2013年に2期生オーディションに合格し、乃木坂46のメンバーとなった新内。大学卒業後の2014年4月から2018年3月まではアイドル活動と会社勤務という二足のわらじを履き、“OL兼任アイドル”という肩書きを持っていた彼女は、ニッポン放送「乃木坂46のオールナイトニッポン」で長年にわたってメインパーソナリティを務めるなど、“乃木坂46の声”としてもグループとファンをつなぐ存在だった。30歳という節目でグループを去ることを決めた彼女のために用意された会場は、通い詰めたニッポン放送からほど近い、東京国際フォーラムのホールA。公演は生配信も行われ、たくさんのファンが新内のグループ卒業を見守った。
開演時刻を迎えると、ステージ上の大きなスクリーンには2016年の「乃木坂46新内眞衣のオールナイトニッポン0(ZERO)」初回と、先日放送されたばかりの「乃木坂46のオールナイトニッポン」の新内卒業回の映像が映し出された。ラジオのオンエアを終え、ニッポン放送の社内をゆったりとした足取りで進む彼女が乗り込んだエレベーターの扉が再び開くと、そこには乃木坂46の制服に着替えた新内の姿が。「今日、私は乃木坂46を卒業する」と宣言すると、新内はニッポン放送の退館パスを切り、国際フォーラムへ向かってさっそうと駆け出した。
セレモニーの幕が開き1曲目に届けられたのは、研究生からメンバーに昇格した新内の初めての参加楽曲である「生まれたままで」(2014年)。1期生と2期生によるパフォーマンスでこの曲が届けられると、新内は1人ステージに残り「入ったばかりのときはこんなに素敵な会場でセレモニーを行えるなんて思っていなかったので緊張してます」と挨拶。そして「今日でアイドルの新内眞衣が見れるのは最後なので、楽しんでいってください」と観客に伝えた。
新内が「今日のセレモニーは私らしく」と語ったとおり、公演はトークパートを随所に織り交ぜながら進行。ステージ上に設けられたラジオブースの椅子に座った新内は、最初のゲストとして「生まれたままで」の歌唱メンバーである齋藤飛鳥と星野みなみを迎えた。3人はこの楽曲の思い出話に花を咲かせ、星野は「MV撮影終わりにみんなで泊まったとき、座布団を布団代わりにして寝たという素敵な思い出があるよね」と、齋藤が「まったく覚えていない」というエピソードを述懐。新内は「当時の私の衣装だと丈が短すぎて(笑)」と、8年前とは異なる衣装を着ていることを明かし、時の流れを感じさせていた。
齋藤と星野がステージを去ると、新内がラジオブースの中で「後輩について」というテーマを語るVTRが映し出された。「3期生と打ち解けるのはけっこう時間がかかったほうかなと思います」「3期生と4期生は未来を担う存在になると思うので、気負わず楽しんでほしいなと思います。乃木坂46での9年間を通して、自分は楽しいのが一番だと思ったので」と、後輩との関わりについて語り、エールを送った新内。このあとに披露されたのは3期生との「トキトキメキメキ」、4期生との「Out of the blue」で、ステージのセンターに立った新内は後輩に負けないフレッシュさを弾けさせながら2曲をパフォーマンスした。
「トキトキメキメキ」「Out of the blue」は新内がかねてより歌いたかった期別曲だったといい、新内は「2期生にはないキャピキャピ感や疾走感が好き」と3期生、4期生の曲の印象を語る。ミニスカートを翻し、ラインダンスも息ぴったりに披露した新内について、早川聖来は「ホントにうれしかったです」とコメント。阪口珠美は、3期生のリハーサル時に新内がいつも秋元真夏と「トキトキメキメキ」を踊って楽しんでいたことをファンに伝えつつ「完璧でした!」と絶賛していた。
公演の中盤には、ラジオの名物企画「新内眞衣 妄想結婚式!」の特別版が展開された。ニッポン放送の上柳昌彦アナウンサーが司会役を務めたこのコーナーでは、メンバーが新内の結婚式に招かれたゲスト役を担当。ラジオリスナーから寄せられた“乾杯の挨拶”を迫真の演技で読み上げて新内の笑いを誘う。メンバーを巻き込んで盛大な“妄想結婚式”を挙げた新内はハイテンションで、最後には「私の披露宴での余興では、メンバーにガチで『インフルエンサー』を踊ってほしいと、ずっと言ってきたんです。妄想とはいえ、今日は踊ってほしいと思います!」と無茶振り。これを聴いたメンバーは「無理だよ!」「無理無理!」と一斉に椅子から立ち上がったが、音楽が鳴り出すと一糸乱れぬ動きで「インフルエンサー」を披露し、会場を大いに盛り上げていた。
