江崎文武(
このイベントはグローバルビジネス誌「Forbes JAPAN」による「世界を変える30歳未満の30人」を選出する企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」の受賞者を発表するもの。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」は経済誌「Forbes」がグローバルで展開するプロジェクトで、日本版の実施は今年で5回目となる。今年はAI研究の第一人者である東京大学大学院教授の松尾豊や社会学者の石川善樹、アーティスト兼音楽プロデューサーの
イベントに登壇したのは江﨑とReiのほか、大平修蔵、古賀げんじ、長谷川ミラという顔ぶれ。サブスク時代、そしてイヤホンで音楽を嗜む時代に完全にフィットした音楽性を評価されて30名のうちの1人に選出された江崎は「自分としてはまだ社会に貢献できたような気持ちもないし、世の中のためになるような活動が十分にできているかと言うと、決してそんなことはないなと思うのですが……」と謙遜しつつ、「自分の作っている音楽で、少しでも多くの人が毎日を楽しく過ごせたり、音に興味を持っていただけたりするような、そんな世界が訪れるといいなと思っています。今回いただいた賞を励みに、自分のやるべきことを自分のペースで取り組んでいければと思います」と受賞の喜びを噛み締めた。
「想像の2段上の演奏を聞かせてくれるアーティスト」「テクニック、ネイティブな英語、歌唱力。どれを取っても日本に収まる感じがしない」と司会者から紹介された受賞者は、シンガーソングライターのRei。帰国子女で英語が堪能な彼女は日本語とともに英語でも受賞の喜びを表した。「私は帰国子女で言語に対してコンプレックスを抱いていたのですが、第3の言語・音楽との出会いにより世界とつながることができました」とこれまでの自身の歩みを振り返りながら、「音楽の力によって孤独に苦しんでいる誰かが解放されたり、人を愛する美しさに気づくことができたらいいなと思って、これからもがんばっていきたいと思います」と目を輝かせた。
その後、イベントでは事前に記入したフリップを片手に「自分たちが作りたい新しい世界」をテーマにトークが繰り広げられた。げんじは「服を自由に楽しむ未来」、長谷川は「他人に干渉されない世界!!」、大平は「愛にあふれる世界」と書き示す中、「音楽で心を癒したい!」と書かれたフリップを見せたのはRei。学生時代、老人ホームなどでクリスマスに歌を歌う活動を数年間行っていたという彼女は、それらの経験やコロナ禍を経て、健やかな生活のためには「衣食住」だけでなく「娯楽」が必要であることを実感したと語る。そして「音楽の力で人の心を癒したい。その方法を今後も探っていきたいです」と晴れやかな表情で語った。
一方江崎は「誰にとっても音が自己表現の手段になり得る世界」とフリップにつづっていた。彼は授賞式に出席した記者たちを見渡しながら「会場にいるほぼすべての方が、自分の絵を描いたことがあるんじゃないかと思います」と語りかけ、「一方で、自分の音楽を作ったことがある人ってほとんどいないな、と思うわけです。学校教育の中で美術も音楽も、同じ表現を教える教科として存在しているのに、どうしてこんなに差が生まれてしまうのか」と問題提起する。スキルの習得や知識のインプットに終始している昨今の音楽教育の課題を分析しつつ、テクノロジー革新によって誰もが音楽で自己表現できる時代でもあると続け、「『(人々が)当たり前に自分の絵を描いたことがあるように、当たり前のように自分の音楽を作ったことがあるよ、と言う世界』を実現するべく、これからも活動を続けていきます」と力強く言葉を紡いだ。
イベントの最後には質問コーナーも設けられ、学生新聞の記者たちから「人生観が“ブワッと”広がったターニングポイント」を尋ねる質問が投げかけられた。Reiは、自身が2017年に出演したフランスで開催された大型野外フェス「Les Eurockeennes」に言及し「バイリンガルだから海外で活動しやすいのでは? と聞かれます。確かに英語は便利なのですが、音楽が持つ本質的な力が国境や性別、価値観に影響するんだなという実感を得ました」と自身の転機になった出来事を説明。また江崎は「自分が表現者としてどう人生を終えたいか、という部分において指針になった」としてデザイナーのブルーノ・ムナーリに影響を受けたことを語り、「僕もいち表現者として次の世代に自分の考えたことを伝えていくことはすごく重要であると感じているので、音楽家としてのキャリアを終えるタイミングでは、説教らしくないかたちで若い世代に音楽の面白さを伝えることがいいなと、そういう人生を歩んで行けたらいいなと思っています」と優しい眼差しで語った。また東京藝術大学卒業後に東京大学の大学院を修了した経歴を持つ江崎がその後「大学生に向けたメッセージ」を求められると、「(自分は)人よりも長く大学という組織に身を置いた」と前置きしたのち、「本当に自分が情熱を注げるものを見つける時間に充ててほしい。ただそれだけです」ときっぱり言い切っていた。
現在「Forbes JAPAN」では「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2022」の受賞者を紹介する特設サイト「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2022」を公開中。ユウタや花譜のインタビューについては、特設サイトにて確認を。
※江崎文武の「崎」は立つ崎が正式表記。
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