今年の8月で“開校”(結成)10周年を迎えるエビ中。グループ初の試みとなった主催フェスは、10年におよぶ活動の中でさまざまなアーティストとのコラボレーションを重ねてきたエビ中が、これまで楽曲提供を受けたアーティストを招く形で行われた。その顔ぶれは、
会場となった横浜赤レンガパーク特設会場は横浜港に面した野外スペースで、来場者はおよそ1万人。敷地内にはエビ中メンバープロデュースのフードエリア「パクパクうーたん村」が設営され、雨がちらつくあいにくの空模様ながら来場者はライブ開始前からフェスならではの開放的なムードを楽しんでいた。
開演時刻になると、まずはエビ中の6人がステージへ。メンバーを代表し、真山りかが「私たち私立恵比寿中学は、ミュージックマンシップに則り、素敵なゲストの皆さんに10周年をお祝いしていただくことを誓います!」と宣誓し、フェスの幕を開けた。まずはエビ中の“妹分的存在”、桜エビ~ずがオープニングアクトとして登場し、12カ月連続配信シングル「さいしょのさいしょ」「それは月曜日の9時のように」など6曲をノンストップで披露。若さあふれるパフォーマンスでエビ中の記念すべきイベントに華を添えた。フェス本編の口火を切ったのは、自称「日本でもっともハイテンションなロックバンド」HERE。尾形回帰(Vo)は「1人残らずハイテンションにしておうちに帰します」と宣言し、ステージを所狭しと駆け回りながら観客をハイテンションに煽っていく。そのうちパラついていた雨が上がり、尾形は「ハイテンションで松野さんに届けようよ」と、2017年に急逝した松野莉奈の名を挙げ、「HEREにとって大事な曲を聴いてください」と「LET'S GO CRAZY」を熱唱。テレビ番組「エビ中++」での共演を機にエビ中との親交を深めた尾形は、熱すぎるほどのステージングで思いを届けた。
続いて登場したのはこの日最年長のゲスト、今年結成35周年を迎えるニューロティカ。雨足が強まる中、ピエロメイクがトレードマークのイノウエアツシ(Vo)は登場するなりペットボトルの水をかぶると「これでお前らと同じだー!」と叫び、ずぶぬれのオーディエンスの心をつかんだ。「いつもライブハウスでやってるから、今日は広くて歩幅が合わない」とふらつきながら暴れまわるパンキッシュなステージに会場は大盛り上がり。アツシはエビ中メンバーを呼び込み、KATARU(B)が作曲しロティカで演奏も務めたエビ中の最新アルバム「MUSiC」収録曲「元気しかない!」をライブで再現した。曲中で柏木ひなたと入れ替わる港カヲル(
SUSHIBOYSのステージには、DJブースの脇になぜか自転車が置かれ、ファームハウスとサンテナがラップを繰り出す背後でサポートメンバーが必死に自転車を漕ぐ。「ライブで使う電源はすべて自家発電だから、もしかしたら電源の共有がストップする場合もある。その場合は皆さんの協力が必要です」という説明を経てスタートした「ママチャリ」では、早々に電源が落ちてバックトラックが止まってしまう。オーディエンスの盛大な「ママチャリ!」コールにより自転車は再び動き出し、ターンテーブルは復活。「アヒルボート」では巨大なアヒル型のビーチボートを客席に放つなど、SUSHIBOYSは自由なパフォーマンスで観客を楽しませた。次のPOLYSICSが登場する頃には小雨が上がり、ソリッドなバンドサウンドで場内の熱気もヒートアップ。ハヤシヒロユキ(G, Vo, Syn, Programming)は「トイス!」とおなじみの挨拶を繰り返し、「エビ中のみんな、10周年おめでトイス!」と祝辞を述べた。彼らは「Young OH! OH!」や「シーラカンス イズ アンドロイド」などの定番曲のみならず、この日配信開始となったばかりの新曲「Kami-Saba」も披露。「Let's ダバダバ」ではシンガロングを巻き起こし、最後の「Buggie Technica」までアクセル全開で駆け抜けた。
“姉貴分的存在ゲスト”のももクロはサウンドチェックの段階から異様な盛り上がりで、おなじみの入場曲「overture ~ももいろクローバーZ参上!!~」が流れると会場全体から大歓声が上がる。百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの4人はクールなラップナンバー「The Diamond Four」でライブを開始し、貫禄のステージを見せつけた。昨年、エビ中より1年早く10周年を迎えたももクロは「去年いっぱいお祝いしてもらったのでお返しを」と、「あんた飛ばしすぎ!!」「サラバ、愛しき悲しみたちよ」「労働讃歌」を続けてパフォーマンス。さらにエビ中との初コラボ曲「COLOR」を10人そろって初披露し、エビ中ファミリー(私立恵比寿中学ファンの呼称)とモノノフ(ももいろクローバーZファンの呼称)を歓喜させた。