学生時代に知り合った桜井和寿(Vo, G)、田原健一(G)、中川敬輔(B)、鈴木英哉(Dr)によって1989年に結成され、1992年5月10日にミニアルバム「EVERYTHING」でメジャーデビューを果たしたMr.Children。多くのヒット曲を世に送り出し、日本を代表するロックバンドとして幅広い世代に支持されてきた彼らは、今年5月10日にデビュー30周年を迎え、翌日5月11日にはベストアルバム「Mr.Children 2011 - 2015」「Mr.Children 2015 - 2021 & NOW」を同時リリースした。そんなキャリアの中で発表されてきたオリジナルソングは241曲にも上り、Mr.Childrenが伝えるポジティブなメッセージはいつの時代も多くの人々の心に寄り添い、支えとなってきた。
2020年12月に発売されたアルバム「SOUNDTRACKS」のリリースツアーはコロナ禍により実施されなかったため、Mr.Childrenがツアーを行うのは2019年4~6月の「Against All GRAVITY」以来約3年ぶりとなる。「半世紀へのエントランス」は全国のドームとスタジアム6会場を舞台にしたツアー。このうちデビュー30周年記念日にあたる5月10日の東京・東京ドーム公演の映像は多数のメディアで後日配信され、祝福ムードに包まれた記念すべきライブを多くのファンが追体験した。
「半世紀へのエントランス」のツアーを前に実施した音楽ナタリーのインタビュー(参照:Mr.Children桜井和寿ソロインタビュー)では「こんなにも強く、『このツアーを成功させたい』と思ったことは、いまだかつてないです」と力強く語っていた桜井。並々ならぬ覚悟を胸にメンバーはドームやスタジアムの大舞台に立ち、ロックバンドが描く未来への展望をしっかりと提示してみせた。
6月12日は関東地方の梅雨入りにより不安定な空模様となったが、開場した15時以降は晴天に恵まれた。抜けるような青空のもと、来場者約7万人がMr.Childrenの登場を今か今かと待ち構える中、「優しい歌」のストリングスバージョンが心地よい風に乗ってスタジアム中に響き渡る。その音が止むと、会場のスクリーンには、ベストアルバムのジャケットをモチーフにしたオープニングムービーならぬ“エントランス映像”が流れ始めた。さらにMr.Childrenの歩みをたどるように、過去作のジャケットやミュージックビデオ、ライブシーンも一挙に公開されたのち、舞台上のスクリーンがゆっくりと上昇し、メンバー4人、サポートのSUNNY(Key, Vo)が登場。桜井の力強いストロークで始まる「終わりなき旅」でライブは幕を開け、代表して桜井が「どんなものにも終わりはきっとある、そう思っています。だからこそ今ある情熱のすべてを音に、エネルギーに変えて人生最高のライブをお届けしたいと思います」と誓いを立てた。ノスタルジックな音像の「名もなき詩」がオーディエンスに捧げられたあと、ライブはMr.Childrenの近年のライブアンセムとも言うべき「海にて、心は裸になりたがる」へ。メンバーは視線を交わしながら強靭なアンサンブルを奏で、桜井や中川はステージに立つ喜びを噛み締めるように咆哮した。
「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」「innocent world」などMr.Childrenを代表するミリオンヒット曲が連続した序盤パートを経て、桜井は「この1週間ずっと天気予報をチェックしていました。ずっと雨予報でしたが、なんですか、この天気は!」と天を仰ぐ。日が少しずつ傾き始め、涼しい風が吹き抜ける中「彩り」「口笛」がステージから届けられると、スタジアムは温かな拍手に包まれた。その後、メンバーがメインステージから延びる花道を通り、サブステージへと移動。ファンの間で高い人気を誇る「車の中でかくれてキスをしよう」を桜井、田原、SUNNYの3人で、「Sign」を中川と鈴木も加えた5人で披露し、センチメンタルなムードを演出した。
メインステージに戻った彼らは、現代を象徴するような映像を背に「タガタメ」をパフォーマンス。曲が進むにつれてバンドサウンドはいっそう激しさを増し、鮮烈な余韻をもたらした。20作目のオリジナルアルバム「SOUNDTRACKS」の収録曲「Documentary film」「DANCING SHOES」を畳みかけて突入したライブ中盤、炎が吹き出すステージにて「LOVEはじめました」から一気にギアを上げていくMr.Children。獰猛なロックナンバー「フェイク」「ニシエヒガシエ」が繰り出されると、オーディエンスは興奮の渦に巻き込まれた。
