SUPER BEAVERのアリーナツアー終幕、17年間一歩ずつ4人で階段を上ってきた先にあった景色

SUPER BEAVERが昨日11月7日に埼玉・さいたまスーパーアリーナでアリーナツアー「SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ～ 愛の大砲、二夜連続 ～」の最終公演を開催した。

愛知・日本ガイシホール、大阪・大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナの3カ所を舞台に行われた、バンド史上最大キャパシティのこのツアー。まずは藤原“33才”広明（Dr）、柳沢亮太（G）、上杉研太（B）が照明の落ちたステージに現れ、静寂の中で藤原がドラムを叩き始める。心臓の鼓動のように1音1音ずっしりと響くドラムサウンドに、柳沢のギター、上杉のベースが重なり、1つのバンドサウンドになっていくと渋谷龍太（Vo）がステージに登場。渋谷が「お待たせしました！ SUPER BEAVER、よろしくお願いします！」と言い放つと同時に大きな爆発音がなり、「ハイライト」で勢いよくライブの幕が開けた。スモークが吹き上がる舞台で、4人は剥き出しのピュアなバンドサウンドを生き生きと場内いっぱいに響かせる。オーディエンスは希望に満ちた彼らの音を全身で浴びながら、4人のパワーに呼応するように手を高く掲げた。そしてバンドは大きなスクリーンに映し出されるグラフィック映像をバックに「突破口」をプレイ。「27」ではメロディアスなギターのアルペジオをバックに、渋谷の気迫のにじむ歌声が会場中に響きわたった。

これまで17年間ずっとオーディエンスと“1対1”のコミュニケーションを重ねてきたSUPER BEAVER。その姿勢は当然アリーナクラスの会場になっても変わることはなく、渋谷は「150人のライブハウスを10年くらい埋めることができなかったバンドが、同じメンバーで続けてこの景色を見れたと思うと本当に尊い時間だなと思います。4人だけでライブをやるつもりは毛頭ございません。あなたと一緒に音楽やりたいんですけど、準備はできてますか？」とオーディエンスに呼びかける。歓声が出せない状況でもオーディエンスは「美しい日」で一層力を込めて手を叩き、会場全員でこの日のライブを作り上げていく姿勢を4人に示した。

その後もバンドは少しも勢いを緩めることなくライブを展開。「証明」では渋谷が花道の先端まで進み出て、観客の顔をじっくりと見ながら歌を届けた。みずみずしいサウンドが晴れやかに場内に広がる「青い春」を経て、「mob」ではピンクとグリーンの妖艶なスモークがたゆたうステージで炎がギラギラと燃え盛る。重く響くベースソロを経てスタートしたのは「正攻法」。「過去一番を見せろ！ 飛び跳ねろ！」という柳沢のシャウトを合図にオーディエンスは一斉にジャンプして会場を揺らした。「どんどん行こうぜ！」と告げて花道に立った渋谷は、観客に語りかけるように「らしさ」を歌う。「愛しい人」ではバックスクリーンに映し出される歌詞をバックに愛にあふれる歌を届けた。

渋谷は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で思うように活動できなかった昨年を振り返り、「2020年、音楽ができないことがつらいんじゃなくて、あなたと会えなかったのがつらかった。音楽をやってるんだけど……会うことの尊さのほうが大事だったなと思ってます。だからこうやって会えてること、すごいなと思うんですよ」と胸の内を話す。そして「あなたのことを心の底から大事にしたいなと本気で思いました。あなたもあなたの大事な人を大切にしてください。それができたら毎日楽しいんじゃないかなっていうバカみたいなことを考えています。バカでも愚直でもそれでも伝えたい続けたくなるのが本心なのかなと思ってるので、ずっとやめません。俺たちがどんなバンドであるのか、次の1曲で伝えられたらいいなと思います。そしてあなたが大事な人のことを思い返すきっかけになったらと思います」と述べて「人として」をオーディエンスの心に向かってまっすぐに歌った。

ライブも終盤には今年生まれた新たな代表曲の1つ「名前を呼ぶよ」が披露される。「東京流星群」では大きなミラーボールがステージの上で輝き、星のように眩い光を放った。渋谷は「高校3年生と高校2年生で組んだこの4人組が17年続いて、この舞台に立てるなんて、夢にも思ってなかったです。あなたと一緒に叶えられたからうれしい。この4人だけでやってないから音楽は楽しいんだって心の底から思います。これからも一緒に音楽ができるような、そういうバンドでいられるように、地に足をつけて精進してやっていきますのでこれからもお世話になります。そしてバッチリお世話しますのでよろしくお願いします！ 口だけじゃないので、これからの活動で示します。そして、今日残り3曲でバチッと示します！」と告げて「予感」を爽快にパフォーマンス。さらに「アイラヴユー」で高らかに愛を叫んだあと、彼らは「さよなら絶望」をがむしゃらにプレイしてステージを去って行った。

アンコールを求める拍手が鳴る中、スクリーンに「重大発表」の文字が浮かび上がり、2022年2月23日にニューアルバム「東京」がリリースされること、そして3月26日より全国ホールツアー「SUPER BEAVER『東京』Release Tour 2022 ～ 東京ラクダストーリー ～」が行われることが発表される。再びステージに現れた渋谷は「結成17年目、なおも欲張りたいと思えるのはあなたがいるからです。あなたに楽しい思いをしてほしいです。あなたに幸せだって思ってほしいです。あなたに毎日ワクワクするなって思ってほしいです。1個ずつ作っていきます。俺たちも階段を使って一歩ずつ上がっていきます。エレベーターもエスカレーターもあるのは知ってますけども、一切使いません。階段で一歩ずつ、階段がないならジリジリと上り詰めるように少しずつ上がっていけるような、そんなバンドでありますので。いつでもそばにいます。これからも何とぞよろしくお願いいたします」とまっすぐな眼差しで語った。

渋谷はマイクを口から離すと「俺たちの“生きててよかった”にあなたがなってくれましたので、俺たちは“あなたの生きててよかった”になりたいです」と叫び、そのままアカペラで「わたしはあなたの何ですか？ あなたはわたしの光です」と「時代」を歌い始めた。サビではメンバーのコーラスが力強く響き、オーディエンスも思いっきり手を上に伸ばす。最後まで会場にいる全員で深く心を通わせ、温かな空気に満たされながら4人はアリーナツアーに幕を下ろした。