1996年に横浜にある同じ大学に在籍していた後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)、山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)によって結成され、不動のメンバーで活動を続けてきたアジカン。彼らは、その節目を締めくくる公演を“故郷”である横浜で行い、四半世紀の中で生み出してきた数々のナンバーを高らかに奏でた。この記事では12日公演の模様を中心にレポートする。
ホール会場には珍しい「舞台上ライブ参加型鑑賞席」なる席を設ける一方で、照明とプロジェクションマッピング以外の演出は用いず、ライブハウス同様に剥き出しとも言えるシンプルなステージでライブに臨んだメンバーたち。万雷の拍手を浴びながら現れた4人は、それぞれの楽器の音を丁寧に重ね、「センスレス」へとつなげる。3rdアルバム「ファンクラブ」の収録曲であるこの曲は、どこか青臭さが漂うサウンドが特徴だったが、現在のアジカンが奏でると円熟味と重厚さが際立つものに。四半世紀で培ってきたバンドとしての進化をオープニングナンバーで証明したところで4人は、「Re:Re:」「アフターダーク」とファンから人気の高い楽曲を立て続けにプレイした。
「今日は本当に楽しんで帰ってください。自由にみんならしく、それぞれの在り方でよろしくお願いします」。後藤のそんな言葉に続いたのは、軽やかなアンサンブルを聴かせる「荒野を歩け」。伊地知の刻む小気味のいいタイトなリズムに乗せて観客は体を揺らしたり、飛び跳ねたりして音に身を委ねる。オーディエンスの気持ちが次第にほぐれていく中、「ループ&ループ」が始まるとホール内に熱気が一瞬で立ち上った。このブロックでアジカンが奏でたのは、バンドの代表曲とも言えるヒット曲の数々。オーディエンスは、激しく明滅する照明演出を交えた「リライト」では後藤のシャウトにシンガロングで応える代わりに盛大なクラップを響かせ、ノスタルジックなライティングが彩った「ソラニン」では高く手を掲げて、4人が奏でる音や後藤の歌声を全身で受け止める。それぞれがコロナ禍における最大限のライブの楽しみ方を享受しているようだった。一方で「君という花」の演奏中に後藤は、楽器隊が生み出すグルーヴに乗せて自らも歌いながらステップを踏み、腕を回し、自由に音楽を楽しむ姿を体現してみせた。
続くMCで後藤は「『25年もバンドをやれているのはすごいことだよな』と4人で話していて。今日は感謝の気持ちだけでいいんじゃないの?と話しながら出てきました」とアニバーサリーライブに臨む心意気を吐露。「聴いてくれる人がいないと音楽は成立しない」という前提を踏まえ、「舞台上ライブ参加型鑑賞席」を設けたことを説明し、「みんな育ってきた環境も考えていることも違う。とにかく違いだらけの中で『アジカンのあの曲が好きだな』って思えることはすごいことだなって」「みんなもそれぞれの違いをそれぞれ抱えたまま、一緒に『ああ……』と(アジカンの曲で)震えられる瞬間ができたらうれしいです」と、演者と観客の間には垣根がないこと、平等に音楽を楽しむことができるというメッセージを伝えた。
喜多のハイトーンボイスが映えるさわやかな「シーサイドスリーピング」を挟み、ライブは折り返しへ。前半は結成時と同じ編成でパフォーマンスしていた4人だったが、以降はこれまでのキャリアで交流してきたさまざまなゲストとともにセッションを展開していく。最初のゲストとして現れたのは、2010年リリースのアルバム「マジックディスク」のレコ発ツアーに同行した金澤ダイスケ(Key /
2人のボーカリストとのコラボレーションを終えたあと、ステージ上の5人が奏でたのは「ダイアローグ」「転がる岩、君に朝が降る」の2曲。後藤はメンバーとともに「ダイアローグ」では「ささやかでも 今は弱い光でも 響く速度で声を聞かせて 届け どこまででも」、「転がる岩、君に朝が降る」では「僕らはきっとこの先も 心絡まって ローリング ローリング 凍てつく世界を転がるように走り出した」と力強く歌い、先行きの見えない困難な時代の中であっても前に進んでいく意思を改めて表明した。
