ライブは三月のパンタシアとファンのストーリーを1本の物語にしたような朗読を挟みながら進行。ステージの後方のみならず左右、下をスクリーンとした空間を舞台にバンドセットでパフォーマンスが繰り広げられた。
ステージに立ったみあは「こうやって会うのはいつぶりだろう? ひさびさで楽しみで、昨日もうまく眠れなくて」と朗読を始め、「君と出会ってからずいぶん月日が経つね。あの頃も今も君に会うたびにうれしくて泣きたくなる。『私、寂しかったよ』そう伝えてみたかった。でも、いつもと少し違う君のおぼろげな横顔に私は言葉に詰まってしまって、『うん、そうだね』とぶっきらぼうに返事をした。この君との曖昧な距離は、いつも私の心を甘く切なく引っかく」とそっと物語を紡ぎ出した。朗読を経て、勢いよく演奏されたのは梅雨の時期にぴったりのナンバー「パステルレイン」。カラフルなイラストが彩る空間にポップな鍵盤の音色が跳ねるように響きわたった。ノスタルジックなメロディが印象的な2曲目「恋はキライだ」の演奏が終わると、ステージを囲む景色は水中に一変。みあは「青に水底」を深い水の底から切ない思いを絞り出すように歌い上げた。
続いての朗読パートでは、“君”との距離がどんどん広がっていく切ない思いや不安な気持ちが読み上げられていく。「あの頃はあんなに近くで笑い合っていたのに、今は顔を合わせることすら困難だ。『大変だよ』と答える君の背中がどんどん遠ざかっていく気がした。隣にいるのになんだか遠く感じるのはどうしてだろう?」という言葉は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で直接会うことがなかなかできずにいる三月のパンタシアとファンの状況を想起させるものだった。朗読を終えたみあはインディーズ時代の代表曲の1つ「day break」を歌唱。さらに疾走感あふれるロックナンバー「ソーダアイス」を激しいスポットライトの下でエモーショナルに披露したあと、美しい花火をバックに「青春なんていらないわ」で儚くて切ない夏の恋を歌い上げた。
最後の朗読パートでは「永遠は一瞬の刹那だ。明日の行方すら私たちにはわからない」と前置きしながらも「そんな不確かな毎日でも、迷いながらでも、私は君と笑い合える未来を紡いでいきたい。爪先を前に向ける。『ねえ』と君の背中に語りかけ、一歩踏み出した」と、“君”と一緒に未来に向かって歩いていく様子が描かれた。「この曲で私たちはまた、もう一度始まる」という言葉とともに披露されたのはメジャーデビュー曲「はじまりの速度」。晴れやかにこの曲を歌唱したみあは「もともと私は自分の心の内を人に見せるのが苦手で、気持ちを声にするのが下手で、それでもなんとかこの気持ちを音楽にしようと思って、一生懸命自分の言葉にして伝えてきました。それをいつもあなたがちゃんと受け取ってくれて、いつも隣で手をつないでいてくれたから、私はここまで歌い続けることができたよ。本当にありがとう」とまっすぐに思いを言葉にし、「今日このライブで、私があなたと約束をします。『もう一度、物語ははじまる』というタイトルにもある通り、今日ここから始まる1ページ目をこれまでよりさらに極彩色の物語を描くこと、そして私が必ずあなたを今よりもっと楽しくて明るい場所に連れて行きます」と力強く宣言した。
ライブ初披露となった新曲「幸福なわがまま」では、軽快で温かいサウンドに乗せて“君”を思う純粋な気持ちが歌われる。スクリーンいっぱいに桜の花びらが舞った「三月がずっと続けばいい」では、みあが「もっと大きい声出ますよね?」とファンに呼びかけ、チャット欄に「らららら」という合唱が沸き起こった。ラストナンバーは三月のパンタシアとファンの物語を描いた楽曲「ランデヴー」。スクリーンにはファンがTwitterに投稿した三月のパンタシアへのメッセージが映し出され、温かな光景の中でライブは幕引きとなった。
三月のパンタシアはこのライブで7月21日に両A面シングル「101 / 夜光」をリリースすること、そして7月19日にみあが書いた初の長編小説「さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた」を発表することをアナウンスした。「101」はテレビアニメ「魔法科高校の優等生」のオープニングテーマで、じんが書き下ろした楽曲。逆風の中でも強くまっすぐに突き進む少女の姿を描いた、攻撃的なポップチューンとなっている。「夜光」は長編小説の主題歌。小説には“高校生ロックバンド”を1つのテーマに、少年少女が葛藤して苦しみながらも自分の未来を選択していくさまが描かれる。
三月のパンタシア「5th Anniversary Live もう一度、物語ははじまる」2021年6月1日 セットリスト
ストーリー1
01. パステルレイン
02 恋はキライだ
03. 青に水底
ストーリー2
04. day break
05. ソーダアイス
06. 青春なんていらないわ
ストーリー3
07. はじまりの速度
08. 幸福なわがまま
09. 三月がずっと続けばいい
10. ランデヴー
みあ コメント
「魔法科高校の優等生」のオープニングテーマとして書き下ろした「101」。
三パシ史上、もっともクールで攻撃的な楽曲が完成しました。凛とした少女が秘める、溶け出すほど熱い想い。激しいサウンドに引っ張られるように、またのみこまれないように必死に叫びました。めちゃくちゃかっこいいです。
そして初めての、小説の出版。今からどきどきしています。
小説「さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた」は、高校生ロックバンドをひとつのテーマに、繊細に揺らめく季節の中にいる少年少女が、葛藤したり苦しみながらも自分の未来を"選択"する、その姿を描きました。
その小説の主題歌となる「夜光」。歌詞も音づくりも、小説のキャラクターに寄り添い、青くて熱くて衝動的な思いをもとに制作したのですが、凄まじくエモーションあふれる曲ができてしまいました……!小説のタイトルに「さよなら」という言葉があるように、そんな情緒的な切なさも滲む、夏のロックナンバー。小説と楽曲あわせて、はやく届けたいです。
今年の三パシの夏、期待して待っていて下さい!
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音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】三月のパンタシア、ここからもう一度始まる“君と私の物語”「もっと楽しくて明るい場所に連れて行きます」(写真9枚)
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