Survive Said The Prophet、上を向いて歩き続けた先のZepp Yokohamaでツアー終幕

Survive Said The Prophetが11月にツアー「something BOLD tour」を開催した。

「something BOLD tour」はバンドが名古屋、大阪、福岡、仙台、札幌、横浜の全国6都市を巡ったツアー。ここでは11月30日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで行われた最終公演の模様をレポートする。

ステージはLEDモニターが組み込まれた立方体の台が横に3つ並べられ、中央の台の上にはドラムセットを設置。1階だけではなく2階の客席からもメンバーの姿がよく見える構成に。開演時間を迎えると、3面のモニターにモノクロのオープニングムービーが上映されてファンの期待を高めた。そして満を持して4人が登場し、「T R A N S l a t e d」「Network System」とヘビーなサウンドやシニカルな歌詞が印象的な楽曲を連投。序盤から重低音を轟かせてオーディエンスを痺れさせた。さらにダンサブルな「HI | LO」ではTatsuya（G）が流麗なギターソロを披露し、「Tierra」ではYosh（Vo）が艶のある歌声を響かせて観客を魅了する。続いてファンの涙を誘ったのはスケール感のある「Follow」。間奏でYoshが「上を向いて歩こうよ」とつぶやくと、Tatsuyaが坂本九「上を向いて歩こう」の一節をギターで奏でて観客の心に希望の光を灯した。

MCではYoshがコロナ禍の日々を振り返り、「つい最近まで音楽なんて価値がないんじゃないかと悩んでいた自分がすごくくだらないです。こんなに美しい人たちに囲まれて、こんなに美しい拍手を聞けるということを改めて知ってから、僕らはもっと強くなって帰ってこれました。こんなに大切にしてくれる人たちがいるのであれば、世界一のバンドになってやろうと思います」と明るく展望を語った。

ここでアコースティックコーナーが設けられ、フロアはアットホームな雰囲気に。バンドは2015年にリリースされたアルバム「Course Of Action」の収録曲「If You Really Want To」をメロウにアレンジし、オーディエンスは原曲とは異なる魅力を持つメロディを堪能した。Yoshはステージセットについて触れ、「せっかく2年越しにツアーができるということで、普通のツアーにしたくないなと思って。LEDを取り入れたり、Show（Dr）がすごく高いところにいたり」とShowを見上げた。そして柔らかなアコースティックギターの音色が響く「Again」では、Yoshの哀愁漂う歌唱にShowのコーラスが優しく寄り添った。涼やかな虫の声が微かに響いたのをきっかけに、4人は澤野弘之がストリングスアレンジとピアノを担当したリテイクバージョンの「3 A.M.」を披露。アコースティックギターと歌声のみで奏でられる冒頭から、徐々にさまざまな楽器の音が重なっていくこの曲で、バンドは壮大さと繊細さの両方を表現した。

終盤に届けられたのはテレビアニメ「BANANA FISH」のオープニングテーマで疾走感のあるナンバー「found & lost」。アニメのワンシーンを想起させるような電車が走り抜ける映像がモニターに映され、ハイテンションなメンバーのパフォーマンスを加速させた。さらに車の排気音とともにYoshが「迎えの車が来ました！」と叫んで、Honda「シャトル」のテレビCMソング「Right and Left」の演奏へとつなぎ、Ivan（G）が丁寧にアルペジオを爪弾いて観客をバンドの世界観に引き込む。ここまで映画やドラマで使用されるような環境音が多く取り入れられてきた本ライブ。最後に花火や鐘の音がフロアを満たしたあと、バンドは浮遊感のあるサウンドの「When I」を披露し、場内に深い余韻を残してステージをあとにした。4人が立ち去ったあとには、モニターに映画のエンドロールのようにバンドメンバー、スタッフ、ファンサイト「SABA CULT」のメンバーの名前が列挙され、本ツアーは締めくくられた。