「[Alexandros] 10th ANNIVERSARY LIVE at 国立代々木競技場 第一体育館 “Where's My Yoyogi?”」は1月に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大状況を受け、時期と会場を移して開催された。このライブは、バンドのこれまでのあゆみをたどる内容のデビュー10周年ライブであると同時に、局所性ジストニアの治療に専念するため2019年6月よりライブ活動を休止し、ベストアルバム「Where's My History?」に関する活動をもってバンドを離れる庄村聡泰(Dr)の“勇退”の場にもなった。
2001年の秋に川上洋平(Vo, G)が磯部寛之(B, Cho)をバンドに誘ったときのエピソードをきっかけに始まったオープニングムービーでは、子供たちが若かりし日のメンバーを演じ、白井眞輝(G)が音楽をやめようとした2008年、川上洋平(Vo, G)が「ヤバい曲できたから聴いてよ!」と部屋に飛び込んでくる様子が映し出される。映像がぷつりと終わるとステージには川上、磯部、白井、そして庄村の代わりにドラムを叩くサポートメンバーのリアド偉武が登場。どっしりとしたビートに乗せて楽器を鳴らしたあと、[Alexandros]はオープニングムービーの中でイントロが鳴らされた“ヤバい曲”こと「For Freedom」でライブをスタートさせた。2曲目には「For Freedom」と同じく1stアルバム「Where's My Potato?」に収録されている「She's Very」を披露。ベストアルバム「Where's My History?」からの選曲が中心になると思いきや、あえてベスト盤には入っていない曲を選ぶという、[Alexandros]らしいニクい演出に観客は拍手を送った。
デビュー目前にして前任ドラマーの石川博基が脱退、そして白井の後輩である庄村の加入に至った経緯を描いた映像の上映を経て、バンドは庄村らしい手数の多いドラムが印象的な「city」を披露。リアドは当時からこのバンドを近くで見てきたからこそ叩ける、庄村のニュアンスを引き継いだ軽やかさとしたたかさを併せ持ったビートを打ち鳴らした。2ndアルバム「I Wanna Go To Hawaii.」収録の「Rocknrolla!」の大サビ前では、川上が挑発的な眼差しをフロアに向けると、磯部がベースの弦を両手で叩き、白井はギターを弾きながら絶叫。4人は感情を爆発させるようにパワフルな演奏を繰り広げ観客を圧倒した。
巨大な“[]”に挟まれた大きなハートマークをバックに、[Alexandros]なりのラブソング「You're So Sweet & I Love You」を爽快感たっぷりに届けたあと、スクリーンには東京・日本武道館公演を控えた、2012年の4人の姿を描いたドラマが流れる。映像内で庄村役の子供が試行錯誤してたどり着いた印象的なドラムパターンから、[Alexandros]は3rdアルバム「Schwarzenegger」の収録曲「Waitress, Waitress!」を披露。ここでキーボーディストのROSE(THE LED SNAIL)も合流し、流麗なピアノサウンドで演奏に華を添えた。代表曲「Kick&Spin」では川上がマイクを片手にメインステージから花道へと飛び出し、白井も花道の先端まで躍り出てフライングVをかき鳴らす。シンガロングパートでは声を出せないとわかりながらも川上が客席を煽り、観客に代わって磯部と白井が吠えるように歌ってみせる。観客は力の限りステージに向けて拳を掲げ、バンドの演奏に応えた。
人気曲「Starrrrrrr」が始まるとステージの前方で火花の特効が弾ける。レーザーが飛び交う中で、川上は髪から汗を滴らせながら気持ちよさそうに歌声を響かせ、磯部はパワフルなベースラインとともに渾身の咆哮をフロアへ放ち、白井は巧みにギターソロを奏でた。[Champagne]から[Alexandros]への改名時のエピソードが映像で紹介されたあと、バンドは改名後に初めてリリースしたシングルの表題曲の1つ「Droshky!」を披露。続けて川上は「もっと出せるだろ。口からじゃないぞ、心からの声だぞ。頼んだぞ!」とフロアに呼びかけ、バンドが強固なキャッチーさを手に入れた楽曲「Dracula La」を晴れやかな表情で歌ってみせた。
