5月から9月にかけて行われたホールツアー「ENSEMBLE TOUR」では、華々しい演出を用いてエンターテインメント性あふれるショーを展開したミセス。今年結成5周年を迎えた彼らは“回帰編”と題した約1年半ぶりのライブハウスツアーで、シンプルな演出と共に初期ナンバーを多く含むセットリストを展開した。
渋谷CLUB CRAWLはミセスにとって初めてライブを行ったライブハウスで、バンドのホームと言える場所。彼らにとって約3年ぶりとなる本会場でのライブには、チケットを手に入れた幸運な200人のファンが集まった。会場の照明が落ち、メンバーは少し緊張をにじませた面持ちで1人ずつステージに進み出る。最後に現れた大森元貴(Vo, G)はスタンドマイクの前に立ち、言葉を挟むことなく「我逢人」をそっと歌い始めた。大胆にスロウテンポに楽曲をアレンジし、5人は丁寧に音を紡いでいく。美しい緑のライトによる演出も相まって場内に神聖な空気が広がるも、アウトロが終わると同時に藤澤涼架(Key)が勢いよく鍵盤を鳴らし、真っ赤な照明に染まったステージでアッパーチューン「ナニヲナニヲ」の演奏がスタートした。大森が「行けるかCRAWL!」と力強くフロアを煽ると、オーディエンスは無我夢中で腕を振り上げる。若井滉斗(G)はステージの前方に出て、フロアの熱を直に浴びながら鮮烈なギターサウンドを響かせた。
一体感のある引き締まったプレイを見せた「藍」を経て、大森は「渋谷CLUB CRAWLにようこそ!」と生き生きと挨拶するも、「緊張しております」と背筋を伸ばす。藤澤は「CRAWLは初めてライブをしたハコで、ずっとお世話になっています」と感慨深げにフロアを見渡した。「今日は200人しかいないです。僕らのエゴイズムに付き合ってください」と大森が告げ、「アンゼンパイ」「リスキーゲーム」といったミセスのライブで愛されてきたナンバーによって会場は1つになっていく。柔らかに「soFt-dRink」を奏でた5人は、続いて未発表曲を披露。藤澤のしなやかな鍵盤と打ち込みのサウンドを軸に、心地のいい空間が生み出された。大森がギターを手に取り、メンバーと共に演奏したのはこれまでハンドマイクでパフォーマンスしていたEDMチューン「WHOO WHOO WHOO」。2本のギターが絡み合い、より強靭にアップデートされたサウンドによってCRAWLはダンスフロアと化した。
ヒップホップ調のリズムに合わせて観客が一斉に手を上下に動かした「REVERSE」を経て、バンドは未発表曲を披露し、緩急を付けたエモーショナルな演奏を繰り広げる。藤澤が5年前のクリスマスにCRAWLで行われた対バンライブに出演したことを振り返り、「あの頃は全然お客さんが呼べなくて。クリスマスにライブをして、こうして人がいっぱい来てくれるのはうれしい」と喜ぶと、大森も「当時はここがアリーナよりでかかったんだよ」と大きく息をついた。メンバーを代表して高野清宗(B)が「CRAWLいけるかー!」と全力でフロアを煽り、ライブはいよいよ後半へ突入。バンドが「SimPle」「No.7」を連投すると、5人のエネルギッシュなプレイに応えるようにオーディエンスも力強く腕を突き上げる。そしてフロア内のテンションを一層引き上げたところで、バンドは今年の夏に新たに生まれたヒットチューン「青と夏」をさわやかに演奏して歓声を浴びた。
ここまでアップテンポなナンバーが続いていたが、繊細な鍵盤の音色と共に「私」が始まると、オーディエンスはじっくりと切なげな歌声に聴き入る。インディーズ時代のナンバー「WaLL FloWeR」は大きくアレンジされ、バンドが奏でるたおやかなサウンドに乗せて切迫感のある歌声が響き渡った。ライブ本編も残り2曲となったところで、大森が「ちょっとセッションしてもいいですか?」と告げ、セッションコーナーがスタート。大森が弾いたコードに対して、メンバーが即興で音を重ね、華麗なソロ回しを披露する。最終的にはコール&レスポンスでオーディエンスもセッションに参加し、会場に一体感が広がっていく壮観な光景が生み出された。「すごく幸せな気持ちなので、純粋にそれを込めて歌います」という大森の言葉と共に、5人が勢いよく放ったのはメジャーデビュー曲「StaRt」。そして代表曲の1つ「WanteD! WanteD!」で盛大なシンガロングを巻き起こし、大盛り上がりの中、彼らはライブ本編を終えた。
