6人のメンバーの中では“最後尾車両(最年少)”ながら、唯一のバックボーカルとして超特急の歌声を一手に担うタカシ。年初のインタビューなどで2019年の個人の目標として「ソロライブをやりたい」と口にしていたが、23歳を迎える自身の誕生日の当日にその願いが叶うこととなった。彼が単独ライブを行うのは2017年3月以来、約2年半ぶりのこと。会場を埋め尽くした8号車(超特急ファンの呼称)を前に、タカシは超特急の楽曲はもちろん、自身の愛する洋邦のポップスや初めて作詞作曲に挑んだオリジナルソングを織り交ぜた多彩なナンバーの数々で観客を楽しませた。昼夜の2部にわたって行われた公演のうち、この記事では第2部の模様をレポートする。
超特急のライブとは趣の異なるオーガニックなサウンドのSEがライブの幕開けを告げると、円形のステージをぐるりと囲む客席にはタカシのイメージカラーである純白のペンライトの光が一斉に明るく灯った。バンドセットの向こう側からせり上がりでファンの前へと現れたタカシが1曲目に届けたのは、高田漣が楽曲提供した「ソレイユ」。今年の2月に発表され、超特急のライブでもまだ披露されていないこのフォークソングをオープニングナンバーに選んで驚きと歓喜の歓声を誘った彼は、朗らかな歌声と晴れやかな笑顔で8号車を自身のライブへと歓迎した。
「今日は来てくれてありがとう! ゆったりとした時間を過ごしていってください。楽しんでいってな!」。そう呼びかけたタカシが続けて披露したのは、はっぴいえんど「空いろのくれよん」のカバー。伸ばしたウェーブヘアをハーフアップにして、普段とは少し違う大人びた佇まいでステージに立つ彼は、山口寛雄(B)、皆川真人(Key)、黒田晃年(G)、河村吉宏(Dr)によるバックバンドが刻むゆったりとしたテンポに心地よさそうに身をゆだねながら丁寧なボーカルを聞かせる。続くサニーデイ・サービス「恋におちたら」のカバーでは曲の世界観に合わせたさわやかなボーカルに声の表情を変えつつ、晴れた日の“きみとぼく”の情景を鮮やかに描き出した。
最初のMCでは「この雰囲気だったら『どうも、タカシです』でいいかもしれないけど……」と前置きしつつ「これだけは絶対に言わせてください。どうも皆さん! タカシやーーで!!」と“やでポーズ”でいつもの自己紹介をして、場内を和やかなムードで包んだタカシ。彼は「こんなにたくさんの方が来てくれていることがうれしいと思います」と集まった8号車に感謝の気持ちを伝え「次にやる曲も、みんなで盛り上がれる曲なので。聴き覚えがあったら、クラップだったりしてもらえたらいいなと思っています」と呼びかけた。こののちに彼が届けたのは、タカシにとって初挑戦となる洋楽カバーのセクション。ダリル・ホール&ジョン・オーツ「Private Eyes」が始まるとステージ奥の大きなビジョンには大都会の夜景が映し出され、場内の雰囲気をドラマティックに染め上げる。ステージの際、客席のすぐそばまで歩みを進めたタカシは舞台上を軽快に歩きながら滑らかに英語詞を歌い上げ、クラッシュシンバルの弾ける音に合わせたクラップで会場の熱気を引き上げていった。また、続くポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソン「Say Say Say」ではタカシの持ち味と言える美しいファルセットを駆使したボーカルワークで8号車を魅了。さらに終盤には唸り上げる黒田のギターと向き合いながらパワフルなフェイクで絡んでいく濃密なセッションも見せ、大きな歓声と拍手を集めた。
初挑戦の洋楽2曲も力強く歌いこなし、ボーカリストとして8年間を進み続けてきた中での確かな進化をファンに提示したタカシだが、グループのときとはシチュエーションが異なる1人でのMCタイムでは彼らしい生真面目さと柔和な語り口が場内に優しい空気感をもたらす。彼は「こうして1人でいると、本番になると力が入っちゃうんですけど、そういうんじゃなくて……みんなに(披露曲を)『いいな』と思ってもらえる機会になったらと思っているんです」とソロライブにかける思いを明かし「1970年代、1980年代の、楽しんでもらえるポップな曲を用意してきました」と続けた。「山下達郎さんやナイアガラ・トライアングルが好き」と公言し、ポップスやフォークソングを愛する彼はその後も原田真二「てぃーんず ぶるーす」やシュガー・ベイブ「パレード」を作品への敬愛に満ちたパフォーマンスでカバーしていく。「パレード」ではカラフルな光で染め上げられたステージの上、時折バンドメンバーとアイコンタクトを交わし、メロディのアレンジも楽しむ様子を見せたタカシ。彼の放つ曇りのない真摯な歌声に、客席には温かな笑顔の輪が広がっていった。
