ライブハウスシリーズとアリーナシリーズからなるこのツアーで、昨年9月より半年にわたって全19公演を行ったオーラル。ライブの前半は“Kisses”、後半は“Kills”をテーマに濃密な世界観を築き上げた。
ファイナル公演はキャリア最大規模ながら即完となり、満員の観客による恒例の“4本打ち”が横浜アリーナに鳴り響く。オープニングムービーでは「あなたにとって本当に大切なものは?」という問いかけがスクリーンに表示され、映像が終わると中西雅哉(Dr)がドラムセットと共にせり上がりで舞台に登場した。大歓声を浴びながら中西がドラムを打ち鳴らすと、この日のオープニングナンバー「What you want」のイントロが流れる。そして爆発音と共にステージ下から火花が打ち上がり、山中拓也(Vo, G)、鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B, Cho)がポップアップで勢いよくステージに現れた。ダイナミックなレーザーライトに彩られながら、オーラルは鮮烈なサウンドを轟かせる。山中は「今日はやばい日にしよう!」とハイテンションで観客に呼びかけ、「もういいかい?」を爽快に歌い上げた。
ライブ序盤から4人は興奮をにじませ、力のこもったプレイを見せる。そんな彼らの迫力のあるパフォーマンスに呼応するように「容姿端麗な嘘」ではオーディエンスが一斉に飛び跳ね、横浜アリーナが大きく揺れた。ここで「今日は強力な助っ人を呼んでいるんです」と、山中は天井に設置されたボックス型の人工知能「KK CUBE」を紹介。話しかけることでAIスピーカーのように操作できる、と照明の点灯と消灯を例に挙げて実演した。「KK、愛を歌う曲をちょうだい!」と山中がKK CUBEに呼びかけ、流れ出したのは「LOVE」のイントロ。息の合ったハンドクラップが広がり、場内は温かな空気に包まれた。「不透明な雪化粧」では美しいギターの旋律と共にたおやかな歌声が響きわたる。ステージ下からシャボン玉が吹き上がり、まるで雪景色のような幻想的な光景が生み出された。
横浜アリーナまで規模を拡大させた彼らだが、「大きくなったからと言って変わりたくないし、気取りたくない。物理的には遠くなっても、心の距離は近くにいたい」と山中は言い切る。「起死回生STORY」では盛大なシンガロングで、広い会場がたちまち1つに。「トナリアウ」を観客に語りかけるようにじっくりと届けたあと、山中を除くメンバーは一度ステージを離れる。舞台に1人残った山中はアコースティックギターを持ち、柔らかなスポットライトの光に照らされながら「ReI」を歌唱。胸を打つような優しい歌声で会場を包み込み、「ありがとう!」と深く一礼した。
ステージから誰もいなくなると、スクリーンに「人は愛ゆえに憎悪を持ち 負の感情を原動力にする」という文字が映し出され、KK CUBEの画面に「憎悪」「陰口」「差別」「未練」といった負のワードが次々と浮かび上がる。不穏な空気が流れる中、舞台下から勢いよくスモークが吹き上がり、4人が再び登場。「Ladies and Gentlemen」でライブの後半戦“Kills”の幕を開け、ダークな世界観を生み出した。赤い照明に染まったステージで、狂気的なシャウトと共に始まったのは「PSYCHOPATH」。山中は目をぎらつかせ、怪しげに左右に揺れながら吐き捨てるように言葉を放った。最新シングル曲「ワガママで誤魔化さないで」ではタンバリンを手に、妖艶なメロディを歌い上げる。軽快なリズムに合わせてオーディエンスが左右に手を振り、場内は大盛り上がりとなった。
「ツアーやってきて今日が一番楽しいです! めっちゃ楽しい!」と山中は大はしゃぎ。バンドの今後について「俺らは日本人として何をするべきなのか、オーラルにしかできない攻め方って何なのかってすごい考えてる」と述べ、「日本盛り上げていこうぜ! 日本に海外級のアーティストが出てきたらめっちゃ誇らしいやん。俺らはそこを目指して、やっていくつもりです。不器用なバンドですけど、応援よろしくお願いいたします!」と伝えて大喝采を浴びた。ライブの終盤には「CATCH ME」から恒例の“キラーチューン祭り”がスタート。「横浜アリーナかかってこい!」と山中が煽ると、会場は地鳴りのようなコールに包まれた。その勢いをさらに加速していくように「カンタンナコト」「狂乱 Hey Kids!!」とアッパーチューンが続き、横浜アリーナに熱狂の渦が巻き起こる。ラストナンバー「BLACK MEMORY」では強靭なサウンドと盛大なシンガロングがぶつかり合い、すさまじいエネルギーが場内に満ちあふれた。
熱烈なアンコールに応えて再びステージに姿を見せたオーラルは、オーディエンスの背中を押すように「ONE'S AGAIN」を真っすぐに届けた。ここで終演かと思われたが、会場が暗転。山中は「俺らが求めているのは愛情、憎しみ、冷たさ、温かさ。1人では生きていけない。なぜならそこには感情があるから。感情というものは自分のために向けるだけじゃなく、人の感情とぶつけるもの! それをあなたたちはできていますか?」と観客に問いかける。「俺らは感情にこだわり続けます。この世から人間の感情がなくなりませんように」と力強い眼差しで告げ、4人が最後に放ったのは「嫌い」。真っ白なスクリーンをバックにがむしゃらに楽器をかき鳴らし、残響音の中で颯爽とステージを去って行った。
このライブの模様は4月21日(日)にWOWOWライブでオンエアされる。
THE ORAL CIGARETTES「Kisses and Kills Tour 2018-2019」2019年3月17日 横浜アリーナ セットリスト
01. What you want
02. もういいかい?
03. 容姿端麗な嘘
04. LOVE
05. A-E-U-I
06. 不透明な雪化粧
07. 起死回生STORY
08. リブロックアート
09. トナリアウ
10. ReI
11. Ladies and Gentlemen
12. PSYCHOPATH
13. DIP-BAP
14. ワガママで誤魔化さないで
15. LIPS
16. CATCH ME
17. カンタンナコト
18. 狂乱 Hey Kids!!
19. BLACK MEMORY
<アンコール>
20. ONE'S AGAIN
21. 嫌い
WOWOWライブ「THE ORAL CIGARETTES『Kisses and Kills Tour 2018-2019』」
2019年4月21日(日)16:30~18:30
関連記事
関連商品
リンク
- THE ORAL CIGARETTES
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
わがまま娘 @wagama2musume
【ライブレポート】THE ORAL CIGARETTES、観客と感情ぶつけ合った初の横浜アリーナ公演(写真10枚) - 音楽ナタリー https://t.co/f3S7vfalpo