アンコールで再びステージに姿を見せたミセスは、1月9日にリリースするニューシングルの表題曲「僕のこと」をダイナミックにプレイ。スケール感のあるサウンドとすさまじいパワーに、オーディエンスは息を呑み引き込まれていった。演奏を終え、ひと息ついた大森は「さあ、ここからはCRAWLスペシャルバージョンということで……」と話を切り出す。どよめくフロアを前に「ここからは僕らの自己満です」と告げ、結成当初に演奏していたナンバーを2曲披露。ホームとなるライブハウスで楽曲を届けた大森は「感慨深いですね! 本当に感慨深い!」と思いを噛みしめるように言葉にした。
ここからはメンバーが1人ずつ思いを語る流れに。山中綾華(Dr)は「(結成して)最初のほうはお客さんが少なかったし、自分たちもまだ楽器をそんなに触っていないときにバンドを結成したんですよ」とバンド結成当時を回想。「あのときもすごくがむしゃらにがんばってたけど、どうしても今一歩伝えられなくて……でも今日はみんなが楽しみに待っててくれて、自分たちを好きでいてくれて、1音1音で手を上げたりノッてくれるというのがすごくうれしいことだなって改めて思いました」と感慨深げに述べた。高野は2014年に加入し、CRAWLに立った回数がほかのメンバーに比べて少ないが、彼は本会場に立ち寄ってスタッフにさまざまな相談をしていたことを明かし「真剣に聞いてくれて……すごく心強かったし、温かく僕を迎えてくれるCRAWLに感謝しています」とCRAWLへの愛を語った。
若井は「CRAWLはミセスの前に僕と大森が中学生のときに組んだバンドからお世話になってるライブハウス。当時ライブハウスで一生懸命演奏していたけど、元貴の曲がすごくいいっていう自信はあっても、それを僕たち演奏隊が表現できてないんじゃないかと思っていて……」と当時の葛藤を話し、「でもCRAWLのスタッフさんも含めて支えてくれる人がいたからここまでやってこれたし、素晴らしい光景をみんなが見せてくれて、続けてきてよかった。幕張メッセでライブをやってもCRAWLに来ると背筋が伸びて、そうさせてくれる場所がある僕たちはとても恵まれています」と晴々しい表情を浮かべる。藤澤は大森が軸となるバンドで結成当時は自分が何をできているのかわからず、それでもミセスに真剣に向き合ってきたという。今回のツアーで「我逢人」「WaLL FloWeR」のアレンジも手がけた彼は「今は自信を持って『こういうものをやりたい』『こういう音を鳴らしたい』っていう気持ちを間違いなく持って、ステージに立てていることがうれしくて。今回のツアーは間違いなく、Mrs. GREEN APPLEの5人で作り上げられたなと思います」と力強い口調で語った。
最後に大森は結成当時のCRAWLでのライブを「お客さんが呼べなくて、盛り上がってもらえなかった」と振り返ったうえで、「今日みんなが当たり前のように手を上げてくれると言うことを、僕はしっかり胸に刻んでいます。みんなジャンプしてくれるし、手を上げてくれるけど、それって絶対甘えちゃいけないことだし、めちゃめちゃありがたいこと」と観客に伝える。そして彼が「(CRAWLは)温かいホームで、素敵な場所。とってもいろんな人に感謝をしている今日です」と頭を下げ、「楽しかったです! CRAWLできっとまたやるから! ここは僕らの大事なお家なので!」と約束すると、フロアは大きな歓声に包まれた。本公演のラストを飾ったナンバーは「CONFLICT」。「全力で来い!」と大森がオーディエンスに言葉をぶつけると、バンドは眩い光をバックにすさまじい熱量で音を放っていく。ありったけの力を出しきるように演奏を終えた5人は、フロアに向かって大きく手を振り、大切なホームのステージを名残惜しげに去って行った。
Mrs. GREEN APPLE「LIVE HOUSE TOUR 2018≪ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~≫」2018年12月25日 渋谷CLUB CRAWL セットリスト
01. 我逢人
02. ナニヲナニヲ
03. 藍
04. アンゼンパイ
05. リスキーゲーム
06. soFt-dRink
07. 未発表曲
08. WHOO WHOO WHOO
09. REVERSE
10. 未発表曲
11. SimPle
12. No.7
13. 青と夏
14. 私
15. WaLL FloWeR
16. StaRt
17. WanteD! WanteD!
<アンコール>
18. 僕のこと
19. 未発表曲
20. 未発表曲
21. CONFLICT
※高野清宗の「高」ははしご高が正式表記。
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