人間椅子が満員の中野サンプラザで30周年公演、無数の銀テープが観客を襲う

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人間椅子のデビュー30周年を記念して7都市で開催されたツアー「バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー」が、“13日の金曜日”である昨日12月13日に東京・中野サンプラザホールにて千秋楽を迎えた。長いキャリアを積んできた人間椅子だが、同会場で単独公演を行うのはこの日が初。チケットはソールドアウトし、客席は熱狂的なファンで埋め尽くされた。

人間椅子(撮影:西槇太一)

人間椅子(撮影:西槇太一)

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和嶋慎治(撮影:西槇太一)

和嶋慎治(撮影:西槇太一)[拡大]

SEとして「新青年まえがき」が会場に流れる中、和嶋慎治(G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)が1人ずつ袖から登場し、期待でいっぱいの観客に向かってステージの中央で一礼。大きな歓声と手拍子がこだまし、猟奇的なバンドのイメージと似つかわしくないほどにハッピーな空気で会場が満たされた。そんな普段のライブとはひと味違った雰囲気の中で、彼らは「宇宙からの色」でライブを開始。3人の鳴らす激しくヘビーなサウンドが一気に客席を飲み込んでいく。なお、和嶋はこの日のような晴れの舞台のために4、5年前に購入して一度も着ていなかったという紋付袴、ナカジマはこの日に向けて仕立てた背中に白糸でバンド名を刺繍した黒の鯉口シャツ、そして鈴木はいつも通りの黒の法衣を来て、気合いを込めてこのライブに臨んだ。

鈴木研一(撮影:西槇太一)

鈴木研一(撮影:西槇太一)[拡大]

彼らはこの日、12月11日にリリースされたばかりのベストアルバム「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」の収録曲を中心とした選曲で、まさにオールタイムベストと言えるセットリストのライブを展開。和嶋は「今日は人間椅子のベストヒットメドレーが展開されます! 人間椅子には別にヒット曲はないんですけど、おそらくこれがヒット曲として認識されているであろう曲をいっぱいやります!」と選曲について説明した。一方、アニバーサリー公演ながら特別な演出はバスドラが光ることのみで、派手な映像などは一切使わずに、3人はこれまで30年間繰り返してきたのと変わらないパフォーマンスで大会場の満員のオーディエンスを魅了した。しかしMCが始まると、彼らのマイペースなトークで会場は一気になごやかな雰囲気に。1980年代にオジー・オズボーンが来日公演を行った舞台に立てたことが感無量だと語りつつ、和嶋は「研ちゃんが遠い」、鈴木は「老眼でぼんやりとしか和嶋くんが見えない」とステージの広さに驚いていた。

テルミンを演奏する和嶋慎治。(撮影:西槇太一)

テルミンを演奏する和嶋慎治。(撮影:西槇太一)[拡大]

「品川心中」の曲間の、演奏を止めて和嶋が落語を披露する部分では、彼は「立ってるのは金蔵で、足下にあるのが雑巾、先日出させてもらったのが『シャキーン!』」と、NHK Eテレの子供向け番組に出演したことに触れて観客の笑いを誘った。続く「芋虫」では、間奏をたっぷり設けてサイケデリックな世界観を増幅させ、和嶋がテルミンの演奏も披露。鈴木は、この30年間「エフェクターボードを使わないほうがカッコいい」と思っていたが、和嶋が最近作る曲がエフェクターを多用するため、ついにボードを使う羽目になってしまったと苦笑し、エフェクターもボードもすべて和嶋からもらったものだと明かした。

左から鈴木研一、和嶋慎治。(撮影:西槇太一)

左から鈴木研一、和嶋慎治。(撮影:西槇太一)[拡大]

ライブ中盤には「愛のニルヴァーナ」「悪夢の序章」といったベストアルバム収録の新曲2曲も披露。「悪夢の序章」の演奏前には、この曲を「尿路結石で苦痛が押し寄せてきたときの悪夢のようなイメージ」で鈴木が作曲したことが明かされ、和嶋が「怪我の功名ですよ。石ができたからこの曲に独特の緊張感が生まれた」と語ると、鈴木は「いいことばかり起きてたら、レゲエみたいな曲になってたね」と納得した。また、人間椅子は2月に初の海外公演としてドイツとイギリスをまわるツアーを行うことが決定しているが、和嶋はMCで「きっと来年からは海外での活動が増えるんじゃないかな」とコメント。彼らの海外進出の呼び水になった、5月にYouTubeで公開したミュージックビデオが海外で大評判になった「無情のスキャット」を演奏した。

ナカジマノブ(撮影:西槇太一)

ナカジマノブ(撮影:西槇太一)[拡大]

この日唯一のベストアルバム未収録曲「地獄小僧」で、ナカジマがドラムを叩きながらパワフルな歌声を響かせたのを皮切りに、いよいよライブはラストスパートへ。「陰獣」「人面瘡」と30年前に発表された最初期の楽曲を畳みかけ、ラストの「針の山」がスタートすると、鋭い針を表現した銀テープがステージから客席に発射された。鈴木の掛け声に合わせてオーディエンスは一斉にジャンプし、会場はこの日一番の盛り上がりに。さらに曲が終わる頃、とどめとばかりにもう一発の銀テープが炸裂。降り注ぐ“針の山”を浴びながら、観客は歓喜の声を上げた。

和嶋慎治(手前)と鈴木研一(奥)。(撮影:西槇太一)

和嶋慎治(手前)と鈴木研一(奥)。(撮影:西槇太一)[拡大]

アンコールで和嶋は「あっという間でしたね。最初はガチガチだったけど、広い会場は最高に楽しいです」とライブを回想。人間椅子としては珍しい銀テープの演出についても振り返り、「我々、今後も大きい会場で特効をいっぱい使ったライブをやりますから!」と宣言した。アンコールとして「雪女」「地獄」を披露し、再びステージを去った彼らだが、まだまだライブは終わらずダブルアンコールに突入。ここで和嶋が、この中野サンプラザホール公演が映画化されることを明かし、予想外の告知に客席から驚きと戸惑いが入り混じった悲鳴が上がった。2時間半を超えるアニバーサリーライブのラストを飾ったのは「なまはげ」。渾身の演奏を終えた3人は、盛大な拍手と声援に包まれながら、うれしそうな表情を浮かべながらステージを後にした。

なお、この公演の模様はYouTubeにて生中継されており、現在もアーカイブ配信が期間限定で行われている。

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人間椅子「バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー」2019年12月13日 中野サンプラザホール セットリスト

01. 宇宙からの色
02. 羅生門
03. 品川心中
04. 芋虫
05. 愛のニルヴァーナ
06. 死神の饗宴
07. 悪夢の序章
08. 命売ります
09. 無情のスキャット
10. 芳一受難
11. 深淵
12. 地獄小僧
13. 陰獣
14. 人面瘡
15. 針の山
<アンコール>
16. 雪女
17. 地獄
<ダブルアンコール>
18. なまはげ

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※記事初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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