最新アルバム「ANTI」を携えて国内外を巡り、作品の世界観をライブを通して作り上げてきたHYDE。約半年にわたったツアーのラストを飾った昨日の公演では、集大成とも言えるステージングを展開した。
開演時刻である「16:66(17:06)」が近付くと、会場内に漂う空気が熱を帯びていく。そして「666」の数字がスクリーンに浮かんだ瞬間に幕が落ち、ステージのそこかしこから炎が上がる中で「NEO TOKYO」をコンセプトにした広大なセットの全貌が現れた。「This is Neo Tokyo. Welcome to the sleepless city of the far east」というアナウンスが何度も流れる中、ステージに停まっていたパトカーの上に黒い仮面を被ったHYDEが登場。彼は抑制を効かせた声で「WHO'S GONNA SAVE US」を歌い出し、サビでオーディエンスにシンガロングを促す。すると盛大な合唱が起き、強固な一体感が会場全体に漂った。
「やっちまおうぜ、幕張!」とHYDEが叫んだことをきっかけに、パトカーのランプが回り出し「AFTER LIGHT」へ。さらにHYDEは激しい空気を保ったまま、「FAKE DIVINE」になだれ込み、体をゆったり揺らしながら妖しさをはらんだ声を響かせた。HYDEは「ようこそ、『ANTI FINAL』へ」と挨拶し、「今日は俺も観たことのない景色を観れるんでしょ?」と喜びをにじませた声で観客に呼びかける。そんな言葉に続いた「INSIDE OF ME」で彼はフロアに足を踏み入れ「かかってこい!」と挑発。そのアグレッシブなパフォーマンスを支えるように、バンドメンバーも全力でプレイを繰り広げた。ドライブ感たっぷりの「DEVIL SIDE」を披露したのち、HYDEは被っていたマスクを剥ぎ取り、素顔をあらわに。鋭い眼差しをたたえながら「TWO FACE」をパフォーマンスし、オーディエンスの熱狂に拍車をかけた。アメリカの銃問題を歌詞で扱った「SET IN STONE」の前には、スピーカーから雨音と共に銃声の音が流れ、曲の世界を演出。曲が始まると、軍帽を被り「ANTI」のロゴをあしらった旗がついたマイクスタンドを担いだHYDEが情感たっぷりの声で歌い上げた。クライマックスで彼はマイクの持ち手を銃口に見立て、口の中に含むと銃声と共にステージに倒れ込んだ。
その後、ショッキングな演出を和らげるように、静謐なピアノの旋律が奏でられ、ゆっくりと「ZIPANG」がスタートする。スポットライトの下に立ったHYDEは、優しい眼差しを浮かべ、歌詞のひと言ひと言を噛み締めるように歌唱。ステージに組み込まれたモニタには色付いた葉が舞う映像が流れ、日本の景色を歌った楽曲の魅力を引き立てた。HYDEが最後に吐息を漏らしたのを合図にステージが暗転し、カッティングギターが「OUT」の始まりを告げる。バンドが奏でる爆音をバックに、HYDEは先ほどまでの穏やかな表情を一変させ、旗を翻しながらオーディエンスを挑発。呼応するかのように盛り上がる観客の姿に、彼は「すごくいい眺め! 最高じゃない?」と笑みを浮かべ、「『ANTI』は招待状のようなもので、みんなによって完成する。カオスを見せてくれ!」とさらなる盛り上がりを求めた。
「MAD QUALIA」では軍帽を脱ぎ、観客と共にヘッドバンギングを繰り返し、「SICK」では拡声器を持ち、飛び交う火炎の前でアジテートを繰り広げたHYDE。後半戦に入ってからも彼は勢いを保ったまま「DON'T HOLD BACK」で会場の狂騒を加速させ、曲のクライマックスでは断末魔のようなシャウトで観客を圧倒する。さらに金髪を振り乱し、ライオンのような雄叫びをあげ「LION」を絶唱したあとには、「芸術的なカオスを見せてくれ!」と煽り「ANOTHER MOMENT」をプレイした。熱気がピークに達したところで、HYDEは「MIDNIGHT CELEBRATION II」を叩き込み、スタンディングエリアにサークルモッシュを巻き起こした。観客の狂乱を前にHYDEは金属バットを手にパトカーの窓を叩き続け、鬼気迫る表情のままステージをあとにした。
アンコールでは、HYDEは客席後方に降り立ち、CO2を噴射してオーディエンスをヒートアップさせる。ステージに戻った彼はSlipknot「DUALITY」のカバーと、爽快なメロディが光る「AHEAD」を投下。自らも発奮させるように「悔いを残すなよ! 食い尽くそう!」と叫び、今度はパンクアレンジを施した「GLAMOROUS SKY」を伸びやかな声で熱唱した。3曲を連続で届けたところでHYDEは「すげえいいもん観せてもらった。最高だね、君たち」とうれしそうに観客に語りかけ、2年前のVAMPSの活動休止から駆け抜けてきた日々を振り返り始めた。
彼が客席を見渡しているとオーディエンスが次々とスマホのライトを灯し、満点の星空のような情景が会場に生まれる。その景色を前にHYDEは「ただの光じゃないんだよね。全部意味のある光なんだよ。この光は僕の大事な人の光なんです。よき理解者のね」と述べ、ファンやバンドメンバー、スタッフへの感謝の思いを口にした。さらに、「2年かけてここまで戻ってこれたけど、あとは突っ走るだけだと思ってます。でも僕はそんなに強くないんで、みんなの援護がないと走れないんです。援護してくれたら真っ暗闇の中でも何かをつかむから。期待して待っててください」とさらなる進化を誓い、「ORDINARY WORLD」につなげた。バンドメンバーによるダイナミックな演奏に乗せて、HYDEは思いを込めるように目を閉じながら歌唱。目を潤ませ客席エリアに広がる無数の光を見つめたのち、ラストではメタリックカラーの紙吹雪が舞う中でロングトーンを響かせ、情感に満ちたたおやかな歌声で会場全体を包み込んだ。
2時間の濃密なステージを終えたあと、HYDEはファンへの愛を伝えるように投げキッスを繰り返す。そして、「また帰ってくるから……首洗って待ってろよ!」と絶叫して半年間のツアーに幕を下ろした。
HYDE「HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL」2019年12月8日 幕張メッセ国際展示場4~6ホール公演 セットリスト
01. WHO'S GONNA SAVE US
02. AFTER LIGHT
03. FAKE DIVINE
04. INSIDE OF ME
05. DEVIL SIDE
06. TWO FACE
07. SET IN STONE
08. ZIPANG
09. OUT
10. MAD QUALIA
11. SICK
12. DON'T HOLD BACK
13. LION
14. ANOTHER MOMENT
15. MIDNIGHT CELEBRATION II
16. DUALITY
17. AHEAD
18. GLAMOROUS SKY
19. ORDINARY WORLD
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