最新アルバム「ENSEMBLE」を携え、5月よりホールツアー「ENSEMBLE TOUR」を行ったミセス。最終地点の幕張メッセ国際展示場2DAYSには合計約2万人のオーディエンスが集まり、ライブを楽しんだ。ミセスはバンド史上最大規模となるステージにて、約3時間にわたり29曲というボリュームでライブを展開。さまざまな演出を用いて、エンタテインメント要素あふれる濃密なステージを繰り広げた。
この日会場に設置されたのは、青いカーテンで装飾された劇場風のステージ。開演を告げるブザーが鳴り響くと、舞台と客席を隔てる紗幕に5人のシルエットが大きく浮かび上がった。大歓声の中勢いよく紗幕が下ろされ、ステージの階段上方に5人の姿が現れる。それぞれの楽器の位置へと進んだ彼らは、「Love me, Love you」で華やかにライブの幕を開けた。バンドがそのまま軽やかに「キコリ時計」へとつなぐと、観客は跳ねるようなリズムに合わせて一斉にジャンプ。彼らはその勢いを保ったまま「愛情と矛先」の演奏へと突入し、早速の懐かしいナンバーで会場を大きく沸かせた。
5人は序盤から力を出し惜しむことなくエネルギッシュにメジャーデビュー曲「StaRt」をプレイ。コール&レスポンスを交わした「HeLLo」を経て、「Oz」ではダンサーと藤澤涼架(Key)がファンシーなサウンドに合わせてキレのあるダンスを繰り広げた。5人は「日々と君」を丁寧に奏でた直後に「せーの!」と力いっぱい叫び、息を合わせて「パブリック」を演奏し始める。照明は落とされ、ステージには5つのスポットライトの光のみが差し込んだ。同曲が終わると舞台は赤色に染まり、白のライトが目まぐるしいほどに場内を交錯。バンドは「パブリック」と対になるナンバー「アウフヘーベン」を続け、迫力のある演奏でオーディエンスを圧倒した。
その後バンドは、藤澤の繊細な鍵盤の音色と高野清宗(B)によるつややかなコントラバスのサウンドが印象的なジャズナンバー「Coffee」を披露。紗幕にカフェの風景が映し出され、メンバーが店内で弾き語っているようなシーンが作られた。「鯨の唄」をダイナミックに演奏した5人は、ゆったりと「FACTORY」を紡ぐ。ステージ上に炎が灯された「ツキマシテハ」では、熱を帯びたバンドサウンドと切迫感のある歌声が響き渡った。ここまで言葉少なめに次々と楽曲を届けてきた大森は「楽しんでますか?」と客席に呼びかける。彼は歓声を受け取ると「自由にライブを楽しんで」と告げ、ヒットナンバー「WanteD! WanteD!」を放った。大森、若井滉斗(G)、藤澤は花道に飛び出し、オーディエンスの大合唱を直に浴びながら力強くパフォーマンス。そしてビビッドなレーザーライトが飛び交った「うブ」、ステージ周辺にスモークの柱が多発した「WHOO WHOO WHOO」とEDMナンバーが連投され、会場はダンスフロアと化した。
縦横無尽に花道を回ったメンバーはステージに戻り、打って変わって憂いのある雰囲気を漂わせ「L.P」を届ける。ヒップホップ調のナンバー「REVERSE」では、大森がダンサーを引き連れてクールに踊りながら歌い、オーディエンスを驚かせた。「9月になって夏は終わったんですけど、今だけ夏を呼び起こしませんか?」と彼が観客に呼びかけると、バンドはこの夏新たに発表したサマーソング「青と夏」を演奏。さわやかなバンドサウンドが広がり、場内は大盛り上がりとなった。若井の軽やかなギターリフが前面に出た未発表曲では、この日初披露にも関わらずオーディエンスの熱いコールが沸き起こる。その後メンバーがボイスパーカッションにチャレンジする場面も見られた「SPLASH!!!」を経て、大森は時折マイクを客席に向けながら「Speaking」を観客と共に歌い上げた。
