1年9カ月ぶりのツアーとなった今回、GLAYは11月の大阪・大阪城ホール公演を皮切りに各地のアリーナ会場でライブを開催してきた。一部公演はTAKURO(G)の新型コロナウイルス陽性が確認されたことを受けて中止を余儀なくされたが、4人は感染対策を万全にしながらTOSHI(Dr)とハジメタル(Key)という2人のサポートメンバーとともに全国を巡り、幾度となく立ってきたさいたまスーパーアリーナで有終の美を飾った。
シングル「BAD APPLE」のジャケットから飛び出してきたような、林檎の木を思わせる巨大なオブジェに静かに光が灯る中、メンバーが1人また1人と現れツアーファイナルがスタート。HISASHI(G)が奏でる鋭いギターの音色を口火に、80KIDZとのコラボレーションで作られた新曲「GALAXY」が勢いよく放たれ、ダンサブルなサウンドで会場は一気に華やかなムードに。軽やかなビートに乗せてJIRO(B)はジャンプをしながらベースを繰り、TAKURO(G)は充実感を滲ませた表情でギターを奏で、TERU(Vo)は閉塞感のある時代に風穴を開けるような歌詞を朗々と歌い上げた。
「ついにやってきたぜ。これが正真正銘、最後のファイナルだー!」。TERUが彼らしい言葉でツアー最終公演を迎えた気合いをシャウトしたのに続いて、「Hypersonic」が畳みかけられる。TERUこと“小橋”の夢が滔々と歌われるこのハイテンションなナンバーが始まると、オーディエンスは観覧中の行為として拍手とともに認められているGLAYチョップをステージに向かって全力で繰り出す。その光景を前にTERUは「小橋の夢、さいたまスーパーアリーナを全員、配信で観てくれている人すべてを幸せにすることだ」と歌いながら宣言しオーディエンスの笑顔を誘った。
なお、これまでも歌詞をサービスモニタに映し出したり、映像演出の一部として盛り込んできたGLAYだが、今回のツアーでは全演奏曲の歌詞をスクリーンに映す形でライブを展開。歌詞に込められたメッセージを伝えるという意味だけでなく、コロナ禍によりファンがシンガロングができないことを踏まえ、心の中で一緒に歌えるようにという配慮がなされていた。
ファンとの再会を誓うような思いが込められた「いつか」、月をモチーフにした「Winter Moon Winter Stars」「月に祈る」を披露したところでTERUが改めて集まった観客と配信の視聴者に向けて挨拶する。彼の「『FREEDOM ONLY』の世界をお楽しみください」という言葉を合図に、穏やかなピアノの調べとTAKUROの爪弾く切々としたギターの音色が響き「漂えど沈まず」へ。酸いも甘いも味わい尽くした今のGLAYだからこそ奏でられるラブソングを、TERUは祈りにも似た声で熱唱し、観客の感情を揺さぶった。また「BAD APPLE」では林檎を思わせる球体のオブジェが真紅に染まり、その後ろに飾られた無数の電飾も赤い光を放つ。寓話を思わせる詞世界を表現した幻想的な演出を背に、メンバーは互いの音を丁寧に重ね合わせていった。さらに、TERUの抑制を効かせたボーカルと、スパニッシュテイストのサウンド、そして松明の演出が異国情緒を感じさせた「Tiny Soldier」、ヒリヒリとした緊迫感のある音像がシリアスな空気を紡ぐ「Holy Knight」と、「FREEDOM ONLY」の中でも“新たなGLAY”の一面を打ち出した曲が続き、集まったファンはその世界に酔いしれた。
しかし、会場を支配していた厳粛な空気は、「シキナ」の涼やかなイントロが響いた瞬間に一変する。TERUがアコースティックギターをかき鳴らしながら歌い出すと、客席から軽やかなクラップが沸き起こり、サビでは一糸乱れぬ観客のGLAYチョップが波のようにステージに向かって起こる。その景色を前にTERUとJIROは向かい合いながら飛び跳ね、笑顔を弾けさせる。楽しげな空気は「SHINING MAN」にも引き継がれ、この曲ではコール&レスポンスならぬクラップ&レスポンスが盛大に行われ、ステージ上の6人と観客の心をひとつにした。TERUが「ガンガン行くぜ!」と宣言した通り、後半戦はライブの人気曲が続く流れに。TOSHIのパワフルなドラムが炸裂した「More than Love」が終わると、JIROがベースを激しく鳴らしステージの中央へ進み出る。