年初から春にかけて初のドームツアーを行い、最終公演となった福岡ヤフオク!ドーム公演にてバンドとして新たなフェーズに突入することを宣言していた彼ら。新章の幕開けを印象付ける公演となったオーケストラライブは、メンバー4人と53人編成のフルオーケストラとのセッションが2時間にわたって繰り広げられる、ぜいたくかつ実験的な内容となった。
場内が暗転すると真っ白な幕が覆うステージからオーケストラのチューニングの音が聞こえ始め、ライブのスタートを告げる。一瞬の静寂のあとで、ステージ上に設置された3面のLEDスクリーンにスーツ姿のメンバーがステージに向かう様子が上映された。続いて4人のシルエットが幕に浮かび上がり、オーディエンスは熱狂的な歓声をあげた。そしてToru(G)の奏でるギターの旋律に豊かなストリングスの音色が重なり、幕が下りたまま1曲目の「Change」がスタート。バンドの奏でる迫力あるサウンドと、オーケストラの豊かな音が溶け合い、壮大な楽曲の世界観を彩っていく。しかし、曲の途中でスクリーンにメンバーが順番にスーツの上着を脱ぐ様子が流れ、Taka(Vo)が茶目っ気たっぷりに上着でカメラを覆った瞬間に幕が落ち、観客の目の前にはラフな格好の4人の姿が。遊び心のある演出に観客が沸く中、Takaは「いくよ!」と叫んだ。2曲目の「Ending Story??」ではTakaの繰り出すラップにホーンとストリングスの音色が掛け合いのように響き、オーディエンスは懐かしいナンバーを新たなアレンジで堪能する。Toruが歪んだギターの音色で「欠落オートメーション」のイントロをつま弾くと、なんの曲が披露されるのか察した観客は驚きをにじませた歓声を上げる。Takaはマイクスタンドに手をかけると、張り詰めたような声で懐かしいナンバーを歌い上げた。
ドラマチックな展開の楽曲が多いONE OK ROCKだが、オーケストラとのコラボレーションによりサウンドはよりドラマ性が高まっていく。Tomoya(Dr)のドラミングはオーケストラの音が加わることで、普段以上にパワフルでタイトなものになり、迫力のあるアンサンブルの屋台骨を支えていた。MCでTakaは「今日は懐かしいONE OK ROCKとか、新しいONE OK ROCKとか、全部見せて帰りたいと思います。もう気持ちが高ぶってますけど、今日はこのまま最後までいきたいと思います」と高揚した表情で語り「Cry out」につなげる。同曲では観客の合唱も曲の一部のように融合し、広い場内を力強いハーモニーが満たす。原曲に比べてテンポを落とした「アンサイズクリア」はハープの音色が入ったほか、Toruのアコースティックギターによってミディアムバラードのような趣に。観客は目の前で奏でられる新たなアレンジの楽曲を楽しんだ。
中盤戦に入る前にTakaはオーケストラとの共演によって得たことを語り、「バンドとしても音楽人としてもすごく勉強になりました」「ONE OK ROCKのニューワールドに連れていけたらと思ってます」と言葉に力を込める。そして彼の「これもひさびさにやります」という言葉から「欲望に満ちた青年団」へ。この曲ではホーンの音色が入ることで艶やかな雰囲気が増し、“大人なONE OK ROCK”の一面が打ち出される。さらにTakaが伸びやかなアカペラを聴かせた「カゲロウ」、躍動的なリズムと迫力のあるアンサンブルがマッチした「Yes I am」と懐かしいナンバーが続き、ファンを驚かせる。過去の楽曲もオーケストラアレンジに映えることを証明したところで、メンバーが口を開きトークを開始。リラックスした表情を浮かべつつもToruは「緊張しますよね。やってる俺らとしては寿命が縮む感じ。10年くらい寿命が縮んだ」とこぼす。それに対してRyota(B)が「(Toruは人生)50までって言ってるから、10年縮んだら40なの?」と思わず問いただすと、Toruが「あと10年がんばります」と返して観客を笑わせた。