ライブ本編も終盤となった頃、大森は「Mrs. GREEN APPLEは今年で結成5周年になります。5年でこんなに素敵な光景が見れると思っていませんでした……と言ったら、嘘になりますけど」と笑いながらも、真剣な面持ちで悲しくてつらかったというアルバム「ENSEMBLE」の制作について話し始めた。彼は「1人で黙々と部屋にこもって曲を作っているんですけど……こんな華やかにニコニコとライブをしているのに、とっても重たくて、寂しいことを歌っています。そんな作り方をしているので、書いてると僕自身悲しくなってくるんです」と胸の内を明かすと、2ndシングル「サママ・フェスティバル!」に言及し「自分の曲の書き方がつらくなっちゃって、愁いみたいなものをハッピーなものに置き換えられるんじゃないかなって……そういう曲の作り方をしていました。それから1、2年活動して、『ハッピーな曲を書いて、みんなが応援してくれてとっても幸せだな』と思ってたんですけど、3枚目のフルアルバム(「ENSEMBLE」)を作ろうとしたら、さみしくて悲しくなりながら曲を書いている自分がいました。すごくすごく苦しかったです」とこの2年間を振り返る。そして「そんなアルバムを引っ提げてのツアーファイナル、こんなにも素敵な人たちに囲まれて、こんなにも素敵な景色が見れて、ちょっとだけ報われました。ありがとうございます」と客席に向かって深く頭を下げた。
「アルバムの中でひときわ異彩を放っている、なんとも悲しい青白い曲があるんですけど……みんなに聴いてもらって、初めて消化されると思っています」と伝え、大森がそっと言葉をつぶやくように歌い始めたのはバラードソング「They are」。飾り気のない歌声と寂しげなピアノサウンドが響き渡ると、オーディエンスは固唾を飲んで彼の思いを受け止めていた。続く「PARTY」では一転、カラフルな衣装を着用したダンサーが舞い踊り、華やかな空間が生み出される。「悔いが残らないように、楽しんでいこう」と大森が告げ、バンドが本編最後のナンバーとして演奏したのはこの日2度目の演奏となる「Love me, Love you」。紙吹雪に彩られながら、5人は華麗なソロ回しを交えて生き生きとサウンドを奏でた。
アンコールを求める拍手に呼ばれ、再びステージに現れたメンバーは白い光とスモークに包まれながら「光のうた」をゆったりと届ける。客席にあふれるスマートフォンの光が、楽曲の神聖な世界観を一層際立たせていた。直後に突然スクリーンに新たなツアー「LIVE HOUSE TOUR 2018≪ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~≫」の日程が映し出され、会場が大きくざわめく。「ゼンジン未到」はミセスがインディーズ時代に実施していた自主企画シリーズ。昨年東京・日比谷野外大音楽堂で再び行われた本シリーズが、バンドのホームである東京・渋谷CLUB CRAWLを含むライブハウスで開催されることとなった。場内の興奮冷めやらぬ中、彼らが演奏し始めたのはインディーズ時代のナンバー「CONFLICT」。シンプルなバンドサウンドに乗せて、大森は1人ひとりの心に届けるようにまっすぐに楽曲を歌い上げた。山中綾華(Dr)が豪快にシンバルを叩き、勢いよく演奏を始めたのは「はじまり」。5人は疾走感あふれるパンクロックチューンをパワフルに届け、会場にシンガロングを巻き起こした。
メンバーが去ったあとも観客の拍手は鳴りやまず、ツアーTシャツに着替えた彼らはみたびステージへ。メンバーが1人ひとり挨拶する流れになり、山中は「幕が開いた瞬間から鳥肌が立って、今日はすごい日になると思ったんです。忘れられない、大切な日になりました」と目を輝かせた。高野は「5月に始まったツアーがこうしてファイナルを迎えて、皆さんと一緒に過ごせた時間が本当に楽しかったです。ありがとうございます」と感謝を伝え、藤澤は「『ENSEMBLE TOUR』という1つの括りではあるんだけれども、どの公演も毎回毎回が新しくて、そこにしかない瞬間と音楽があるんだなと思いました。それは来てくれているみんなのパワーと僕たちのパワーがかけ合ったからこそ」とツアーを振り返る。若井が「幕張メッセという僕が憧れてきたバンドさんたちが立ったステージに、自分たちが立っているのは不思議な気持ち。うれしさ半面ドキドキしている部分もあったんですけど、ステージに登場してみんなの顔を見た瞬間めっちゃ安心したから、みんなのパワーってすごいんだなと毎回感じます! 本当にありがとう。これからもよろしく!」とグーサインを決めたあと、大森はライブの終わりを名残惜しむように「楽しかったな。素敵な時間をありがとうございました」と語った。