普段のライブではシンガロングでオーディエンスと1つになる「Adventure」では、川上がアドリブを多数盛り込み、歌詞の言葉1つひとつを話しかけるように歌う。観客が歌うパートをメンバーが熱唱すると、川上は長い花道を一歩一歩確かめるように前進し観客の心の声に耳を澄ませた。庄村の勇退についてこの日初めて発言したのは磯部。「いろんな区切りの日であり、もともと1月だったわけだけど、今日になって。あいつ今日バースデーボーイじゃん」と磯部が言うと、川上も「マジで忘れてたよね(笑)。しかもさ、11年前の3月といえば『Where's My Potato? release TOUR』(2010年3月に開催された1stツアー)があって、あいつが加入を決めたときでもあって」と運命に翻弄されるバンドであることを笑う。磯部は「持ってるなあ、聡泰(笑)。個人的には今日が門出の日だと思ってる。過去11年、あいつのドラムを背負ってベースを弾けてすごく楽しかったし感謝もしています。だけどしんみりせずにこれからも[Alexandros]として歩むし、あいつはあれだけの人なんだから絶対このまま大人しくいくわけがないと思ってるんで、今日は気持ちよくみんなで送り出せればと思います」と庄村にエールを送った。
庄村をこのバンドに引き込んだ白井は「庄村くんが腰が痛いと言い出してから、まさか勇退する日が来るなんて想像もしていなかったです。高校の軽音楽部の後輩とひとつ屋根の下で暮らしてバンドを組んで世界中を回ったりしてこんなふうになるとは。まだ僕は彼とバンドメンバーとしての別れを迎えることに実感が湧いてないんですけど、どうなんでしょう。今晩、僕の心が動いてしまうのかも知れません」と率直な思いを述べる。そして川上から煽るようにそそのかされると、「俺の喉は幕張に捨てて帰ります」と言い捨ててから「行けるか幕張ー!」と絶叫し、代表曲「ワタリドリ」に入るきっかけをバンドに与えた。この曲で川上は「大それた“六重奏”を」と歌い、庄村、そしてサポートメンバーも含む6名がこのライブを作っていることを力強くアピール。観客はシンガロングはできないが、リズムに合わせて絶え間なくジャンプし続けフロアを波打たせた。
けたたましいドラムから開放感のあるメロディにつながっていく「NEW WALL」に続いて披露されたのは、軽やかな質感の楽曲を初めて打ち出し、[Alexandros]の新たな扉を開いた「Feel like」。川上の「歌えないなら踊ろう!」という呼びかけの通り、観客は手を掲げ、気持ちよさそうにそれぞれの場所で体を揺らした。海外レコーディングに挑戦した7thアルバム「Sleepless in Brooklyn」の収録曲「LAST MINUTE」をじっくりと演奏したあと、[Alexandros]はラウドなロックチューン「Mosquito Bite」で思い切り歪ませたギターサウンドをフロアにぶち込む。最後は[Alexandros]の写真だけが入ったカメラロールをたどっていくような映像をバックに「PARTY IS OVER」を演奏。“[]”型の紙吹雪が無数に舞う中で川上は「終わりたくない。帰りたくないよ」とつぶやいたが、バンドの演奏は終わり、スクリーンには「PARTY IS OVER」(=パーティは終わった)の文字が映し出された。
鳴り止まない拍手にスクリーンの「PARTY IS OVER」の文字列に「NOT」が加わり「PARTY ISNOTOVER」になると、今度は[Alexandros]のグループチャットに着信が来た様子が映し出される。メンバーたちはそれに“応答”すると、花道、センターステージ、メインステージにそれぞれ登場し、コロナ禍に生まれた、愛しい人との再会を願うアコースティックナンバー「rooftop」を演奏し始めた。再びステージにメンバーが集うと、昨年11月に発表したシングル「Beast」をパフォーマンス。続いて彼らは明るくひらけた未来を歌う新曲「風になって」をスケール感たっぷりに届け、今のモードを提示してみせた。
川上が「目の前に見覚えのあるドラムセットが……」と言うと、彼が見つめる花道の先には異常に高い位置にシンバルが配置された、イエローカラーが眩しい庄村のドラムセットが。ドラムセットのもとに庄村が姿を現すと、メンバーはそこに向かって歩いていく。3人は照れくさそうに1人ずつ庄村とハグを交わし、彼の前にスタンバイ。4人は庄村のカウントから「Where's My Potato?」の収録曲「Untitled」を演奏し始めた。[Alexandros]は1音1音を噛みしめるようにそれぞれの楽器を奏で、観客たちは一挙手一投足を見逃すまいとステージに熱い視線を送る。インディーズ時代に、いつかスターになる日を夢見て思いをつづった曲を、今や日本屈指のロックバンドに上り詰めた4人で演奏し終えると、庄村はかぶっていた帽子を脱いで深々とお辞儀。川上からの熱い抱擁を涙ながらに受け止め、4人のこれまでの道のりを表したかのような長い花道をメンバーと肩を組んで歩いた。メインステージにたどり着いた庄村は客席とステージに再びお辞儀をして舞台をあとにした。