「COLOR」のラストは10人で一斉にジャンプしてフィニッシュ。ももクロとエビ中が笑顔で退場する中、場内にはエビ中結成時のレパートリー「なにがなんでも」が流れた。アッパーな楽曲が続いたももクロのステージから一転、次に登場した吉澤嘉代子はバラード「残ってる」で場内のムードを塗り替える。これまで「面皰」「日記」「曇天」と3曲をエビ中に提供している吉澤は、「さっきまで雨がバチバチ降ってましたけど止みまして、でもまだ晴れとは言えないですよね。こういうのなんて言うんでしたっけ?」と、曇天模様の空の下で「曇天」をセルフカバー。「シーラカンス通り」「えらばれし子供たちの密話」「泣き虫ジュゴン」と物語性の強い楽曲で観客を引き込んだ。そして「ここでゲストをご紹介したいと思います」と、彼女の楽曲が大好きなエビ中の小林歌穂を呼び込むと、小林主演ドラマ「また来てマチ子の、恋はもうたくさんよ」の主題歌として吉澤が書き下ろした「日記」をアコースティックギター1本の弾き語りで仲良くデュエットした。
岡崎体育は足踏みを促す「Stamp」、じゃんけんで踊れる人を絞り込む「R.S.P」と独自の手法でオーディエンスの一体感を作り上げていく。彼は先日、デビュー時から目標に掲げていた埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功させたばかり。「さいたまスーパーアリーナの熱量そのまま持ってきました!」と告げた岡崎体育は、エビ中の中山莉子による“心の中のリコ中山“がストレートすぎるバラードに「どのビジュアルでバラード歌っとんねん、この太っちょマーガリンが」「お前みたいな全身ミートボールくんが言うセリフちゃうねん」と辛辣な言葉を浴びせる「Voice of Heart 2」、エビ中6人の“あるある”を紙芝居仕立てで歌うエビ中カバー「あるあるフラダンス」など、短い持ち時間の中にさまざまなギミックを盛り込み観客を楽しませた。続くゲスの極み乙女。は「猟奇的なキスを私にして」「ロマンスがありあまる」「crying march」でテクニカルな演奏を披露し喝采を浴びる。エビ中主演ドラマ「神ちゅーんず ~鳴らせ!DTM女子~」に2曲を提供した川谷絵音(Vo, G)はレコーディングを振り返り「全力をぶつけられた感じがした」とエビ中を絶賛した。「秘めない私」ではほな・いこか(Dr)がマイクスタンドの前に立ちダンスしながらボーカルを披露。ラストの「キラーボール」では川谷がラップの中に「エビ中10周年おめでとう!」と祝辞を盛り込んだ。
雲間からうっすらと日の差す夕暮れに登場したフジファブリックは、「夜明けのBEAT」でライブを開始。山内総一郎(Vo,G)は「初めての『MUSiC』フェスに出られてうれしいです」とエビ中への感謝を伝えた。また山内は「大切なメンバーの悲しいことがあったりしながら、今こんなデカいフェスをやってるエビ中を尊敬します。いやホントすごいよ、カッコいい」と、エビ中に敬意を表し、エビ中への提供曲「お願いジーザス」のセルフカバーを初披露。曲の後半に突然大粒の雨が降り出し、山内、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)が美しいハーモニーを重ねるクライマックスをドラマチックに彩った。彼らが最後の曲に選んだのは、エビ中もライブでカバーしたことがある、2009年に急逝した志村正彦が作詞作曲した「若者のすべて」。エンディングに合わせるかのように雨はピタリと止み、会場に再び薄い夕日が差した。
フェス開始から約7時間半、満を持して登場したトリのエビ中は、初披露の新曲「青い青い星の名前」でライブをスタート。大歓声で迎え入れたエビ中ファミリーに対し、6人は「キングオブ学芸会のテーマ」「えびぞりダイアモンド!!」をパワフルに畳みかけてその熱気に応える。星名美怜は「最後、燃え尽きるぐらい全力で楽しんでいくぞー!」と煽り、熱狂に一段と拍車をかけた。各メンバーの自己紹介のあとは、川谷が提供した「神ちゅーんず」の劇中曲「あなたのダンスで騒がしい」、さらに「結ばれた想い」と、6月5日に発売されたばかりのニューシングル「トレンディガール」に収録された新曲を連発し、2015年のサマーチューン「ナチュメロらんでぶー」へとつなげる。宵闇迫る中、次のブロックでは「幸せの貼り紙はいつも背中に」「なないろ」とセンチメンタルな楽曲が続き、「フレ!フレ!サイリウム」ではメンバーと観客が手にしたサイリウム、ペンライトが会場を明るく照らした。
