ライブは新型コロナウイルス感染防止のガイドラインに則った観客者数で実施され、その模様はABEMA、U-NEXT、Streaming+、PIA LIVE STREAMで配信された。本公演ではアリーナに広いステージを設置。そのセットを360°囲むスタンド席から観客がステージを見下ろす形でライブが進行された。またこれまでもRADWIMPSの映像作品に携わってきた映像ディレクターの谷聰志による指揮のもと、ライブ演出には映像投影をふんだんに導入。50名近くのダンサーも参加し、総合芸術のようなステージが繰り広げられた。
開演時間になると閑散とした電車やマスクを付けた群衆など、コロナ禍の日本を映し出したムービーが流れる。映像が終わると、RADWIMPSはスモークが漂うステージに立ち「タユタ」でゆっくりとライブをスタート。ゆるやかなサウンドの中に迫力がにじみ、会場に荘厳な空気が漂った。その後、野田洋次郎(Vo, G, Piano)はギターを置いてピアノの位置につき、スポットライトが放つ強い光をバックに「グランドエスケープ」を弾き始める。その音色に桑原彰(G)と武田祐介(B)が織り成すシンセサイザーのサウンドと観客のハンドクラップも重なり、壮大なサウンドが生み出された。
「DARMA GRAND PRIX」では赤と緑のスポットライトが飛び交う中、エッジの効いたカッティングギターと野田の気だるげな歌声が絡み合う。武田の艶やかなベースや森瑞希(Dr)と繪野匡史(Dr)のドラミングも炸裂し、鬼気迫るパフォーマンスが繰り広げられた。野田は360°を囲む客席を見渡し、やっとオーディエンスに会えたことを喜びつつ「大きな声を出して愛し合って叫び合って確認し合うような、そういうことができないのがもどかしい気持ちです。でも第一歩として僕らが音楽を共有する空間を持てたのが何よりだと思うし、これを1つのステップとして、さらに前へ前へと向かって行けたらいいなと思います」と確かな口調で述べた。続いて披露されたのはコロナ禍にリリースされた「新世界」。野田は世界と対峙するように、切実な思いを歌を通して言葉にしていった。
「シュプレヒコール」では広いステージ全体に歌詞や映像が次々と投影されていき、スタンド席や配信で舞台を上から観ることができるからこその壮観な光景が描かれる。「パーフェクトベイビー」ではホバーボードに乗った野田がステージ上を器用に移動しながら歌唱した。「NEVER EVER ENDER」でメンバーが楽しげにステージで飛び跳ねてはしゃぐと、オーディエンスも一斉にジャンプ。感染予防のため声は出せなくとも会場一体となって音楽を楽しみ、そんな客席がダンスフロアと化していく光景をメンバーは愛おしげに見つめていた。その高揚感をさらに煽るようにメンバーが「おしゃかしゃま」を演奏し始めると、観客のクラップにも一層力がこもっていく。メンバーは広いステージでなりふり構わずアグレッシブなプレイを繰り広げ、ひさしぶりとなったこの曲恒例のソロバトルも楽しげな様子。観客も拍手で彼らの演奏を煽り、場内は熱気に満ちあふれた。続く「G行為」ではピンク色の照明の中、ダンサーが怪しげなダンスを展開。最後にはダンサーが縦横無尽にステージを駆け回り、カオティックな空間が広がった。
その後RADWIMPSは会場内に作られたアンティーク風の特設セットに移動。アコースティックギター、コントラバス、マンドリンのアコースティック編成でカントリー調の「お風呂あがりの」を披露した。さらに3人は笑顔を見せながら「やどかり」を軽やかに演奏。途中でメンバーはセットの外に出てステージへと戻り、ダンサーの陽気なダンスをバックにパフォーマンスした。野田は昨今の世の中の状況について「どこかギスギスしているなって思っていて。人の言葉や態度がなんだかエッジが効いていて、人の気持ちを窮屈にしていっている印象があります」と憂い、「繊細で優しい魂がどうか生き続けられるような世界であってほしいなと思っています」と願いを述べる。そして「今を生きる僕たちがそんな世界を作っていけると思っています。綺麗事と言われようが信じてるし、皆さんと作っていきたいです」と真摯に述べ、「棒人間」を万華鏡のような映像演出を取り入れたステージでじっくりと届けた。