にぎやかに盛り上がった「妄想結婚式」を終え、ライブパートは「ハルジオンが咲く頃」で再開。新内は、この曲が彼女の1つ歳上の先輩である深川麻衣から“最年長のバトン”を受け継いだときの思い出深い曲であることを語り、瞳に涙を浮かべながら楽曲を歌い上げた。同期の仲間・北野日奈子とアイコンタクトを交わしながらパワフルなダンスを踊りきった、新内の大好きな曲「日常」を終えると、本編ラストの「太陽ノック」へ。新内はステージの端から端まで全力ダッシュして会場のファンに思い切り手を振り「乃木坂46での9年間、長いようで短かった、そんな気がしています。『太陽ノック』で選抜に入ったあの夏は、一生忘れられない思い出になりました!」と叫び、弾ける笑顔でピースサインを決めた。
本編を終えてもファンの拍手は鳴り止まず、ライブはアンコールへ。新内は純白のワンショルダードレス姿でステージに戻り、最後のメッセージをファンに送った。暗くてつらい日々から抜け出すため、周りに受け入れられる自分になるため、「初めて人生を変えたいと思った」という15歳の自分を振り返った彼女は「次に人生を変えようと思ったのは大学3年生、20歳のときでした。就活中にたまたま見かけた乃木坂46メンバーの募集要項を見て、応募しました」と続ける。そして「2016年に『オールナイトニッポン』が決まりました。パーソナリティはその言葉通り、自分のパーソナルな部分をお知らせして、エンタメを届けるお仕事。学生時代に受け入れてもらえなかった性格を全国ネットで届けるのが怖くて最初は不安でした。でも、リスナーの皆さんは私のことを受け入れてくれて、自分も自分自身を受け入れられるようになりました。『人生を変えたい』と思ってよかったです。私は乃木坂46メンバーの中では影響力がない人かもしれないけれど。一歩踏み出す勇気さえあれば、皆さんも10年後、20年後、笑っていられる自分に出会えると思います」と、自分の言葉で温かなメッセージをファンに送った。
挨拶のあとに届けられた初のソロ曲「あなたからの卒業」では涙で言葉を詰まらせ、新内は歌い終えるなり「ミスったー! ちゃんと歌いたかったです。気持ちは込めましたが、聴き返したくはないです(笑)」と照れ笑いを浮かべた。出演メンバー全員で「サヨナラの意味」を披露すると、最後のMCでは仲良しの後輩メンバー、梅澤美波が新内への思いをつづった手紙を読み上げる。メンバーになりたての頃、新内から「何かあったら私を使っていじっていいからね」と声をかけられたことが忘れられないという梅澤は「いじられることは簡単なことではありません。すべてを受け入れてくれた新内さんの寛大な心に、あの頃の私は気付けていなかったと思います」と涙声で読み上げる。続けて「新内さんが涙を流すときは、いつも誰かのための涙でしたね。私は与えてもらうばかりで何も返せなかったけど、これから返させてください。ごはんに行っても、今度は払わせてください。これからも遊んでください。ホントのお姉さんのように思っています」と思いを伝える梅澤を、新内は目を真っ赤にしながら抱きしめていた。
新内が“最後の楽曲”に選んだのは、2期生の楽曲である「ゆっくりと咲く花」。新内は「歌詞の意味もじっくり感じながら聴いてほしいなと思います」とファンに呼びかけ、メンバー1人ひとりに寄り添いながらまっすぐな歌声を響かせた。曲を終え、秋元から言葉を求められると「ホントに後悔は1つもないので、今すごくスッキリしています。私は正統派のアイドルではなかったかもしれないけど、9年間走り続けた日々は大切なものになりました。それは今ここにいる皆さんのおかげです。本当にありがとうございました!」と晴れやかな表情で語った新内。自身のサイリウムカラーで染め上げられた客席を見つめながら「大好きで大切な乃木坂46をこれからもよろしくお願いいたします!」と思いを伝え、セレモニーに幕を下ろした。
乃木坂46「乃木坂46 新内眞衣 卒業セレモニー」2022年2月10日 東京国際フォーラム ホールA セットリスト
01. 生まれたままで
02. トキトキメキメキ
03. Out of the blue
04. ハルジオンが咲く頃
05. 日常
06. 太陽ノック
<アンコール>
07. あなたからの卒業
08. サヨナラの意味
09. ゆっくりと咲く花
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】「人生を変えたいと思ってよかった」乃木坂46新内眞衣、思い出の街でラジオ愛あふれる卒業公演(写真13枚)
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