12月9日に配信シングル「ダ・カーポ」をリリースした黒木。オンラインライブでは、趣向を凝らした配信ならではの演出により、楽曲の世界観が鮮やかに表現された。配信が始まると、西洋風の建物内を彷徨うような映像が流れる中、黒木の声が聞こえてくる。「いつになったら外に出られるのだろう。小さな部屋に閉じこもって代わり映えしない毎日を繰り返している。やらなきゃいけないことはたくさんあるのにやりたいことは見つからない。読みかけの本みたいに同じところを行ったり来たり。退屈な日々に変化が欲しい。平凡な人生に奇跡が欲しい。何度願っても巻き戻されて進めない」。ナレーションが終わるとともに、画面に映し出された本が開かれた。すると「Da・Capo」と書かれた白いページが現れ、ページの中に黒いドレスをまとった黒木の姿が徐々に浮かび上がる。「檸檬の棘」でライブの幕を開けた彼女は、神佐澄人(Piano)と井手上誠(G)による伴奏に乗せ、徐々に歌声に力を込めていった。
続けて黒木が「エジソン」を表情豊かに歌い上げると、メトロノームやレトロなおもちゃの映像が映し出される中、再びナレーションが始まる。「大人になるってどういうこと? 今夜、世界中の子供たちに、とっておきの秘密を教えてあげましょう。大人はみんな知っている。あなたもきっと気付いてる。本当は、この世界には大人なんて1人もいないこと。大きな子供たちが、おまわりさんのフリをしたり、先生のフリをしたり、お父さんのフリをしたり、お母さんのフリをしたり、バレリーナのフリをして、それぞれの物語を追いかけているということ」。映像が切り替わると、衣装を変えた黒木が「不思議の国のアリス」のような装飾が施されたフロアに現れる。軽快な演奏に乗って「ピカソ」を歌い始めた黒木は、この曲の間奏で紙芝居を展開。「ネオももたろう」という物語を読み聞かせ、“本当の正義は偏見や暴力を超えたところにある”というメッセージを視聴者に送った。井手上のノイジーなギターが響きわたった「クマリ」に続いては、ライブタイトル曲「ダ・カーポ」へ。神佐、井手上と息を合わせ、変拍子の複雑な楽曲をしっかりと歌い上げた黒木は「ダ・カーポ」と曲名を口にする。すると映像は突如巻き戻されていく。
オープニング同様、再び黒い衣装で現れた黒木は、ピアノの伴奏に乗せて語り始める。「2020年春、世界は暗転してしまいました。行きたい場所にも行けず、会いたい人にも会えず、私たちは息の詰まるような生活に耐え続けてきました。中には孤独をこじらせて破裂しそうになっている人や、無差別に悪意をぶちまけている人もいました。しかし、忘れてはいませんか? 私たち人間は元から孤独な存在です。少し離れ離れになったからと言って、今さら何を嘆くことがあるでしょうか。私たちは1人ぼっちだからこそ、それぞれの孤独を持ち寄って優しい空間を作ることができます。それはオンラインでも同じことです。音楽家である私には、病気を治療することはできません。けれど、病んだ心を癒すために毎日作り続けてきました。堂々巡りの生活は私たちの心を壊します。だけど、この状況に踊らされてはいけません。私たちは自らの意志で踊るのです。力強く、そして誰よりも美しく」。語りから「カルデラ」を情感豊かに歌った黒木は、「深刻なときほどひとつまみのユーモアを!」と視聴者に呼びかけると「ふざけんな世界、ふざけろよ」をエネルギッシュに歌った。そして黒木は「また外の世界で、本当に、生身の私たちで会える日まで、どうか皆さん元気で過ごしていください」という言葉から晴れやかな表情で「骨」を披露。パフォーマンスが終わると「私たちは今、空白の中にいる。自由のきかない日々の中であなたを支えるものはなんだろう。それがもしも芸術だったなら、私は音楽の中、文学の中でいつだってあなたを待っています」とナレーションが流れ、「Da・Capo」というタイトルの本は閉じられた。
なおイープラスでは1月3日23:00まで本公演のチケットが販売されており、購入者は同日23:59までアーカイブを視聴できる。
黒木渚 Online Live 2020「ダ・カーポ」2020年12月26日 セットリスト
01. 檸檬の棘
02. エジソン
03. ピカソ
04. クマリ
05. ダ・カーポ
06. カルデラ
07. ふざけんな世界、ふざけろよ
08. 骨
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黒木渚、趣向凝らしたオンラインライブで呼びかける「私たちは自らの意志で踊るのです」 https://t.co/YXxRPDuZjr