強く届け、初の武道館ライブを大成功のうちに終えた。
各音楽配信サービスでは、この2日間の武道館ライブのセットリストを再現したプレイリストが公開中。また「文化」のリリースから5周年となる12月13日には、今回の武道館ライブの映像や過去のMVを収録した映像集「ZINGAI」の発売も決定している。
「Eve Live Tour 2022 廻人 日本武道館 追加公演」2022年8月29日 日本武道館 セットリスト
00. 廻人 -inst-
01. 藍才
02. 夜は仄か
03. YOKU
04. doublet -inst-
05. LEO
06. レーゾンデートル
07. いのちの食べ方
08. slumber -inst-
09. トーキョーゲットー
10. アウトサイダー
11. ラストダンス
12. 杪夏
13. 蒼のワルツ
14. 心海
15. fanfare
16. ナンセンス文学
17. ドラマツルギー
18. 廻人-inst-
19. 廻廻奇譚
20. 退屈を再演しないで
<アンコール>
21. Bubble feat.Uta
22. 君に世界
23. 群青讃歌
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