その後、三船雅也(Vo, G /
アンコールの冒頭で後藤は、「潔が『ありがたいし、途中何度も泣きそうになった』と言ってて。俺も同じ気持ちで、本当に音楽っていいなと」としみじみ。彼はメンバーとの出会いを回顧しつつ、「俺たちの音楽をちゃんと見つけてくれてありがとう」とオーディエンスにお礼を告げ、「みんな角度は違うけど、それぞれ見つけてくれてありがとうございます。ここにいてくれてありがとう。(アジカンのライブは)出入り自由だから……また縁があったら、どこかで素晴らしい夜を一緒に作りましょう」と呼びかける。そして、「俺たちを世界に連れて行ってくれた曲」という後藤の紹介から、4人は山田の猛るようなベースラインで口火を切る「遥か彼方」をプレイ。かつてこの曲において苛立ちや焦燥感が滲んでいた4人の音は、いつしか包容力や余裕を漂わせるものへと変わり、聴き手の背中を後押しするような頼もしさすら内包していた。アニバーサリーライブのラストナンバーとしてアジカンが選んだのは、メンバー全員の名前が作曲者にクレジットされている「今を生きて」。鼓動を思わせる伊地知の弾むビートを背に、後藤、喜多、山田の3人はそれぞれの楽器を奏でながら、「永遠を このフィーリングを ずっと忘れないでいて」とオーディエンスに語りかけるように優しく歌った。
翌13日公演の模様は生配信も行われ、会場に足を運べなかった国内外のファンが、メンバーの生き生きとした演奏や、「舞台上ライブ参加型鑑賞席」も巻き込んだ映像演出を堪能。MCで後藤は25周年を締めくくることができる感慨を語り、配信ライブが目覚ましい進化を続けるこのご時世において極力シンプルなステージにこだわった理由として「音楽丸出しみたいなのでもいいかな?と思ったんです」と説明するひと幕も。さらにこの日、後藤は「これだけは言おうと思っていた……」と、自分たちがスタッフの力に支えられてこのステージに立っていることを述べ、「タフなこの時代、一緒に生き抜いてくれてありがとう」と会場にいるファン、配信カメラの向こうの視聴者に感謝の思いを伝えた。最後に4人は万感の表情で肩を組むと、深く一礼をしてギターのリバーブ音を浴びながらステージをあとにした。
なお、13日公演のアーカイブ映像は3月20日まで視聴可能。またアジカンは3月30日に10枚目のオリジナルアルバム「プラネットフォークス」をリリースしたのち、5月下旬よりホール会場を中心とした「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022『プラネットフォークス』」を開催する。
ASIAN KUNG-FU GENERATION「ASIAN KUNG-FU GENERATION 25th Anniversary Tour 2021 Special Concert "More Than a Quarter-Century"」2022年3月12日 パシフィコ横浜 国立大ホール公演セットリスト
01. センスレス
02. Re:Re:
03. アフターダーク
04. 荒野を歩け
05. ループ&ループ
06. リライト
07. ソラニン
08. 君という花
09. シーサイドスリーピング
10. 夕暮れの紅
11. ケモノノケモノ
12. 夜を越えて
13. 迷子犬と雨のビート
14. エンパシー
15. 触れたい 確かめたい
16. UCLA
17. ダイアローグ
18. 転がる岩、君に朝が降る
19. You To You
20. フラワーズ
21. 海岸通り
<アンコール>
22. 遥か彼方
23. 今を生きて
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ROTH BART BARON @ROTHBARTBARON
【ライブレポート】
You to You (feat. ROTH BART BARON) 披露🎸
アジカンが剥き出しのバンドサウンドを奏で、音楽を自由に楽しむ姿を体現した25周年ライブ(写真13枚) https://t.co/ZymcI0rOAx