昨年リリースした1stアルバム「Passport & Garcon」で一躍脚光を浴びた韓国出身、大阪在住の“移民者“ラッパー・Moment Joon。今年5月に初のワンマンライブを成功させた彼は、11月に初の著作「日本移民日記」を刊行し、ますます活躍の幅を広げているように見えた。しかし、今年2回目となる今回のワンマンでMomentは突如引退を宣言。その理由について多くを語ることはなかったが、「White Lies & Blue Truth」と題された本公演には、そのヒントになるようなメッセージがちりばめられていた。
ライブにはMomentの盟友と言えるアーティストたちに加えて、アルバムのジャケットを手がけたイラストレーターの澁谷忠臣が参加。フロアの上手はライブペインティングのスペースとなっており、観客が入場する傍ら、澁谷は青く染まったキャンバスに向き合っている。そんな中、会場が暗転すると外国語のナレーションが流れ、スクリーンには日本語字幕が映し出される。そこで語られたのは、目の前で起こることに対して自分には主導権がなかったという嘆きの言葉だ。「主導権 コントロール それさえあれば、何か変わるかも ならば勝ち取る コントロールを、勝ち取る」という宣言で語りが終わると、ステージにMomentが登場。日本で生きるための権利を“勝ち取る“ことを誓う「KACHITORU」でライブの口火を切った。
続く「IGUCHIDOU」では自身の住所を連呼し、「文句あるなら会いに来い!」と高らかに声を上げるMoment。すると袖から
「Limo」でアグレッシブな姿勢を見せたMomentが一旦退場すると、再び外国語のナレーションが流れ、スクリーンには他人の声に押し潰されないよう、声を張り上げるうちに自分の声がわからなくなってしまったという苦悩の言葉が映し出される。白いシャツから青いシャツに着替えて再び現れたMomentは日本社会について攻撃的にラップした「マジ卍」でパフォーマンスを再開し、「KIMUCHI DE BINTA」では偏見に満ちた韓国人像を狂気的に演じる。続く「Home」が「ちゃんと払ってんのかよ 日本の税金」という言葉で中断されると、蔡忠浩(
その後「Apocalypse」や「Stress 1921」をハードにラップし、「Hunting Season」で自身を鼓舞するような言葉を吐くMomentだが、「今日は僕の卒業式です」と静かに告げ、感情を込めてラップするうちに涙ぐんでしまう。観客はそんなMomentに拍手を送るが、彼は「shut the fuck up」と手を振って拒絶。さらに「俺は今日みんなにお別れするために来たんだよ。Moment Joonは次のアルバムを最後に引退します」と投げやりに発表し、フロアに大きな衝撃が走る中、新曲「Spotlight」を披露した。Momentの言葉をどう受け止めるべきか観客が思いを巡らせる中、ここまでとは異なり、日本語のナレーションが流れる。それは白い嘘がネズミ色になるまで嘘をつき続けるという覚悟を伝える内容だった。
「Garcon In the Mirror」でシンガーのÄuraをステージに迎えたMomentは、「なぜ辞めるのかは音楽で話せると思うんですね。辞めますけど僕が残したものを皆さんが持って生きてほしいんです」と語り、「次のアルバムが日本のヒップホップの歴史の中で最高傑作になる予定だから楽しみにしてくれよ」と宣言。Äuraと2人で「TENO HIRA」を歌い、観客は一緒に歌えない代わりに手を挙げてMomentの呼びかけに応えた。ライブはここで終わらず、「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」というECDの言葉が流れると「BAKA(Remix)」がスタート。Momentのヴァースに続いて、
最後にMomentはGotchを再び迎え入れ、坂本龍一の楽曲をサンプリングした「DISTANCE」で静かにライブを締めくくるが、Moment退場後も拍手は鳴り止まない。人生初のアンコールに驚きつつ、笑顔を見せたMomentは今回のライブを象徴するような楽曲だという「BAD END」をもう一度披露。温かい拍手に包まれながらMomentは「本当にありがとうございます! 無事にお帰りください」と挨拶してステージを去り、フロアには澁谷が描いた白い一輪の花の絵が残された。
※記事初出時、キャプションの一部に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】Moment Joonの真意はどこに?「青と白」「現実と嘘」メッセージ隠された衝撃的ワンマンライブ(写真40枚)
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