「次が最後のブロックなんですが……」「ちょっと、それ、どっちのえー?」と岡崎体育ゆずりのやりとりを経て、ライブは終盤戦へ。SUSHIBOYSとコラボした「熟女になっても」、岡崎体育2曲目の書き下ろし「Family Complex」とゲストゆかりの楽曲を連続で歌ったエビ中は、最後の1曲に2013年のメジャーデビュー曲「仮契約のシンデレラ」をチョイス。途中のセリフを変え、真山は「今日は『MUSiC』フェス、本当に、本当に、楽しかったです!」と叫んだ。安本彩花は全力を出しきり枯れてしまった声で「正直、私たちアイドル主催で音楽フェスをやらせていただくということで、お客さんが来てくれるのか不安だったんですけど、みんながサイリウムを持ってくれているのを見て、すごく安心しました。私たちのことを大好きでいてくれるファミリーの皆さんがこんなにもたくさんいて、本当にありがたいなって思います」としみじみ感謝の思いを伝える。真山は「エビ中はいろんなアーティストさんからいただいた楽曲によって作られているんだなって。これからもそんなエビ中を愛してくれたらうれしいです」と締めくくった。ほどなくアンコールの声が湧き上がり、6人は再びステージへ。メンバーも観客も肩を組んで歌う「永遠に中学生」でエビ中初の主催フェスは大団円を迎えた。
「MUSiC」フェス~私立恵比寿中学開校10周年記念 in 赤レンガ倉庫~
2019年6月22日 横浜赤レンガパーク特設会場 セットリスト
桜エビ~ず(オープニングアクト)
01. エビ・バディ・ワナ・ビー
02. タリルリラ
03. おねがいよ
04. さいしょのさいしょ
05. それは月曜日の9時のように
06. リンドバーグ
01. HIGH TENSION DAYS
02. はっきよい
03. ギラギラBODY&SOUL
04. LET'S GO CRAZY
05. 死ぬくらい大好き愛してるバカみたい
06. 己 STAND UP
01. 嘘になっちまうぜ
02. チョイスで会おうぜ
03. 気持ちいっぱいビンビンビン
04. 元気しかない! with 港カヲル&私立恵比寿中学
05. DRINKIN' BOYS
06. 飾らないままに
01. ヒメサマスピリッツ
02. おジャ魔女カーニバル!!
03. 周回とセイレーン
04. ちちんぷい with 私立恵比寿中学
05. 完全無敵のぶっとバスターX
06. 冒険の書1
01. 軽自動車
02. ママチャリ
03. ダンボルギーニ
04. アヒルボート
05. SANAGI
06. Drug
01. SUN ELECTRIC
02. Young OH! OH!
03. Sea Foo
04. Twist and Turn!
05. Kami-Saba
06. Let's ダバダバ
07. シーラカンス イズ アンドロイド
08. Buggie Technica
01. The Diamond Four
02. あんた飛ばしすぎ!!
03. サラバ、愛しき悲しみたちよ
04. 労働讃歌
05. COLOR with 私立恵比寿中学
01. 残ってる
02. 曇天
03. シーラカンス通り
04. えらばれし子供たちの密話
05. 泣き虫ジュゴン
06. 日記 feat. 小林歌穂(私立恵比寿中学)
01. Stamp
02. R.S.P
03. FRIENDS
04. Voice of Heart 2
05. あるあるフラダンス
06. XXL
07. The Abyss
01. 猟奇的なキスを私にして
02. ロマンスがありあまる
03. crying march
04. 秘めない私
05. パラレルスペック
06. キラーボール
01. 夜明けのBEAT
02. 徒然モノクローム
03. LIFE
04. お願いジーザス
05. 若者のすべて
01. 青い青い星の名前
02. キングオブ学芸会のテーマ ~Nu Skool Teenage Riot~
03. えびぞりダイアモンド!!
04. あなたのダンスで騒がしい
05. 結ばれた想い
06. ナチュメロらんでぶー
07. 幸せの貼り紙はいつも背中に
08. なないろ
09. フレ!フレ!サイリウム
10. 熟女になっても
11. Family Complex
12. 仮契約のシンデレラ
<アンコール>
13. 永遠に中学生
※記事初出時「“開校”(デビュー)10周年」とありましたが、結成10周年の誤りでした。訂正してお詫びいたします。
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私立恵比寿中学(えびちゅう) @ebichu_staff
【ライブレポート】エビ中開校10年史を音楽でつないだ「MUSiC」フェスで豪華共演(写真139枚) - 音楽ナタリー #MUSiCフェス https://t.co/O9DPRVCCUy