空白ごっこ、すべて下北沢開催のツアー完結「今やっとスタート地点に立てた」

空白ごっこが9月12日に東京・下北沢CLUB251にて「全下北沢ツアー」の最終公演を開催した。

「全下北沢ツアー」は、空白ごっこが活動拠点としている東京・下北沢のライブハウス10カ所を回るという意欲的な試みのツアー。ライブは対バン形式で行われ、最終公演にはゲストバンドとしてシナリオアートが参加した。

ステージに登場したシナリオアートは「アダハダエイリアン」を演奏し始め、ゆっくりとライブをスタートさせる。ハヤシコウスケ（G, Vo）が「下北、揺れていこうぜ」と呼びかけると、バンドが織り成す浮遊感のあるサウンドに合わせてオーディエンスはその場で楽しそうに体を揺らした。ハヤシとハットリクミコ（Dr, Vo）は、空白ごっこの「全下北沢ツアー」について「（自分たちだったら）回れる？ すごいことやなあ」と対バン相手を讃えていた。さらにシナリオアートは8月に配信した最新曲「アイマイナー」をプレイ。ハヤシの力強い歌声にハットリは繊細なドラミングをしながらコーラスを重ね、会場内には心地よいハーモニーが響く。また「エバーシック」では廃品回収のアナウンスに被せて3人がセッションするカオティックな展開で観る者を楽曲の不思議な世界に誘った。「ツアーの集大成に関われてとてもうれしいです」とツアーファイナルでの対バンを喜んだハヤシは「いつか本当に何もなかったかのように笑い合える未来が来るまで歌い続けたい」という強いメッセージを伝え、「スターサイドシンドローム」の演奏へとつなぐ。ハヤシはこの曲の中で「いつかの その日まで 鳴らし繋げ 鼓動を」と高らかに歌い、空白ごっこにバトンを渡した。

温かい手拍子に迎えられた空白ごっこのセツコ（Vo）は、定位置に着くと「下北沢だいちゅき」という手描きのメッセージを掲げ、オーディエンスの気分を高揚させる。空白ごっこが1曲目に選んだ楽曲は「運命開花」。サビに入るタイミングでセツコが拳を上げるとフロアの観客もそれに合わせて手を挙げ、会場内は心地よい一体感に包まれていった。ステージ袖でシナリオアートのライブを観ていたというセツコは「圧巻のパフォーマンスで最後に相応しいライブだった」と感想を述べた。ツアーが始まるまで数えるほどしかステージに上がったことがなかったというセツコだが、「下北沢ツアー」を通じて場数を踏んできたことで堂々とした佇まいとなり、オーディエンスにクラップを促したり、楽曲によっては簡単な振り付けを交えて観る者を巻き込みながらライブを進行させていく。「だぶんにんげん」では息遣いまで聴かせる鬼気迫るボーカルで観客たちを圧倒した。

中盤のMCではセツコが空白ごっこの立役者である針原翼と出会ったときのエピソードを明かした。親に内緒でインターネットを使っていた彼女は、針原との活動を初めて親に話したときのことや、親と一緒に針原に会いに東京を訪れたことなどを回想し、1人のアーティストとして自立するまでの過程を涙ながらに語った。「今やっとスタート地点に立てたと思っている」とハッキリ口にしたセツコは「19」でパフォーマンスを再開。バンドメンバーが織り成すロックなサウンドをバックに彼女は胸に手を当てながらまっすぐな歌声を会場内に響かせた。ライブ本編の最後に披露された楽曲は、最新シングルの表題曲「ハウる」。ダンサブルなバンドの演奏に合わせて観客もジャンプを繰り返し、会場内は大盛り上がりに。計10曲を歌い終えたセツコは晴れ晴れとした笑顔で「ありがとうございました」と挨拶し、フロアに向けて手を振りながらステージをあとにした。

アンコールで再びステージに登場した空白ごっこは、未発表の新曲「プレイボタン」を披露。ツアーの後半から披露されていたというこの曲は、10月20日発売の新作音源「開花」に収録されることが明かされ、フロアからは歓喜の拍手が巻き起こった。「本当に本当の最後の曲になります」というセツコの曲紹介からツアーを締めくくる曲として繰り出されたのは「リスクマネジメント」。ハイテンポなこの曲をセツコは体を揺らしながら情感豊かに歌い上げた。すべての楽曲を披露した空白ごっこは、ツアーを支えてきたバンドメンバーやスタッフ1人ひとりを紹介し、「また会いましょう」という力強い約束をファンと交わしてステージをあとにした。