「闘魂」は、フィッシュマンズが、YO-KING、SUPER BUTTER DOG、HONZI、Buffalo Daughter、東京スカパラダイスオーケストラといった面々を競演者に迎え、1997年から99年にかけて行っていたシリーズ企画だ。20年ぶりの開催にあたりフィッシュマンズが対バン相手に指名したのは
開演時刻になりフィッシュマンズの茂木欣一(Dr, Vo)がステージに現れると場内から大きな歓声が上がる。茂木は弾けんばかりの笑顔で満員の会場を見渡すと、「闘魂」というイベントライブの成り立ちや、ceroが昨年発表したアルバム「POLY LIFE MULTI SOUL」を聴いて大きな衝撃を受けたことなどを観客に話し、「どうぞ、じっくり音楽時間に浸ってもらいたいと思います!」という力強い言葉で20年ぶりとなる「闘魂」をスタートさせた。
先攻を務めるceroは、高城晶平(Vo, Flute)、荒内佑(Key, Sampler)、橋本翼(G, Cho)に、サポートメンバーの厚海義朗(B)、光永渉(Dr)、小田朋美(Key, Cho)、角銅真実(Perc, Cho)を加えた7人編成でステージに登場。力強いバンドアンサンブルに乗せて高城がスムースなラップを聞かせる「わたしのすがた」でライブの幕を開ける。続く「魚の骨 鳥の羽根」の演奏がスタートすると、さまざまなリズムが織りなす複合的なグルーヴにフロアは早くも熱狂的な盛り上がりを見せた。
ファンキーなミディアムチューン「Yellow Magus(obscure)」に続けて、艶やかな「TWNKL」で観客を一旦クールダウンさせると、高城は「まさか『闘魂 2019』なんていうイベントが開催されて、そのステージに自分たちが呼んでもらえるなんてにわかには信じられない感じですが、とても夢見心地で今日という日を楽しんでいます」と、高校時代から影響を受けてきたフィッシュマンズとの競演に対する感謝と驚きの気持ちを明かした。
ライブ再開後、ceroは疾走感あふれるジャングルビートで突き進む「レテの子」、ファットなシンセベースと混沌としたポリリズムが腰を揺さぶる「Buzzle Bee Ride」、浮遊感漂うサウンドが心地良い「Waters」といったバラエティ豊かな楽曲を届けていく。メンバー紹介を挟み、「フィッシュマンズにバトンタッチする前に、『闘魂』だからもうちょっと……ハッスルしていこうと思います(笑)」という高城の言葉を受けてバンドはアーバンメロウな「Narcolepsy Driver」をプレイ。最後はダンサブルな「Poly Life Multi Soul」でひとしきりフロアを盛り上げてステージをあとにした。
しばしのインターバルののち、客電が点いたままの状態でステージに現れたのは茂木、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(key)の3人。場内がざわめく中、茂木はマイクを手にすると「フィッシュマンズのステージを始める前に、“初期フィッシュマンズ”を1曲いきたいと思います」と前置きして「ギター、小嶋謙介!」とオリジナルメンバーの小嶋謙介(G)をステージに招き入れる。どよめきにも似た歓声を浴びながら、小嶋はバンドの演奏と共にアコースティックギターをかき鳴らしてフィッシュマンズの初期曲「あの娘が眠ってる」を熱唱。楽曲の途中から木暮晋也(G)と関口“ダーツ”道生(G)も演奏に加わり、フィッシュマンズのオリジナルギタリストと、彼の脱退後にバンドを支えてきた2人のサポートギタリストがステージに居並ぶという貴重な光景が実現した。
場内の興奮が冷めやらぬ中で客電が落ちると、フィッシュマンズのライブオープニング曲としておなじみ「Oh Slime」で本編がスタート。スペーシーなサウンドが鳴り響き、ブルーの照明が神秘的にステージを照らし出すと、この日のボーカリストである
バンドの代表曲「ナイトクルージング」では茂木がボーカルを務め、生前の佐藤を彷彿とさせるような彼のハイトーンボイスに観客はじっと耳を傾け、たゆたうようなリズムに身を委ねる。ハナレグミが歌唱を担当した「なんてったの」では、彼の持ち味である温かな歌声が会場いっぱいに響きわたっていった。続く「土曜日の夜」でフィッシュマンズは鬼気迫るようなスリリングな演奏でフロアのテンションを高めたかと思えば、原田がボーカリストとして参加した「頼りない天使」「ひこうき」といった初期曲では一転、牧歌的なサウンドでピースフルなムードを生み出した。
「Smilin' Days, Summer Holiday」でライブは中盤に突入。ハナレグミが切ない歌声を聞かせる「MELODY」に続けて届けられたのは、佐藤の遺作となったシングル曲「ゆらめき IN THE AIR」。バンドが奏でる20分にも及ぶ長尺の演奏に、生前に録音された佐藤のボーカルとサポートメンバーの故・HONZIによるバイオリンの音色が重なり合い、幻想的なサウンドと共に静かな感動がゆっくりと場内に広がっていった。そして「フィッシュマンズの代表曲!」という茂木の曲振りから「いかれたBaby」が披露され、本編はセンチメンタルな雰囲気で幕を閉じた。
本編終了後もメンバーはステージに残り、ライブはそのままアンコールに突入。茂木は改めてフィッシュマンズのメンバー紹介をすると、間髪入れず「20年ぶりの『闘魂』ということで、ceroのメンバーと一緒にやってみたいと思います」とceroの演奏陣から高城と角銅をステージに呼び込む。アンコール1曲目に用意されたのは、両バンドの間で共演希望曲を挙げた際に偶然意見が一致したという「JUST THING」。フィッシュマンズとのセッションに高城は「めっちゃ緊張してます……」とつぶやきながらも、愁いを帯びたメランコリックなサウンドに乗せて原田とハナレグミと共に情感あふれる歌声を披露。最後は茂木の「終わりたくないね」という一言に続けて「Weather Report」が演奏され、20年ぶりの「闘魂」は晴れやかな雰囲気の中フィナーレを迎えた。
「闘魂 2019」
2019年2月19日 Zepp Tokyo セットリスト
cero
01. わたしのすがた
02. 魚の骨 鳥の羽根
03. Yellow Magus(Obscure)
04. TWNKL
05. レテの子
06. Buzzle Bee Ride
07. Waters
08. Narcolepsy Driver
09. Poly Life Multi Soul
フィッシュマンズ
00. あの娘が眠ってる
01. Oh Slime
02. ナイトクルージング
03. なんてったの
04. 土曜日の夜
05. 頼りない天使
06. ひこうき
07. Smilin' Days, Summer Holiday
08. MELODY
09. ゆらめき IN THE AIR
10. いかれたBaby
11. JUST THING
12. Weather Report
※高城晶平の「高」ははしご高が正式表記。
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