例年、夏の季節には東京・日比谷野音大音楽堂などで野外ライブを行ってきたDISH//。今回のコニファーフォレストでのライブはバンド史上最大規模の野外ワンマンとなった。開演時刻を迎えると、それまでパラついていた雨がぴったりと止む。ステージ横の大きなビジョンには、バックステージからスラッシャー(DISH//ファンの呼称)のもとへと向かう4人の後ろ姿が映し出され、場内を一瞬にして沸き立たせた。
雨音の止まった会場に響いた1曲目は「This Wonderful World」。まぶしいイエローの衣装に身を包んだ4人はクリーンなバンドサウンドを響かせ、北村匠海(Vo, G)は「君と僕の素晴らしい一日にしよう」と歌ってオーディエンスを歓迎した。矢部昌暉(G, Cho)による小気味よいギターリフから2曲目の「僕たちがやりました」に突入すると、匠海は「最後まで楽しんでいきましょう、どうぞよろしく!」とひと言。「勝手にMY SOUL」ではステージ中央から長く伸びた花道にさっそく匠海が飛び出して、がなりを効かせたボーカルを聞かせる。4人のパワフルなスタートダッシュにスラッシャーもシャウトを響かせ、会場のボルテージはぐんぐんと上昇していった。
最初のMCでは、匠海が「今日を楽しみにしていましたか? 僕らもです」と笑顔でファンに語りかける。このMCののちには4人がボーカルをリレーする軽快なポップチューン「スマホの中のラブレター」、あいみょんが楽曲提供した「へんてこ」、そして「理由のない恋」と、最新アルバム「Junkfood Junktion」からの楽曲が次々とプレイされた。「へんてこ」では匠海がアコースティックギターを抱え、出会いに胸が高鳴る情景を柔らかく歌い上げる。橘柊生(Fling Dish, Rap, DJ, Key)がキーボード演奏で美しく曲を彩った「理由のない恋」を届けると、昌暉がこの日のライブについて「昔やってた曲もやったり……やらなかったり?」と“予告”。そして匠海は「これで夏が終わる、くらいの気持ちでやってますからね!」と、4人がライブにかける意気込みを言葉にしていた。
「TENKOUSEI」からスタートしたのは、楽器を演奏しながら踊るダンスロックパフォーマンスのセクション。4人のソロ回しパートでは、メンバーの演奏に合わせてスラッシャーの持つメンバーカラーのペンライトも順に光り、楽曲を一層盛り上げる。そしてDISH//のインディーズ時代の2ndシングル曲「ピーターパンシンドローム」が続いてドロップされると、予想外の選曲に場内は大興奮。鼓を持った柊生は「説明しよう! ピーターパンシンドロームとは、未だに『ピーターパンシンドローム』をやっているようなヤツのことを言う!」と語りパートを言い換えてファンを笑わせ、場内はおなじみの「昌暉!」コールで一体となった。
ジェットコースターのような展開の演奏とボーカルで聴かせる「アイロニスト」で狂騒的な盛り上がりを生み出したのち、メンバーは一度舞台袖へ。短いブレイクを挟んで戻ったDISH//は、トロッコに乗って客席通路に登場した。「GRAND HAPPY」を歌いながらファンの間近で笑顔と歌声を届けた4人。柊生はここで事前に配られていた紙皿を手にするようにとスラッシャーに促し、メンバーとスラッシャーは「せーの!」の合図でそれを思い切り上へ向けて投げ飛ばした。空からは再び雨が降り始め、センターステージに集まった4人はスラッシャーを気遣いつつ次の曲へと進む。ここで届けられたのは「Junkfood Junktion」に収録の「乾杯」だが、この曲が大好きだという柊生は演奏を前に「乾杯」ができるまでの経緯をスラッシャーに語り出した。
柊生が明かしたのは、昨年末にメンバーがDISH//の今後について真剣に悩み、話し合いをしていたという事実。泉大智(Dr)が「今のままだと違うと思う」と切り出し、「今年(2019年)1年やってみてダメだったら、もう1回相談しようか」というところまで話題は進んだという。そんな中で行われた忘年会は、メンバーもスタッフも抱いていた思いをぶつけあう白熱の様相に。すると、その様子を受け止めたメンバーが「みんなDISH//のことが好きだからこんなに真剣に話し合ってるってことだよね、乾杯ー!」と、その場を1つにした。大智が書いた「関係ねえけどアイラブユー」「乾杯 そんで アイラブユー」というサビの歌詞にはそんな情景が込められているといい、柊生は「つまりは、『結局好きなんじゃん、DISH//が。上目指してがんばっていこうぜイエーイ!』って曲です!」と照れ笑いを浮かべながら説明する。柊生やメンバーの強い思い入れが語られたのち、その「乾杯」はアコースティックセットで披露され、円になった4人は楽しそうにお互いを見合いながら心温まる音を響かせていた。