そんなムードが一変したのは、観客に聴きなじみのないアップテンポなロックナンバーが投下されたとき。真っ赤な照明に照らされたステージの後方からはファイヤーボールが勢いよく噴出する中、タカシは闘争心をむき出しにしたようなシャウトやエネルギーに満ちたロックボーカルで客席を圧倒した。歌い終えると、彼は「この曲、作詞作曲させていただきました!」と、オリジナルソング「バーニングファイター!!」を初披露したことをファンに告げる。そして「どうでした!? 僕、バーニングできてましたか?(笑)」と無邪気な笑顔を見せた。この「Utautai」のために初挑戦した自作曲の制作は1曲に留まらず、タカシは次の曲もオリジナルソングであることを伝える。「『バーニングファイター!!』とは両極端な感じで捉えてもらえたらと思っていて」と切り出した彼は、次の曲について「身近にいる大切な人に対して『僕はこうしていきたい』っていう決意表明の曲でもあります。これは例えばだけど……メンバーや友達、家族といったような大切な人に届けられたらと思っています」と強い思い入れを語り「聴いてください。『peace YOU』」とタイトルコールをした。
柔らかなアルペジオにタカシの歌声が重なる歌い出しのこの曲で、彼は「守ってみせるよ どんなときだって 何が起きたって 乗り越えてみせる」というメッセージを歌で紡いだ。「未来はもっと明るい希望へ」というフレーズはユースケの作詞作曲した「8号車との歌」の歌詞とも重なり、タカシは「ここで君に歌うよ 君のレール続いてく」と続ける。「自分が今持っている力全てを使って披露させてもらえたら」と曲前のMCで語った通り、言葉の1つひとつに強く思いを込めるように、渾身のボーカルを響かせたタカシ。彼が歌詞に書いた「話下手な僕なりの言葉」はまっすぐに8号車の胸を打つ。話し言葉よりも雄弁に歌で自身の思いを伝える、“歌うたい”としての真価を自作曲で発揮した彼の姿に、オーディエンスは惜しみない拍手を送っていた。
アンコールでは最新シングル「Hey Hey Hey」のタカシセンター盤に収録された彼のモチーフ曲「小さな光」が初披露され、タカシは本編を終えてもなおスペシャルなセットリストで8号車を喜ばせた。この曲を丁寧に歌い届け、最後に天を仰いで優しいほほ笑みを浮かべたタカシは「自分にはいったい何ができるんだろうと改めて考え、行き着いたのは……超特急のボーカルとして、少しでもみんなの支えになりたい。少しでも明るい未来に導いていけたらいいなということで。ひたすらに、諦めずにまっすぐ進んでいけたらなって思っています」と力強く8号車に語っていた。また「ボーカリストとしてやっていきたいことなんかを、今日の曲の中に散りばめました」「もっとやりたいことはあるから、それはこれから。いつかはツアーとかも……いろんな方に会いに行きたいから、できたらいいなと思っています」と、いち歌い手としての野心や向上心もにじませていたタカシ。彼がラストソングに選んだのはキャロル・キング「You've Got a Friend」で、“何度でも君の元に駆け付ける”と深い友情を歌うこの曲を優しく力強い笑顔で歌い上げた。万雷の拍手の中、バンドメンバーと挨拶をしたタカシは大きな声で「最高の誕生日でした! また『Utautai』実現させるから、楽しみにしててや。みんな大好きや!」と8号車に向けてメッセージ。最後まで客席に大きく手を振りながら、ステージをあとにした。
超特急 タカシ「Utautai」2019年9月23日 舞浜アンフィシアター セットリスト ※カッコ内はオリジナルアーティスト
01. ソレイユ
02. 空いろのくれよん(はっぴいえんど)
03. 恋におちたら(サニーデイ・サービス)
04. Private Eyes(ダリル・ホール&ジョン・オーツ)
05. Say Say Say(ポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソン)
06. てぃーんず ぶるーす(原田真二)
07. パレード(シュガー・ベイブ)
08. バーニングファイター!!
09. peace YOU
10. Whiteout
<アンコール>
11. 小さな光
12. You've Got a Friend(キャロル・キング)
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