桑田は昨年9月に約4年ぶりの新作としてミニアルバム「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し」をリリースし、各音楽ランキングで軒並み首位を獲得。勢いそのままに、「毎日を懸命に生きておられる皆様の心を、“ホンの少しでも晴れやかなものにするお手伝いが出来れば幸い”」という思いのもと、ひさびさの有観客ライブである今回のツアーをスタートさせた。東日本大震災の記憶を風化させないという意味も込め、ツアーは10年前に「宮城ライブ~明日へのマーチ!!~」と題したライブが行われた宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで開幕。新型コロナウイルスの感染拡大対策を講じたうえで、各自治体、会場が定めたガイドライン、キャパシティ制限に沿って全国10カ所で20公演が開催された。この記事では各日およそ1万2000人を動員した横浜アリーナ公演のうち、30日の模様をレポートする。
開演時刻になると、桑田は盛大な拍手に包まれながら斎藤誠(Gt)、中シゲヲ(G)、角田俊介(B)、片山敦夫(Key)、深町栄(Key)、鶴谷智生(Dr)、TIGER(Cho)、田中雪子(Cho)、山本拓夫(Sax)、菅坡雅彦(Tp)という強力な面々のバンドメンバーとともにステージへ。客席に向かって深々とおじぎをしたあとにギターを抱え、「それ行けベイビー!!」でライブの幕を開けた。桑田は自身の声とエレキギターの演奏を中心にしたシンプルなアンサンブルで楽曲を展開。バックのスクリーンには「適当に手を抜いて行こうな」という歌い出しで始まる歌詞が映し出され、手拍子を鳴らしながらステージを食い入るように見つめる観客たちの心を解きほぐした。さらに人生讃歌であるロッカバラード「君への手紙」が2曲目に披露され、しっとりと温かい空気が横浜アリーナに広がる。新作ミニアルバムの収録曲「炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]」では入場時に配布されたリストバンド型の“ナマケモノライト”がろうそくのようにまばゆく光り、疾走感あふれる演奏に合わせて客席で揺らめいていた。この曲で場内の温度を一気に高めた桑田は、「お待ちどうさんでございます!」と挨拶。ライブが満員御礼となったことに対する感謝の気持ちを口にした。
「次が最後の曲です」と話し、バンドメンバーたちをずっこけさせるというボケで観客を和ませた桑田は、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の主題歌「若い広場」や、何気ない日常の幸せを歌った「金目鯛の煮つけ」を歌唱。ツアー各公演でその土地のご当地ソングにアレンジされてきた「OSAKA LADY BLUES ~大阪レディ・ブルース~」は、この日はタイトルを「新YOKOHAMA LADY BLUES~新・横浜レディ・ブルース~」に変えて披露され、「セレブなイメージの横浜だけど そのほとんどが山と坂道」「横浜駅は永遠に工事してる 日本の『サグラダ・ファミリア』」など、横浜をネタにしたフレーズが飛び出すたびに拍手が沸き起こった。また「エロスで殺して(ROCK ON)」の曲中には歌詞に登場する“女王様”をイメージしたセクシーなダンサーが艷やかに踊り、骨太なナンバー「さすらいのRIDER」ではステージ前方でたゆたう炎と相まって中のギターソロがブルージーに響き渡る。続いて映画「護られなかった者たちへ」の主題歌に使用されている「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」が届けられると、観客は温かく重厚感のある歌声やピアノの音色にじっくりと聴き入った。
ライブが中盤に差しかかると、桑田は演奏に乗せてバンドメンバーを紹介。さまざまな分野に精通しているメンバーに対して無茶振りクイズを出題し始め、緩やかなムードを漂わせたかと思えば、椅子に腰かけてアコースティックギターを抱え「私史上、もっとも暗いと言われるこの曲を聴いてください」という曲振りから「どん底のブルース」を歌い上げた。さらにサスペンスドラマのような雰囲気を持つ「東京」、かつて戦争で犠牲になった若者への思いを込めた「鬼灯(ほおずき)」と続き、「SMILE~晴れ渡る空のように~」では観客が身に付けるナマケモノライトが再び点灯。スクリーンには岩手県陸前高田の奇跡の一本松、宮城県仙台市荒浜海岸で行われた追悼式の模様が映し出され、桑田の東北への思いが観る者にしっかりと共有された。
その後、ライブはラストスパートへと突入し、桑田らしい躍動感あふれるパフォーマンスが連続する。どこか懐かしいメロディが特徴の「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」ではグルーヴィなブラスのサウンドに合わせて桑田のソウルフルな歌声が響き、アントニオ猪木がハルク・ホーガンにコブラツイストをかける古きよき映像、ステージから吹き上がる火花の演出とともに会場に心地よい高揚感をもたらした。また桑田は「大河の一滴」の曲中に「来年はいい年でありますように!」と、依然としてコロナ禍が続く世の中への願いを叫び、「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」の間奏で観客とクラップによる“コール&レスポンス”を展開。間髪入れずにソロ名義のデビュー曲「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」を歌い、場内の一体感をより強固なものにしてステージをあとにした。
アンコールに応えて再び観客の前に姿を現した桑田は「東北をはじめ全国各地の被災地の復興、皆さんの健やかな健康を願って」と切り出し、「明日へのマーチ」を歌唱。続いて桑田佳祐 & The Pin Boys名義の2ndシングル曲「悲しきプロボウラー」で会場のボルテージを上昇させ、「自分の好きな曲を歌ってよろしいでしょうか?」と客席に問いかけたあとはコーラスのTIGER、田中とともにヒデとロザンナ「愛の奇跡」のカバーを披露した。そして「波乗りジョニー」「祭りのあと」といった代表曲が連発されると、会場の盛り上がりは最高潮に。バンドメンバーが去り、最後にステージに1人残った桑田は首に赤いタオルをかけ、「1! 2! 3!ダァーッ」という気合いの叫びでこの日のライブを締めくくった。
なお、1月3日(月)19:00からは昨年11月20、21日に行われた埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演の模様が、“オンライン特別追加公演”としてABEMA、PIA LIVE STREAM、U-NEXT、Rakuten TV、ローチケ LIVE STREAMING、ファンクラブ「サザンオールスターズ応援団」(LIVESHIP)で配信される。
桑田佳祐「LIVE TOUR 2021『BIG MOUTH, NO GUTS!!』supported by SOMPOグループ」2021年12月30日 横浜アリーナ公演 セットリスト
01. それ行けベイビー!!
02. 君への手紙
03. 炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]
04. 男達の挽歌(エレジー)
05. 本当は怖い愛とロマンス
06. 若い広場
07. 金目鯛の煮つけ
08. 新YOKOHAMA LADY BLUES~新・横浜レディ・ブルース~
09. エロスで殺して(ROCK ON)
10. さすらいのRIDER
11. 月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)
12. どん底のブルース
13. 東京
14. 鬼灯(ほおずき)
15. 遠い街角(The wanderin' street)
16. SMILE~晴れ渡る空のように~
17. Soulコブラツイスト~魂の悶絶
18. Yin Yang(イヤン)
19. 大河の一滴
20. スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)
21. 悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)
<アンコール>
22. 明日へのマーチ
23. 悲しきプロボウラー
24. 愛の奇跡(オリジナル:ヒデとロザンナ)
25. 波乗りジョニー
26. 祭りのあと
桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」オンライン特別追加公演
配信日時:2022年1月3日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】桑田佳祐の全国アリーナツアーが横アリで終幕、歌声とともに広がった晴れやかな空気(写真8枚)
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