川上は「行っちゃいましたね。延期しまくってたからずっといるのかと思ってた。本当にいなくなっちゃいました」と寂しそうに語り、磯部は「ついにですね。でもこれからの[Alexandros]、そして庄村聡泰に期待しましょう」と言葉を噛みしめる。最後に[Alexandros]は5月5日にリリースする、映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の主題歌「閃光」を熱演し、ライブの幕を閉じた。
スクリーンには、このライブのストーリーを担ってきた“子供[Alexandros]”が現れ、6月に始まる新たなツアーの開催を告知。エンドロールのあとには、川上、磯部、白井、庄村の4人のサイン入り写真が映し出された。なおこのライブの模様は、WOWOWオンデマンドにて3月26日まで見逃し配信中。
なお庄村は本日3月22日(月)20:00より自身のInstagramアカウント(@alexandros_satoyasu)にて生配信を実施。ここでは「これまでのこととこれからのこと」について話すという。
「[Alexandros] 10th ANNIVERSARY LIVE at 国立代々木競技場 第一体育館 “Where's My Yoyogi?”」2021年3月21日 幕張メッセ国際展示場 セットリスト
01. For Freedom
02. She's Very
03. city
04. Rocknrolla!
05. You're So Sweet & I Love You
06. Waitress, Waitress!
07. Kick&Spin
08. Starrrrrrr
09. Droshky!
10. Dracula La
11. Adventure
12. ワタリドリ
13. NEW WALL
14. Feel like
15. LAST MINUTE
16. Mosquito Bite
17. PARTY IS OVER
<アンコール>
18. rooftop
19. Beast
20. 風になって
21. Untitled
22. 閃光
[Alexandros]2021年ツアー
2021年6月17日(木)宮城県 SENDAI GIGS
2021年6月18日(金)宮城県 SENDAI GIGS
2021年6月24日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
2021年6月25日(金)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
2021年6月30日(水)愛知県 Zepp Nagoya
2021年7月1日(木)愛知県 Zepp Nagoya
2021年7月8日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
2021年7月9日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
2021年7月15日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama
2021年7月16日(金)神奈川県 KT Zepp Yokohama
2021年7月23日(金・祝)北海道 Zepp Sapporo
2021年7月24日(土)北海道 Zepp Sapporo
2021年7月30日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
2021年7月31日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
2021年10月12日(火)神奈川県 横浜アリーナ
2021年10月13日(水)神奈川県 横浜アリーナ
2021年10月26日(火)東京都 日本武道館
2021年10月27日(水)東京都 日本武道館
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[Alexandros]の10年間を凝縮した幕張の夜、庄村聡泰の門出に4人で鳴らした曲は https://t.co/B0VWk9ycAx