「螢」では電飾によって無数の光がステージ上空に浮かび上がり、幻想的な光景が描かれた。その後バンドは「告白」をたおやかに演奏。柔らかなピアノサウンドと、それに寄り添うような温かみのあるギターとベースの音色が会場に響きわたった。さらに3人は星空のような無数の光が瞬く空間で「トレモロ」を披露。「有心論」では観客に向かって感情を解き放つようにみずみずしいサウンドを会場いっぱいに響かせた。ライブ終盤、メンバーは「ます。」でステージの隅々まで行き、観客と心を通わせる。野田が「(ライブを)やるかどうか迷っていたんですが、今この瞬間ここに立ってこういうステージを作って皆さんと共有できて、決断して本当によかったなと心から思っています」と顔をほころばせると、メンバーに大きな拍手が降り注いだ。ラストナンバーはライブであまり披露されることのない「バグッバイ」。歯車が回る映像演出と共に3人はたゆたうようにサウンドを紡ぎ、ステージをあとにした。
鳴りやまない拍手に応えて、再びステージにRADWIMPSが登場。アンコールにはRADWIMPSと親交の深いハナレグミの永積崇がゲストとして参加した。永積は「どうもー! 15周年おめでとうございます!」と旧友を祝い、「みんな声が出せなくても、ハートの声がステージに届いているなと思って」とこのライブをずっと裏で観ていたことを明かした。ここで披露されたのは2015年に野田がハナレグミに提供した「おあいこ」。野田がピアノで奏でるドラマチックなサウンドに乗せて、永積の切なくも優しい歌声が響きわたった。永積が野田と固く抱き合ってステージを去ったあと、野田は「15年前の今日、僕らはデビューしたんですけど、15年後に彼とここで歌えたことは幸せなことです。本当にうれしく思います」と声を弾ませた。
温かなハンドラクラップの中、メンバーは大勢のダンサーに囲まれながら楽しげに「いいんですか?」を演奏。野田は「僕らミュージシャンは曲を作るのとライブをすること以外仕事がないので、人生の半分が削ぎ取られたような気持ちでこの9カ月を過ごしてきました。どんどん世界も時代も変わっていくけど、ミュージシャンとしてやるべきことに気付かされて……それはそれでよかったなと思います」と今年を振り返り、「僕らはその時々の時代、人間、空気に反応しながら、これからもきっと音楽を作っていくと思います。たまには耳に痛いことを言うかもしれないけど、優しい心を持って、何かこの世界にまだない新しいメッセージを残したいなと思います。明日から16年目に向かうんですけど、よかったらこの先もRADWIMPSをお願いいたします」と未来に想いを馳せた。そしてRADWIMPSは美しい光の粒が漂う空間で「スパークル」を奏でる。最後には「DADA」で会場一丸となって大きな盛り上がりを見せ、結成15周年記念ライブを締めくくった。
RADWIMPS「15th Anniversary Special Concert」2020年11月23日 横浜アリーナ セットリスト
01. タユタ
02. グランドエスケープ
03. DARMA GRAND PRIX
04. 新世界
05. シュプレヒコール
06. パーフェクトベイビー
07. NEVER EVER ENDER
08. おしゃかしゃま
09. G行為
10. お風呂あがりの
11. やどかり
12. 棒人間
13. 螢
14. 告白
15. トレモロ
16. 有心論
17. ます。
18. バグッバイ
<アンコール>
19. おあいこ
20. いいんですか?
21. スパークル
22. DADA
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RADWIMPS、デビュー15周年記念ライブで踏み出した大きな一歩 https://t.co/tKMkFm2Ljn