大森が「悔いのないような人生にしてください。すごく苦しくて楽しくて忙しい毎日だと思うんですけど、僕はそう思って生きています。一緒に生きていきませんか?」と呼びかけ、「また会える日を楽しみにしています。それまでどうかがんばって、負けないで、諦めるな!」と観客にメッセージを送るとオーディエンスは一斉に高く腕を上げる。そしてこの日バンドが最後に届けたのは「我逢人」。彼らは笑顔を見せながらこの曲をプレイし、最後まで5人のバンドアンサンブルを場内いっぱいに響かせて約4カ月にわたるツアーに幕を下ろした。
Mrs. GREEN APPLE「ENSEMBLE TOUR ~ソワレ・ドゥ・ラ・ブリュ~」2018年9月9日 幕張メッセ国際展示場 セットリスト
01. Love me, Love you
02. キコリ時計
03. 愛情と矛先
04. StaRt
05. HeLLo
06. Oz
07. 日々と君
08. パブリック
09. アウフヘーベン
10. Coffee
11. 鯨の唄
12. FACTORY
13. ツキマシテハ
14. WanteD! WanteD!
15. うブ
16. WHOO WHOO WHOO
17. L.P
18. REVERSE
19. 青と夏
20. 未発表曲
21. SPLASH!!!
22. Speaking
23. They are
24. PARTY
25. Love me, Love you
<アンコール>
26. 光のうた
27. CONFLICT
28. はじまり
<ダブルアンコール>
29. 我逢人
Mrs. GREEN APPLE「LIVE HOUSE TOUR 2018≪ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~≫」
2018年11月17日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
2018年11月18日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
2018年11月23日(金・祝)新潟県 NIIGATA LOTS
2018年11月26日(月)京都府 京都FANJ
2018年11月29日(木)愛知県 Zepp Nagoya
2018年11月30日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
2018年12月2日(日)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
2018年12月7日(金)富山県 MAIRO
2018年12月8日(土)岐阜県 岐阜club-G
2018年12月12日(水)東京都 Zepp Tokyo
2018年12月13日(木)東京都 Zepp Tokyo
2018年12月15日(土)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
2018年12月16日(日)香川県 高松festhalle
2018年12月19日(水)熊本県 熊本B.9 V1
2018年12月21日(金)福岡県 DRUM LOGOS
2018年12月22日(土)福岡県 DRUM LOGOS
2018年12月25日(火)東京都 渋谷CLUB CRAWL
※高野清宗の「高」ははしご高が正式表記。
リンク
- Mrs. GREEN APPLE official site
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
ハト(ル)🕊🍏˚. unloveless…! @thanks_mgapple
Coffeeをきっかけにアンサンブルツアーについてググり始めたら、この記事を見つけて、They are がますます愛おしくなった…
この時の大森さんがいるから、今の大森さんがいるんだろうな。
https://t.co/Djry7ekrVP