「今流した涙、僕は一生忘れない」DISH//が自分たちの音で祝福した10周年、あいみょんと「猫」披露も

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DISH//が12月16日から18日までの3日間、神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールでワンマンライブ「DISH//10th Anniversary Live」を開催した。

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はっとり(マカロニえんぴつ)と北村匠海(DISH//)。

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この3DAYSライブは、バンドが12月25日に結成10周年を迎えることを記念して実施されたもの。チケットは全日完売で、3日間で約1万5000人のスラッシャー(DISH//ファンの呼称)が集まっただけでなく、1日目の公演にははっとり(マカロニえんぴつ)、2日目の公演にはOKAMOTO’Sと、DISH//と縁が深いアーティスト仲間がサプライズで駆けつけ、DISH//の節目を華やかに祝福していた。この記事では、昨日18日に行われた最終公演の模様をレポートする。

「No.1」の右手を掲げる北村匠海(Vo, G)。

「No.1」の右手を掲げる北村匠海(Vo, G)。[拡大]

開演時刻を迎えステージ後方のビジョンに映し出されたのは、DISH//が結成された2011年から今に至るまでのバンドの歩みを追ったVTR。10年前はまだまだあどけない表情でステージに立っていたメンバーが、あらゆる場所でいつもがむしゃらに自分たちのパフォーマンスを届けてきたことが可視化されたこの映像の中で、年数が「2011」から「2021」にカウントアップすると、4人がファンの前へ姿を見せた。それぞれが楽器を構えると、まだ暗い舞台上で2筋の光が交差して“X”(ローマ数字で10)を浮かび上がらせる。交差点の真下に立つ北村匠海(Vo, G)はその光めがけて右手の人差し指を高く突き上げ、バンドは「No.1」でアニバーサリーライブの幕を切って落とした。

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気合いのにじむパワフルなボーカルで初っ端からオーディエンスを圧倒する北村は「ようこそ『10th Anniversary Live』へ。10周年だぞ!」とファンを歓迎。そこから彼らは「ルーザー」「Shout it out」と自作曲を2曲続けてタイトなバンドアンサンブルで聴き手を魅了する。自分たちの曲、自分たちの音で聴衆の心を揺さぶるその姿は、まだ弾けなかったギターを手に最初の1歩を踏み出したDISH//の、10年間での確かな進化を示すものだった。

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最初のMCでは、北村が「10年前はまだまだ僕らガキンチョで。右や左、あっちこっち向きながらも前に進んで、ここまでやってきました。今日は(10年の)集大成だと思って演奏するし、みんなにとっても生きてる中での“大事件”みたいな感じで心に残ってくれたらうれしいです」と思いを語った。そののち「懐かしい曲やります!」と北村が宣言して始まったのは、2015年リリースの「皿に走れ!!!!」。北村、矢部昌暉(Cho, G)、橘柊生(DJ, Key)の3人はステージの最前線に飛び出し、全力のヘッドバンギングやお立ち台からの大ジャンプでスラッシャーのテンションをグッと引き上げる。北村と矢部の掛け合いや橘の煽りが楽しい2013年リリースの「TENKOUSEI」ではソロ回しパートで4人がそれぞれの演奏スキルを惜しみなく披露。そこからバンドは「HIGH-VOLTAGE DANCER」「NOT FLUNKY」と“ダンスロック”のパフォーマンスを見せる2曲を続け、北村、矢部、橘の3人は演奏しながら軽やかなステップを踏んでみせた。

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「NOT FLUNKY」では、矢部が「イエー!! 矢部昌暉タイムの始まりだー!」と宣言してステージをスキップで駆け回ったり、「サイコゥ!」と言いながらクセの強すぎるガッツポーズを連発するなど大暴れのパフォーマンスを繰り広げていたが、北村は曲のあとのMCで「スタッフさんの期待もすごいから、実はプレッシャーに押しつぶされそうになってる」と矢部の舞台裏での姿を告白。この暴露に矢部は「おい、そういうこと言うな! 営業妨害だ!(笑)」とツッコんで、メンバーの爆笑をさらっていた。4人の他愛ないやりとりがファンに笑顔をもたらしたMCののち、北村は「みんなありのままでいてほしいし、1人ひとりに明日が笑いかけてくれるはず。僕はそう思っています」と言って、「ありのまんまが愛しい君へ」へとつなげる。曲前に「(伝えたいメッセージを)聴く人の心に深く届けられるよう意識している」と語っていた北村は、じんわりと熱を帯びた優しい歌声をメンバーが奏でる温かなサウンドに乗せ、曲のメッセージをまっすぐに歌い届けていた。