彼はマイクの前に立ち、まずは前日の公演で「横浜アリーナ!」と客席を煽っていたTERUにツッコむように「ここは横浜アリーナじゃないぜ!」とシャウト。しかし、気合いが入りすぎていたのか思わず噛んでしまい、煽るところからやり直すことに。なんとも微笑ましいハプニングを挟みつつ、JIROは「『FREEDOM ONLY』ツアー最高でした!」と笑いライブの起爆剤とも言える「SHUTTER SPEEDSのテーマ」を叩き込んだ。彼が骨太かつグルーヴィなベースプレイを披露する傍らで、TERUは前日の雪辱を果たすように「さいたまスーパーアリーナ!」と繰り返しシャウトした。
キラーチューン「彼女の“Modern…”」の激しい余韻が残る中、TERUは「今回は大変な中でのツアーとなりましたが、GLAYにとっては救いだったし、みんなが来て笑顔を見せてくれたので、俺たちは間違ってなかったと確信させていただきました」と語る。彼が「迷いはありましたが、後悔せずステージに立てているのは皆さんのおかげです。またみんなが笑顔になれる空間を作るんで、次こそは歌えるライブでお会いしましょう」と約束すると、メンバーは「FREEDOM ONLY」の終盤を飾る「青春は残酷だ」と「祝祭」の2曲をプレイ。松明が灯る中で披露された「祝祭」でTERUは、「みんなの笑顔は僕らにとって救いです。その笑顔をこれからも見せてください」と優しく客席に向かって語りかけ、オーディエンス1人ひとりの心に温かな光を灯した。
アンコールの幕開けを飾ったのは、北海道の景色が歌詞に描かれたウインターソング「永遠を名乗る一秒」。続く「BETTY BLUE」ではレコーディングにも参加したPORIN(
高らかに「生きてく強さ」が披露されたあと、TERUが「一緒に夢、見ていこうぜ!」とこれまで何度となく口にしてきた言葉を叫び「BEAUTIFUL DREAMER」へ。TERUはこの曲を昔と変わらず心と情熱を込めて歌い上げ、JIROはひたむきにベースを奏で、TAKUROとHISASHIは観客と向き合うようにしながらギターをプレイ。結成34年目を迎えるバンドでありながらも、いまだにフレッシュであり続ける姿をオーディエンスの脳裏に刻み付けた。そして、メンバーは春の息吹を感じさせるミディアムチューン「FRIED GREEN TOMATOES」をもって、約3カ月におよんだツアーに幕を下ろした。最後にTERUはバンドを代表して「たくさんの愛情をありがとう」と口にし、「また次、さいたまスーパーアリーナで会える日まで……行ってきまーす!」とシャウト。「行ってらっしゃい」というお馴染みの挨拶の代わりに、観客はこの日一番の拍手で4人をステージから送り出した。
なお、GLAYが2月5、6日にさいたまスーパーアリーナで行ったライブの模様は、各プラットフォームにて配信される。詳細は特設ページにて確認を。
GLAY「GLAY ARENA TOUR 2021-2022 "FREEDOM ONLY"」2022年2月6日 さいたまスーパーアリーナ公演 セットリスト
01. GALAXY
02. Hypersonic
03. いつか
04. Winter Moon Winter Stars
05. 月に祈る
06. 漂えど沈まず
07. BAD APPLE
08. Tiny Soldier
09. Holy Knight
10. シキナ
11. SHINING MAN
12. More than Love
13. SHUTTER SPEEDSのテーマ
14. 彼女の“Modern…”
15. 青春は残酷だ
16. 祝祭
<アンコール>
17. 永遠を名乗る一秒
18. BETTY BLUE
19. 生きてく強さ
20. BEAUTIFUL DREAMER
21. FRIED GREEN TOMATOES
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【ライブレポート / フォトギャラリー】
「みんなの笑顔は僕らにとって救いです」
GLAY、PORINも参加した万感のアリーナツアー千秋楽
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