「こんな幸せなことはない」HYDE、20年越しの「ROENTGEN」再現ツアー初日で喜びを噛み締める

HYDEがソロ1stアルバム「ROENTGEN」を再現するオーケストラツアー「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」の初日公演が、昨日6月25日東京・中野サンプラザホールで行われた。

今回のツアーの主軸となる「ROENTGEN」はHYDEが2002年にリリースした作品で、多忙を極める中で日本とロンドンを行き来しながら制作されたエピソードを持つ。リリース当時、それまで彼がL'Arc-en-Cielで表現していたアプローチとは異なる、“静”の側面に振り切った楽曲の数々はリスナーに驚きをもたらすとともに広く受け入れられ、20年近くにわたり愛され続けてきた。また本作に伴う公演はこれまで大々的には行われてきておらず、再現ツアーの開催が発表された際には大きな話題に。そんな背景もあり、初日公演の会場には開演前から高揚感と興奮した空気が漂っていた。

定刻の19:06（6:66）を迎えた瞬間に暗転すると、それまで張り詰めていた空気がほのかに和らぐ。同時にステージには、ダブルカルテットや管楽器隊、コーラス隊を擁する総勢22名のオーケストラのメンバーがスタンバイし、ゆったりとアンサンブルを紡いでいった。豊潤な音がホール中に広がった瞬間、HYDEの低く深い歌声が響き、オーディエンスを静謐で荘厳な「ROENTGEN」の世界へと誘った。

なおHYDEは、今回の公演を「ROENTGEN」の再現コンサートと銘打ちながらもそれだけにとどまらず、長年のキャリアの中で培ってきた豊かな歌唱力と表現力を各曲で発揮し、音楽家としての進化をオーディエンスに証明。穏やかなサウンドに乗せて滋味のある歌声を響かせ、目の前の観客を優しく包み込んだかと思えば、直後にはオーケストラの重厚でダイナミックな演奏に拮抗するかのごとく激しく歌い上げ会場を圧倒していく。「ROENTGEN」の収録曲以外にも、観客の意表を突くセルフカバーや、制作中の「ROENTGEN 2」に収録される予定の新曲なども惜しみなく届け、集まったファンを心ゆくまで酔わせた。

またHYDEは公演中に何度も「幸せ」「うれしい」といった言葉を繰り返し、自身の最大の“理解者”であるファンの前で思い入れのある楽曲を歌える喜びを吐露。「タイムマシーンに乗ったみたいな気分でやっております」と笑い、「やっとこうやってツアーができて、人生はわからないね。不思議……」としみじみ口にする場面も。さらに「アコースティックライブって最初は慣れなくて、すごい緊張感もあったし、歌うのもつらかったんです。息継ぎの音が入るのが怖かった。でも今は息継ぎでリズムが取れるようになって、楽しめるようになりました。（こういうことは）30年やらないとわからないのかって。今はリラックスして気持ちよく歌えるようになったのがうれしい……その域に達するまで見守ってくれてありがとうございます」と自身のボーカリストとしての変遷を語り、「素晴らしい演奏と素晴らしいボーカル……素晴らしい、かわいらしい皆さんに向けて演奏できる。こんな幸せなことはないです。お互い求め合うというか、関係が成立してますね」と照れくさそうに微笑んだ。

この日のハイライトとなったのは、公演当日に配信リリースされたばかりの「NOSTALGIC」。スクリーンに歌詞と和訳を映しながら、HYDEは未来に思いを馳せるように情感たっぷりのパフォーマンスを展開し、ホール中をノスタルジーで満たしていく。そして、オーケストラの演奏が止まった瞬間、万雷の拍手が沸き起こり、新曲が観客に受け入れられたことが証明された。最後にオーケストラのメンバーが退場したあと、HYDEは再びステージに姿を見せ、「『ROENTGEN』は、このタイミングのために20年前に作ったかのような作品で……（再現できて）本当にうれしい。今日は来てくれてありがとうございました」と万感の思いを噛み締め、何度も客席に投げキッスを贈ってステージをあとにした。

「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」はこのあとHYDEにとって初の京都・平安神宮公演を挟みつつ、9月26日の広島・上野学園ホール公演まで続く。なお、2日間にわたる平安神宮公演の模様はライブビューイングおよび生配信される。