花譜、集大成的ワンマンで「不可解」の答えを示す

花譜が6月11、12日に東京・チームスマイル・豊洲PITにてワンマンライブ「不可解弐 REBUILDING」を開催した。計3公演が行われたうち、本稿では2日目に行われた「不可解弐Q3-魔法の無い世界-」のレポートをお届けする。

「不可解弐 REBUILDING」は、これまで花譜が開催してきたワンマンライブ「不可解弐Q1」と「不可解弐Q2」を再構築し、そこに新たなワンマンライブ「不可解弐Q3-魔法の無い世界-」を加えて計3公演を2日間で行う試み。ライブ前に行われたクラウドファンディングでは目標3000万円を大きく超える8260万円を集め、「不可解弐Q3-魔法の無い世界-」はそのリターンとしてYouTube Liveを通して全編無料で生配信が行われた。

「Q3」のライブは花譜自身がつづった詞「魔法のない世界1」の朗読からスタート。花譜が「わたしはかふ うたをうたう うたがすきだから」とつぶやくと場面が転換し、多数のオーディエンスが見守るステージに花譜の姿が現れる。「Q3」のために新たにデザインされた新衣装「青雀黑」に身を包んだ花譜は「Re:HEROINES」を歌い始め、ライブの第1部をスタートさせた。ステージ上の花譜が力強い歌声を響かせると彼女の周囲には楽曲の歌詞が浮かび上がり、オーディエンスは楽曲提供者であるカンザキイオリがつづる言葉を噛みしめながら花譜のパフォーマンスを堪能した。「ラスト公演、盛り上がっていきましょう！」と呼びかけた花譜は「魔女」の演奏へとつなぐ。ラスサビで歌に熱が入ると花譜は被っていたフードを取り、身振り手振りを交えながら歌声を会場内に響かせた。

「Q1」「Q2」ではゲストのバーチャルシンガーを招いたコラボステージなどが展開されたが、「Q3」はゲストを一切招かず花譜というシンガー1人にスポットを当てたパフォーマンスが披露された。初めてのオリジナル曲である「糸」の歌唱後、花譜は「デモをいただいた日のこととか、初めてレコーディングの部屋で歌った日のこととか、めちゃくちゃ鮮明に思い出せる」と回想。「当時はライブとかも含めて、こんなことになるなんて思わなった」と、自身の歩みを振り返った。MC後には「アンサー」「心臓と絡繰」とミドルテンポのナンバーが続き、花譜は時折目を閉じてバンドメンバーの演奏に耳を傾けながら体を揺らして、自身が歌うことのみならず、会場で演奏されている音楽そのものを楽しんでいる様子を見せた。

第1部の終盤にはダンサー2人がステージに登場。花譜は「私論理（Sosuke Oikawa Remix）」「未確認少女進行形（Hideya Kojima Remix）」など、リミックスによってダンスナンバーに生まれ変わった持ち曲を立て続けに披露した。花譜がビートに合わせてステップを踏みながら手を振ると、オーディエンスはそれに合わせて手を振って応えてみせた。すでに15曲以上歌唱していながらも花譜は疲れを見せることなく、第1部最後の曲「危ノーマル（Sosuke Oikawa Remix）」で「もっと弾けようぜ 暴れようぜ」と高らかに歌ってオーディエンスを焚き付ける。「みんなー、ありがとう！」と挨拶した花譜がステージから姿を消すと、ライブは10分間の休憩に入った。

第2部のライブは、花譜がもう1つの新衣装「金鶏」に身を包むオープニングムービーから始まった。「雛鳥」の歌唱で穏やかに歌い始め、オーディエンスの心をつかんだ花譜はカンザキのボカロ曲「命に嫌われている」の“Prayer ver.”をパフォーマンス。息遣いまで聴かせる繊細なボーカルで「生きろ」という力強いメッセージを観る者に投げかけた。MCに入ると花譜は「Q3」のライブでゲストを招かず1人で歌い切ることについて「原点回帰」と表現しつつ、「大変ですがとても楽しいです」と微笑んだ。

「過去を喰らう」で会場のボルテージを一気に引き上げた花譜は、自身の名前を広めるきっかけとなった楽曲「不可解」を歌い始める。待ってましたと言わんばかりに盛大な拍手と手拍子が巻き起こる中、花譜は語りかけるように自身を取り巻く“不可解”を歌った。さらに「Q3」ではカンザキがライブのために書き下ろした新曲「未観測」が披露された。「不可解」のメロディを踏襲した新たな楽曲「未観測」について花譜は「青空の下で、横一列にみんなが並んでいて……」と自身が思い描く情景を口にし、「みんなでぐちゃぐちゃになりながらも、それでも歩いていって最後には笑顔になる。そんなイメージです」と説明した。

制服姿に着替えた花譜は「私の等身大の歌」という紹介から「帰り路」を歌唱。ライブがフィナーレに差しかかる頃、2日間にわたってライブを支えてきたバンドメンバーに「最高です」と賛辞を贈った花譜はラストナンバーとして「そして花になる」を歌い始める。「私が歌を歌うのは 歌が好きだったからさ」と、冒頭の朗読で読まれた「うたがすき」というメッセージを改めて伝えた彼女は、「好きな歌を好きなように歌わせてくれて、ありがとう。あなたの生活の一部にしてくれて、ありがとう」とオーディエンスや視聴者に感謝の言葉を述べた。さらに「不可解」というライブシリーズについて彼女は「魔法がない世界に 魔法のような出来事を届けたい。魔法はみんなの心の中にあります。みんなのつくる魔法、それが『不可解』」と、彼女なりの“アンサー”を示した。「花譜でした。またね」という挨拶を終えて花譜が姿を消すと、エンディングムービーが流れる中で彼女の詩「魔法のない世界2」が朗読され、3公演にわたるワンマンライブ「不可解弐 REBUILDING」はフィナーレを迎えた。