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これまでのバンドの歩みについて「DISH//の10年はたくさんの挫折と笑顔が入り混じった10年」と表現した北村。中盤のMCパートでは、決して平坦ではなかった10年の歩みを振り返っての4人の思いが語られ、北村は「メンバー体制が5人から4人に変わったとき、DISH//という名前を変えて新しい形で歩き出そうという話もあった」と明かした。彼は、そのときにあるメンバーが言った「例え体制が変わっても、俺らは俺ら。DISH//だよ」という言葉に全員が「そうだよな、俺たちは俺たちらしく歩まないと」と意志を固めたとファンに伝え「そのとき、再出発を意味するこの歌があったから、みんなで1歩踏み出せた」と続ける。「今があるから、明日がある。そんな曲をやらせてください」。北村がそう言って「Starting Over」をタイトルコールすると、ステージ後方には8人編成のストリングスが姿を見せた。

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夢を諦めず、“僕らだけの光”を追い求めることの尊さを歌う4人の声は、ストリングスの流麗なサウンドに彩られながらぐんぐんと熱を帯び、瞳に涙を溜めた橘は自身のパートで思わず声を震わせる。感情が強く込められたバンドの演奏を称えるように、客席もめいっぱいの拍手で思いを伝えた。続く「DAWN」ではバンドアンサンブルとストリングスの音色が豊かで壮大なサウンドスケープを描き出し、北村は曲中で「今流した涙、僕は一生忘れない! 皆さんもどうか、この瞬間を忘れないでください!」と思い切り叫ぶ。会場中がエモーショナルな空気に包まれる中でストリングス隊が奏でたのは、DISH//の歩みの中で大きなターニングポイントとなった楽曲「猫」のイントロ。バンドの歴史を語るうえで外すことのできない楽曲となったこのミドルバラードを4人はじっくりと噛みしめるように演奏し、曲の切ないストーリーを鮮やかに浮かび上がらせていた。

北村匠海(Vo, G)

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いつになく真剣な面持ちでバンドの10年を振り返ってきたメンバーだが、橘の“持ち込み企画”として展開された思い出写真のコーナーではそれが一変。4人はビジョンに映し出される若き日の自分たちに大笑いでツッコミを入れ合い、スラッシャーを楽しませる。北村と矢部のツーショットが投影された場面では、北村が「このとき、まだ(顔の)ホクロ1個しかないの」と切り出し「DISH//のリーダーになったタイミングで増えたのが、(口元にある)リーダーほくろ」と説明して、メンバーの感嘆の声を誘った。また泉大智(Dr)の懐かしの姿として、なぜかラガーマンの格好をした彼の写真が紹介されると、残る3人はこれに大ウケ。コーナーの“オチ”に使われた泉は「ふざけんなよ、もっとあったろ! 俺の写真イジりすぎでしょ(笑)」と照れ混じりに訴え、さらなる笑いを呼んでいた。

矢部昌暉(Cho, G)