「ここからは後半戦なので、噛み締めて帰ってください」とTakaが客席に呼びかけると、観客は気合いの入った歓声をメンバーに返す。そしてToruのブルージーなギターを口火に、Takaの歌声にストリングスの音が寄り添うように響いた「One Way Ticket」、Tomoyaが太く丸みを帯びたリズムを刻んだ「Pierce」が披露された。さらにTakaの歌声の深い余韻が残る中、Toru、Ryota、Tomoyaがソロ回しをしながらオーケストラとセッションするブロックに突入。3人はそれぞれ大所帯のオーケストラの演奏に引けを取らない気合いの入ったプレイを披露して喝采を浴びた。そして「新曲やります! オーケストラフルアレンジバージョンです!」とTakaが叫び、新曲へ。躍動的なリズムとダンサブルなメロディ、Takaがファルセットボイスを聴かせる展開など、「Change」とはまた異なる新たなONE OK ROCKのサウンドがオーディエンスに届けられた。
鼓膜を震わせるようなTomoyaの激しいドラミングで始まったのは「I was King」。オリジナルバージョンもシンフォニックなアレンジが盛り込まれているが、ホーンを含む生のオーケストラの演奏と、Takaの貫禄の漂う歌声によって迫力が増していた。会場の熱気を煽るように「The Beginning」「Mighty Long Fall」というライブの定番曲を全力で届けたあと、TakaはToruの弾くメランコリックなギターの調べに乗せてファンに向かって語り出す。「日本での今年最後のワンマンライブ、とてもいいものになったんじゃないかなと思います」と充実感をうかがわせ、「バンドやって13年目になって、今年はいろんなことがあったし、いろんなことに挑戦して、バンドとして我慢の時期だったんじゃないかなと思います。でもそこで得るものもたくさんあって。ドームツアーもそうだし、オーケストラツアーもやって13年間分のやらなきゃいけないことを全部、今年やった気になってます。だからこそ来年はさらに強く逞しく、自分たちのあるべき姿、ONE OK ROCKを表現できたらと思います」と言葉に力を込める。さらに、「残された時間は多くはない」と言い「こっからすごいスピードでONE OK ROCKなりに、自分たちが目指す未来に突っ走っていけたらと思います」と挑戦を続けていくことを誓った。そして、「今年をしっかり生き抜いたONE OK ROCK、今年をしっかり生き抜いた皆さん、来年もしっかり戦っていきましょうという意味を込めて」との紹介から「Fight the night」につなげる。歌とチェロの調べだけのシンプルなAメロから、曲の進行と共にToru、Ryota、Tomoyaの音が加わり、クライマックスでは豊かなサウンドスケープが描き出された。
本編の余韻が残る中、再びステージに戻ってきた4人は「We are」を観客を巻き込み大合唱。この曲でも合唱とオーケストラの音が重なり、スケール感のある楽曲の魅力を引き立てていく。そして、最後に4人が用意したのは「完全感覚Dreamer」。ステージ上の全員がフルスロットルで熱演を披露し、4日間限定のスペシャルライブをフィナーレに導いた。名残惜しそうに観客と挨拶をする中で、Takaは「今日は皆さんがいてくれてよかった。愛してます。アルバム作ってまた戻ってきます」とファンに“未来”を約束。Toruもファンとの再会を誓い、4人は万雷の拍手を浴びながら名残惜しそうにステージをあとにした。
ONE OK ROCK「ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018」2018年10月31日 大阪城ホール セットリスト
01. Change
02. Ending Story??
03. 欠落オートメーション
04. Cry out
05. Decision
06. アンサイズクリア
07. 欲望に満ちた青年団
08. カゲロウ
09. Yes I am
10. One Way Ticket
11. Pierce
12. Instrumental
13. 新曲
14. I was King
15. The Beginning
16. Mighty Long Fall
17. Fight the night
<アンコール>
18. We are
19. 完全感覚Dreamer
リンク
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