壮大なサウンドスケープを描く「Worlds end」が放たれたのち、スクリーンには満開の桜が咲き誇り、新曲「永遠」の演奏へ。メンバーが織りなす美しくも儚い旋律が、薄暗い空に溶けていった。エモーショナルな空気が広がる中、「others」「Tomorrow never knows」といった孤独な心情が描かれたバラードが続き、その余韻でしんと静まる会場内。ライブ定番のアッパーチューン「光の射す方へ」をきっかけに客席の熱気はぐんと上昇し、「fanfare」「エソラ」では幸福感に満ちたきらびやかなサウンドが会場中に轟いた。本編も残すところあと1曲となったところで、桜井はコロナ禍でライブができなかった期間を振り返り、「このライブがやれるかわからず気を揉んで過ごしていました」と胸の内を明かす。そして「どの曲で最後、皆さんに感謝を告げようかと考え、この曲を選びました。2年間握りしめていた曲です。受け取ってください」とファンに伝え、彼らはいよいよ本編ラストとなる「GIFT」のパフォーマンスへ。桜井は「僕ら探していた 最高のGIFTを 君が喜んだ姿をイメージ、いつもイメージ、今日もこれからもイメージしながら」と歌詞を変えて歌い、メンバーは観客1人ひとりに贈るかのように実直なサウンドを鳴らし続けた。
本編はすでに終わったが、アンコールを求める拍手は鳴り止まず、再びステージに現れたMr.Children。桜井の「まだやらせていただきます」という言葉を合図に、メンバーは「HANABI」を披露し始める。サビの「もう一回 もう一回」ではライブの終わりを惜しむようにオーディエンスが人差し指を夜空に掲げた。一体感が生まれた会場で、4人は改めて観客に向けて挨拶。鈴木は「こんばんは! やっと会えましたね」と絶叫し、「スタッフ、親、兄妹、友達、デビュー前後に関わってくれた方々、そして! お客様、あなた方がいないと僕らはここに立てないのでございまーす!」とありったけの感謝を伝える。続けて中川は「ライブに関するアンケートを読んでいると、『ありがとう』というメッセージをよく見かけますが、僕らのほうが『ありがとう』と思っています。Mr.Childrenは31年目に入ったけど、40、50年目を目指して自分たちの信じた音を探していきたいと思います」、田原は「今までたくさんの曲を演奏してきました。それは皆さんが愛してくれて、大切にしてくれた曲たちです。皆さんの思いが水面に、海洋にキラキラ光っているようで美しかった。これからも皆さんの生活に1歩でも近付けるように音を出し続けたいです」とそれぞれ決意を表明。桜井は「まだ予定はないけどまたライブがしたいですね。次にライブをやるときはマスクを外した皆さんの声を聞きたいです」とまだ見ぬ未来へ思いを馳せた。そして彼らは熱いメッセージソング「生きろ」で3時間超えのライブをフィナーレに導くと、晴れ晴れした表情でステージを去って行った。
「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」2022年6月12日 日産スタジアム セットリスト
01. 終わりなき旅
02. 名もなき詩
03. 海にて、心は裸になりたがる
04. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
05. innocent world
06. 彩り
07. 口笛
08. 車の中でかくれてキスをしよう
09. Sign
10. タガタメ
11. Documentary film
12. DANCING SHOES
13. LOVEはじめました
14. フェイク
15. ニシエヒガシエ
16. Worlds end
17. 永遠
18. others
19. Tomorrow never knows
20. 光の射す方へ
21. fanfare
22. エソラ
23. GIFT
<アンコール>
24. HANABI
25. 生きろ
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ダイノジ・大谷 @dnjbig
【ライブレポート】Mr.Childrenが30周年ツアーに幕!「信じた音を探し続ける」50年目に向けたバンドの終わりなき旅(写真15枚) https://t.co/MgjNFL7xHr