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ライブも終盤に差しかかったところで、北村は「ここから、10年の歴史を感じる曲たちをバババッとやります」と予告。そして「10年前はやりたくてもできなかった『バンド演奏で盛り上がる』ってことが現実にできるようになって、はっとりくんやOKAMOTO'Sのみんなにも『DISH//はロックバンドだ』と言ってもらえて。DISH//として過ごせる今日が、最高に、最強に、超楽しいです!」と笑顔を弾けさせた。「おっきくなったところ、見せてもいいですか!」という彼の叫びと共にドロップされたのは、DISH//のデビュー曲「It's alright」と、活動初期からの人気曲である「I Can Hear」と「FLAME」。“あのとき”は弾けなかった曲の数々を、4人は力強い演奏でスラッシャーに届ける。最後方でパワフルなビートを刻み、バンドのグルーヴをコントロールする泉、サウンドを自在に操りながら、アグレッシブかつ熱いラップでオーディエンスを煽る橘、シャープなギターサウンドとボーカルに寄り添う確かなコーラスワークで存在感を光らせる矢部、豊かな歌唱表現と圧倒的な求心力でステージのセンターに立つ北村、4人が織りなすアンサンブルに、オーディエンスの熱狂は最高潮に達した。「今日はもう何もない、出し切った!」。北村がそう漏らすほどの熱狂の中、本編最後に送られたのは最新シングルの表題曲で、受験生へ向けたエールソングの「沈丁花」。北村は「10年もやってこれたのは、みんなのおかげ。本当にありがとう。みんなにひたすら、ありがとうを伝える曲です」と言って、聴く人の背中を優しく押すこの歌を朗らかに歌い届けた。

橘柊生(DJ, Key)

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そして、スラッシャーの熱い拍手を受けて始まったアンコールでは、アニバーサリーライブにふさわしいビッグサプライズが。ステージに戻ったメンバーとともに姿を見せたのはあいみょんで、彼女の突然の登場に場内は騒然とした雰囲気に包まれる。5人がここで披露したのは、あいみょんがDISH//のために書き下ろし、バンドの代表曲となった「猫」。メロパートでは息の合ったかけ合いを、サビでは美しいハーモニーを聴かせる北村とあいみょんのパフォーマンスを、オーディエンスは息を飲むように見つめ、じっくりと耳を傾けていた。

泉大智(Dr)

泉大智(Dr)[拡大]

突如展開されたスペシャルなコラボレーションに万雷の拍手が送られる中、あいみょんは「スラッシャーの皆さん、はじめまして。あいみょんです」と挨拶した。2組はあいみょんのツアーで共演経験があるものの、「猫」をセッションするのはこれが初めて。あいみょんは「めちゃめちゃ緊張した!」と照れ笑いを浮かべつつ「一緒に歌えると思わなかったけど、10周年という記念の機会に歌えてうれしかったです」と言って、DISH//に祝福を送った。そして「紅白歌合戦でまたお会いしましょう」と言い合って北村があいみょんを見送ると、橘はそのやりとりに「すげえ……」とひと言。北村も橘の言葉に同意し「そう、年末に紅白があって。そこで僕たちの……何章なのかな? 第1章としましょうか。第1章が、ピタッと締まる気がして。すごくいい時間を過ごさせてもらっています」と思いを語っていた。

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波乱万丈でありながらも、確かに成長と前進を続けてきたDISH//の10年間を祝う3日間は、DISH//のライブには欠かせないキラーチューン「愛の導火線」で締めくくられた。持ちうる力をすべて出し切るようなフルパワーのパフォーマンスで会場中を踊らせ、4人は並んでスラッシャーの前へ。北村は「何も言うことないです。次の新しい10年に向かうために。DISH//史上、最高のライブだったと思います!」と胸を張る。そんな北村の言葉に「ホントに集大成だよね」と応じたのは橘。彼は充実感に満ちた仲間たちの顔を見ながら「お前らと一緒にいて、ホントによかったなって」と伝え、そして客席を見て「もちろん、お前らとも一緒にいられて、よかったと思ってるよ!」と思いを伝えていた。

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DISH//「DISH// 10th Anniversary Live」2021年12月18日 パシフィコ横浜 国立大ホール セットリスト

01. No.1
02. ルーザー
03. Shout it out
04. 皿に走れ!!!!
05. TENKOUSEI
06. HIGH-VOLTAGE DANCER
07. NOT FLUNKY
08. ありのまんまが愛しい君へ
09. Loop.
10. Starting Over
11. DAWN
12. 猫
13. It's alright
14. I Can Hear
15. FLAME
16. Seagull
17. 沈丁花
<アンコール>
18. 猫(Acoustic ver.) w / あいみょん
19. 揺れてゆく
20. B-BOY
21. 愛の導火線

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