センターステージでのアコースティックパートが終わると、強くなる雨足と共にライブはラストスパートへ。7月にリリースされたばかりの「NOT FLUNKY」では、振り付けのレクチャー動画でしっかり予習をしてきたスラッシャーの完璧なダンスで会場が一体となる。「SING-A-LONG」で1人花道へと進んだ匠海が「さてさてコニファー、雨なんかに負けんじゃねえぞ! DISH//に付いてくる準備できてますか? かかってこいや!」と威勢よくスラッシャーを鼓舞。無数に炎が吹き上がる演出の中、力強いシャウトを叩き付けた。昌暉のギターがうねりを上げた「愛の導火線」ではDISH//の斬り込み隊長・柊生もステージの最前線へ。大きなコールを巻き起こしたあとに匠海が「富士山―!!」と絶叫すると、爆音の火薬特効が場内の熱狂を加速させる。そして本編の最後の曲を前に、匠海は「今日、雨に降られたかもしれない。でも無茶苦茶楽しいです。みんなはどうですか?」と問いかけた。返って来た大きな反応に彼は「みんなに精いっぱいの思いを込めて歌います」と誓い、「DAWN」へとつないだ。
ラストの「DAWN」ではステージから放たれる強い光が雨粒を反射し、スケール感のある楽曲と相まってどこか荘厳なムードを作り上げていた。逆光に照らされた匠海は力強いボーカルでこの曲を歌い上げ、花道でスラッシャーの歓声を受け止める。美しいバンドアンサンブルで聴衆を圧倒したDISH//は「伝説の一夜に来れてよかったね!」と語りかけながら、さっそうとステージをあとにした。
大きな「おかわり!」コールを受けて始まったアンコールでも、匠海は「たぶん今日……伝説の一夜っぽいです」と言って笑った。そして彼は「Starting Over」の合唱をスラッシャーにリクエスト。スラッシャーは大きな歌声をメンバーに届け、4人はイヤモニを外したりしながら楽しそうに耳を傾けた。「東京VIBRATION」のタオル回しで最後のお祭り騒ぎを繰り広げると、柊生は「雨の中こんなに楽しんでくれてさ、そんなスラッシャーをファンに持った俺たちは本当に幸せだと思うよ!」とメンバーとファンに真剣に語りかける。強い雨もいとわず“伝説の一夜”をスラッシャーと楽しみ抜いた4人が最後に届けたのは、この日2度目の「This Wonderful World」。メンバーは1曲目よりもはっきりとエモーショナルな熱気を帯びた音を重ね、“素晴らしい一日”を歌い上げる。曲を終えるとコニファーフォレストの空には無数の花火が打ち上がり、匠海は「素晴らしい1日でした、ありがとうー!」と思い切り叫んだ。
DISH//「DISH// SUMMER AMUSEMENT' 19 [Junkfood Attraction]」2019年8月18日 富士急ハイランド・コニファーフォレスト セットリスト
01. This Wonderful World
02. 僕たちがやりました
03. 勝手にMY SOUL
04. スマホの中のラブレター
05. へんてこ
06. 理由のない恋
07. TENKOUSEI
08. ピーターパンシンドローム
09. HIGH-VOLTAGE DANCER
10. アイロニスト
11. GRAND HAPPY
12. クイズ!恋するキンコンカン!
13. 乾杯
14. 君がいないと
15. NOT FLUNKY
16. SING-A-LONG
17. ビリビリ☆ルールブック
18. 愛の導火線
19. JUMPer
20. DAWN
<アンコール>
21. Starting Over
22. 東京VIBRATION
23. This Wonderful World
リンク
- DISH// オフィシャルサイト
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HMV三宮オーパ @HMV_Sannomiya
【ライブレポート】「今日、伝説のライブっぽいです」DISH//、雨の野外でファンと作った“素晴らしい1日”(写真15枚) - 音楽ナタリー https://t.co/diw2N0yW73