10月から開催されていた
2019年1月にメジャーデビューアルバム「Sympa」をリリースして以降、ドラマタイアップで話題を集めた「白日」のヒットや年末の「第70回NHK紅白歌合戦」への初出場決定など破竹の勢いを見せる中で行われたツアーファイナル。フロアはもちろんのこと2階席も立ち見客で埋め尽くされ、開演前から異様な熱気が場内に充満した。
開演時刻が近付くにつれて、スピーカーから流れる機械音が大きくなり、暗転と同時にその音は怒号のような大歓声にかき消される。そして雲のようなスモークで覆われたステージに4人が登場し、ライブの幕が上がった。うっすらとシルエットが浮かび上がったところで常田大希(Vo, G)の弾く歪んだギターの音色を口火に、勢喜遊(Dr, Sampler)の刻むビートが重なり1曲目の「飛行艇」へ。常田の低音のボーカルと、井口理(Vo, Key)のハイトーンが重なり、そのハーモニーを新井和輝(B)と勢喜のリズム隊がどっしりと支える。常田が「Say!」と呼びかけるとオーディエンスの合唱が巻き起こり、「飛行艇」がライブアンセムとして定着していることを伺わせた。そして曲がクライマックスを迎えると、雲が晴れるように会場が明るくなり、ステージが全貌を見せた。
間髪入れずに「Sorrows」が始まり、常田が鋭いカッティングギターを響かせたのに合わせて、ほかの3人も弾むようなアンサンブルを奏でる。フロアからは美しいクラップが起き、ステージ上の4人と観客の間に一体感が作り出された。極彩色のライティングが妖艶な空気を引き立たせた「あなたは蜃気楼」に続いた「ロウラブ」では、井口が清涼感のある声で歌い上げながらフロアに挑発的な視線を送る。一方で「It's a small world」で井口は木琴のようなファニーな音色を奏でながら、どこかあどけなさを内包した繊細な声を響かせた。また「Vinyl」のイントロでは勢喜がドラムソロを披露し、リズムを溜めた焦らすようなプレイで会場を魅了した。
ライブの中盤に差し掛かると、4人は常田の「新曲やりまーす」のひと言から、井口が畳みかけるように歌う「Overflow」をさらりとパフォーマンス。続けて、熱狂するフロアをチルアウトさせるように、新井が弾くシンセベースが印象的な「NIGHT POOL」を届け、曲ごとに異なるアプローチを見せる。このブロックでハイライトとなったのは、King Gnuを一気にスターダムに伸し上げた「白日」。フロアが静寂で包まれる中、井口が白いライトを浴びながらアカペラで歌い出す。そのたおやかな声を軸に常田、新井、勢喜は丁寧なプレイを繰り広げ、その豊かなアンサンブルにオーディエンスはじっと耳を傾けた。
しかし、井口の「まだまだいけるか?」という言葉から「Slumberland」のイントロが流れ出し、常田が拡声器を手に激しく咆哮すると空気が一変。照明で赤く染まったステージの上で常田は練り歩くようにしながらアジテーションする。サビではすさまじいシンガロングが起き、常田はイヤモニを外しその声に耳を傾ける。さらに、新井がステージの中央に躍り出てアグレッシブなプレイで観客の視線を奪った。ジャズとラップの要素を盛り込んだ新曲「Vivid Red」でバンドの最新モードを提示したのち、4人は抑制されたアンサンブルが耳に残る「Hitman」を演奏。その余韻が残る中で、常田が弾くパイプオルガンのようなシンセの音をバックに井口がすうっと息を吸い込み「The hole」を歌い始めた。その声に寄り添うように、常田の奏でるピアノ、新井の弾くシンセベース、勢喜のドラムが響く。そして胸を締め付けるような井口の声と、常田の弾く柔らかな鍵盤の音色が残る中、穏やかな拍手がさざなみのように広がった。
水を打ったように静かな客席に向かって井口は「こんばんは。お元気ですか?」と呼びかけ、アコースティックコーナーに移行することをアナウンス。常田がつま弾くギターに乗せて「Don't Stop the Clocks」がシームレスに始まった。井口と常田は掛け合いのようなセッションを展開し、そこに新井の弾くコントラバスと勢喜のフィンガースナップの音が溶け合う。4人は互いに視線を交わし、ときには声を重ね、何度も笑みを浮かべた。さらにこのアコースティックコーナーでは観客を巻き込んでの「McDonald Romance」、常田の低いボーカルが冴える「Bedtown」が奏でられた。ここではメンバーが顔を見合わせながら何度も微笑む場面があり、柔らかくリラックスしたムードが漂った。
後半戦に差し掛かる前に、井口がニッポン放送のレギュラー番組「King Gnu井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)」で鍛えた日常ネタ満載のトークで場を盛り上げる。彼が「ここから後半戦です」と宣言したのをきっかけに、新井が奏でるうねるようなベースラインから展開する「Tokyo Rendez-Vous」がスタート。常田がマイクを握り締めて挑発的に歌うと、それに呼応するように会場の狂騒が加速した。観客の大合唱を巻き起こした「Prayer X」を経て、本編は佳境に突入する。勢喜がドラムとサンプラーを駆使しながら場の空気を作り出すのと並行して照明が激しく明滅し、ライブの定番曲である「Flash!!!」になだれ込んだ。吹き上がるスモークを浴びながら、4人は音をぶつけ合い爆音でフロアを支配する。その勢いのままラストナンバーとして披露されたのはパンキッシュな「Teenager Forever」。井口が伸びやかな声で熱唱する横で、常田、新井、勢喜が楽しそうに楽器を繰り、4人は音の洪水で会場を飲み込んで本編を終えた。
性急なアンコールの拍手に応え、着替えもせず再登場したメンバーたち。常田は「本日お知らせがありまして」と神妙な表情で口にすると、勢喜が軽やかにドラムロールを叩き、ニューアルバムのリリースとライブツアーの開催を発表した。常田の「ぜひ遊びに来てください……King Gnuでした」という言葉を合図に最新曲の「傘」が披露され、しっとりとした空気を会場に送り込む。曲の余韻を残しつつ、井口は「楽しく最後を迎えられてよかったです」と感慨深そうに語り、ラストの「サマーレイン・ダイバー」につなげる。オレンジの光がステージとフロアに落ちる中、メンバーは声を重ねつつ、オーディエンスのシンガロングを誘う。曲の終盤でメンバーは向かい合ってセッションしたり、イヤモニを外し客席から沸く歌声に耳を澄ませたり、それぞれの形でライブのクライマックスを堪能した。最後に常田はギターをフロアに投げ込み、新井はピックを観客にプレゼント。井口は「センキュー!」と叫び、勢喜は軽やかな足取りで去るなど、“四者四様”の形でステージをあとにした4人だったが、その顔にはそれぞれ充実した表情が浮かんでいた。
King Gnu「King Gnu Live Tour 2019 AW」2019年11月26日 Zepp Tokyo セットリスト
01. 飛行艇
02. Sorrows
03. あなたは蜃気楼
04. ロウラヴ
05. It's a small world
06. Vinyl
07. Overflow
08. NIGHT POOL
09. 白日
10. Slumberland
11. Vivid Red
12. Hitman
13. The hole
14. Don't Stop the Clocks
15. McDonald Romance
16. Bedtown
17. Tokyo Rendez-Vous
18. Prayer X
19. Flash!!!
20. Teenager Forever
<アンコール>
21. 傘
22. サマーレイン・ダイバー
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破竹の勢いを見せるKing Gnu、ツアーファイナルで圧巻パフォーマンス(ライブレポート / 写真9枚) - 音楽ナタリー
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