ハナレグミ、矢野顕子、大橋トリオが弾き語りで魅せた「BABY Q」横浜公演

8月12日に神奈川・神奈川県民ホールでライブイベント「BABY Q」の“横浜場所”が開催された。

「BABY Q」は2019年に誕生したインドアフェス「Q」による、弾き語りメインのライブイベント。この日のライブにはハナレグミ、矢野顕子、大橋トリオの3組が出演し、それぞれのスタイルで満員の観客に向けて演奏を聞かせた。

トップバッターとして登場したハナレグミは、ステージに設置された数本のギターから、おもむろに１本を手に取ると「光と影」で力強くライブをスタート。続けて、親交があるリリー・フランキーから譲り受けたというギターに持ち替えて「祝福」を客席に語りかけるようにして歌い届ける。3曲目に披露されたのは、くるり「男の子と女の子」のカバー。楽曲の世界に没入していくかのような彼のエモーショナルで生々しい歌声に観客はじっと耳を傾けていた。「ありふれた言葉」「独自のLIFE」というピースフルな2曲を届けると、ハナレグミは、関東地方に翌日上陸が予想されている台風8号を引き合いに出し、「すでに明日の天気は確定してる感じなんですけど……（笑）」と前置きしてライブの定番曲「明日天気になれ」をプレイ。軽快な演奏に合わせて観客たちも力強いハンドクラップで応える。ハナレグミは最後に「発光帯」を歌唱し、ソウルフルな歌声をホールいっぱいに響かせた。

ステージにグランドピアノが運び込まれ、矢野顕子が登場。彼女は客席に一礼すると手始めに「わたしのバス」を演奏し、転がるような軽快なピアノの演奏と表情豊かな歌声で観客を一気に引き込んでいく。「ラーメン食べたい」を自由な節回しで歌い上げた矢野は「まだ2曲目だというのに熱くなってしまいました」とつぶやくと、意外な顔合わせとなったこの日の公演について「どういう人選で、こういうことになったのかしら？」と客席に向けて楽しそうに語りかける。続けて彼女は楽曲の制作秘話などをユーモアを交えて説明したのち、「Super Folk Song」をリズミカルな演奏に乗せて朗らかに歌い上げた。

「音楽はおくりもの」の演奏がスタートすると和やかな会場のムードが一変。繊細なピアノの旋律とセンチメンタルな歌声が場内を満たしていく。歌唱後に矢野は、この曲が収録された2021年発表の最新アルバム「音楽はおくりもの」について、「あんなに1曲1曲、丁寧に曲を作ったことは、長い音楽人生で初めてのことでした」と、しみじみ振り返った。「GREENFIELDS」で凛とした歌声を聞かせた彼女が最後の曲にチョイスしたは「ひとつだけ」。矢野はこの曲を気持ちよさそうに歌い終えると、「どうもありがとう」と満面の笑みを浮かべてステージをあとにした。

この日のトリを務めたのは大橋トリオ。ピアノの弾き語りで「はじまりの唄」を歌い終えた彼は、最初のMCで、尊敬する矢野顕子を差し置いて自らがトリを務めるという状況に「緊張感がとんでもないことに（笑）。……ていうか、なんで（自分が）最後なん？」とリアルな胸の内を明かしつつ、「ハナレグミの永積さんいわく『大橋トリオだけに“大トリ”』なんだそうです（笑）」と続け客席の笑いを誘う。

スローバラード「Dearest Man」で会場にノスタルジックな雰囲気を作り上げると、大橋はステージ中央に用意された椅子に腰かけ、アコースティックギターを手にしてThe Beatlesの「Blackbird」を演奏。「ギターを持つと絶対に弾いてしまう」というこの曲のお馴染みのフレーズを見事に弾きこなしてみせた。「CLAMCHOWDER」で温かな歌声を聞かせたのち、大橋は観客のハンドクラップに乗せて「そんなことがすてきです。」をさわやかに歌い上げる。そして再びピアノの前に座ると「生まれた日」をしっとりと歌唱。「普段は弾き語りをほとんどやらない」という彼ではあるが、持ち前のマルチプレイヤーぶりをいかんなく発揮して観客を魅了した。

アンコールに応えて大橋トリオがステージに登場。そして彼の呼び込みで矢野顕子がステージに現れると盛大な拍手が巻き起こる。2人は、矢野が書いた歌詞に大橋が曲を付けた大橋トリオの楽曲「窓」をデュエットして観客を大いに喜ばせた。演奏後には永積もステージに登場し、最後は客席をバックに記念撮影。和やかなムードの中ライブは終演を迎えた。

なお9月3日には大阪・大阪市中央公会堂にて「BABY Q」の“大阪場所”が行われ、本公演には大橋トリオ、KIRINJI、矢野顕子が出演する。