彼らにとって約5年ぶりの緑の島での単独公演となった今回は、「北海道150年」事業とのコラボレーションという形で行われた。また開催前から函館市内をラッピング路面電車「GLAY GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT 車両」が走ったり、函館蔦屋書店で衣装展示会が行われたりするなど、街中のさまざまな場所でGLAYにまつわる催しが展開された。
ライブは、豪雨の中で行われた初回の「GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT」同様に、4本のマストが印象的な黒船を模したメインステージを舞台に繰り広げられ、2日間あわせて約5万人の観客を動員する大規模な公演となった。初日公演は強風が吹く中での開催となったが、集まったファンはそれすらも楽しむように3時間のライブを堪能した。メンバー登場前には、前回の緑の島ライブで上映された「灰遊記」の続きとなる、函館の歴史とGLAYの歴史を融合させたコミカルな映像「灰遊記II」、さらにメンバーが合唱する「はこだて賛歌」がスクリーンで流れ観客を和ませる。そして「GLAYの4人がこの地に帰ってきた!」というアナウンスと共に、カラフルな花火が打ち上がりライブがスタート。メンバー4人とサポートメンバーのTOSHI(Dr)は、万雷の拍手を浴びながらステージに足を踏み入れた。
灰色の空の下、彼らが奏で出したのはインディーズ1stアルバム「灰とダイヤモンド」から「KISSIN' NOISE」。TERU(Vo)は「函館ー!」とシャウトし、集まった大勢のファンを歓迎した。「疾走れ!ミライ」が始まると、LEDパネルで作られた帆部分が青く染まり、青空のような景色を作り出す。TAKURO(G)のみずみずしいギターに乗せて、TERUが伸びやかに歌い上げていると、雲の隙間から光が差し込み始めた。朗らかなナンバーを届け終えるとTERUは「帰ってきたぜ函館!」と故郷への帰還を報告し、「YOU MAY DREAM」を花道でパフォーマンス。TAKUROはカメラに向かってアピールし、HISASHI(G)も花道に足を伸ばし華麗なギタープレイで観客の視線を奪う。その後、HISASHIが憂いのあるギターを奏でて「4 ROSES」につなげた。
ライブの冒頭ではサングラスをかけていたJIRO(B)だが、いつの間にかサングラスを外し、観客に視線を送りながら楽しげにプレイ。そのほかのメンバーも故郷でのライブゆえか、リラックスした様子で終始笑顔を浮かべていた。「もっともっと熱く行こうぜ!」とTERUがライブでおなじみの言葉を叫び、スモークが立ち上る演出と共に「誘惑」へ。この曲ではTAKUROが花道で鋭いカッティングギターを鳴らし、HISASHIがドライブ感のあるフレーズでオーディエンスを熱狂させた。続くMCでTERUは目の前のファンをねぎらい、「いい光景だな」としみじみ口にする。そして、雪景色がLEDパネルに浮かび上がる演出と共に「Freeze My Love」をしっとりと歌い上げた。すると哀切をにじませた曲に合わせるように冷たい風が強くフィールドに吹き込み、楽曲の世界を彩った。なおこの日はキャリアを彩ってきたヒット曲やバンドの代表曲も数多く披露されたが、中には「PARADISE LOST」や「ALL I WANT」といった最近のライブでは演奏されていないナンバーも織り込まれ観客を魅了した。
MCでTERUは「次は晴れの中で(野外ライブを)やろうと思った5年前……この空、まさに函館の空です」と曇り空を見上げる。「やっぱりGLAYを函館で観るっていうのはいいもので、サザンを茅ヶ崎で観るみたいな」と口にする。そんなことをTERUが話している間に、雲の隙間から日が差し始め、JIROが「みんなの最高の笑顔を見て時間を過ごせていることが本当に幸せです」と述べた。雨男と言われているHISASHIは「この函館を離れて30年。帰郷と共に雨雲を連れてくるクセ……。(台風の)進路も変だったし、何か持ってるんでしょうね」と自虐交じりに語り、TAKUROは「ようこそ我らが故郷函館へ! 函館のよさを発見して帰ってほしいと思います」と力強く語った。
風の勢いが弱まり、太陽の光が会場を照らす中、4人は「HOWEVER」「BE WITH YOU」という温かなラブソングを奏でる。「HOWEVER」ではTERUが故郷への思いを込めるように、最後の1節を「やわらかな風が吹く 函館で」と変えて歌い観客を沸かせた。抑制を効かせた歌とアンサンブルが印象的な「3年後」に続いて、アッパーな曲が続く流れに。「嫉妬」ではマストの先端から炎が立ち上り、龍を模した巨大なバルーンが登場するなど、エネルギッシュな曲を盛り上げる。TERUはモニタに足をかけ、激しく情熱的な歌声を聴かせ、その勢いのままに「AMERICAN INNOVATION」を畳みかける。ここでは観客が一斉にタオルを回し、その一体感のある光景にJIROが目を細める様子が見られた。またTERUもファンの熱狂ぶりに「最高に気持ちいい!」「函館大好き!」と声を弾ませた。
ライブ本編の後半では、HISASHI、TAKURO、JIROがそれぞれ独壇場と言える活躍を見せるブロックも。「シン・ゾンビ」ではHISASHI撮影による「GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT vol.3」のリハーサルの様子が上映されたほか、同郷のYUKIが在籍したバンドJUDY AND MARYの「Over Drive」のカバーが演奏され、特別な演出で観客を歓喜させた。「COME ON!!」ではTAKUROが花道でド派手なアクションを見せながら、ギターを激しくかき鳴らしてみせる。続いて「晴れてきたね。暴れる準備はいいですか?」というJIROの言葉から「SHUTTER SPEEDSのテーマ」に。TERUとJIROはシャウトをしながら、花道に歩みを進め観客に囲まれ、パフォーマンスを繰り広げた。
大きなシンガロングを巻き起こした「XYZ」を経て、TERUが本編最後のMCを開始。「自分たちで演奏してると、(歌詞の)言葉一言一言が函館を象徴しているようで、東京生活をしているけど、ずっと函館に憧れを抱きながら作詞したり、作曲したりしてるんだなと思って歌ってました。そして太陽がガッとみんなを照らした瞬間に、この函館のイベントはこれからも続けていくべきだなと思いました」と「GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT」の続編を宣言した。「この曲は函館で歌うと歌詞の世界が深い意味をなしていくんだなと思います」と、壮大なバラード「SAY YOUR DREAM」を紹介する。HISASHI、TAKURO、JIROは丁寧にそれぞれの楽器を奏で、TERUは歌詞の意味を噛みしめるように歌唱。TERUは最後にロングトーンを響かせ、「みんなに出会えてホントによかった。生まれが函館でホントによかった」という言葉をもって本編に幕を下ろした。
アンコールは、TERU曰く「これぞ函館という曲」の「グロリアス」でスタート。MCではメンバーが思い思いに語り、JIROは「演奏中にみんなに光が当たって、太陽がまぶしくて泣きそうになったのは初めてだった」と本編中に印象的だった光景について語る。またHISASHIが話している間に、17:00を知らせる汽笛が鳴るというハプニングに爆笑が起こる場面が。彼は「俺はもうしゃべらない! カメラも止めない!」と話を切り上げ、MCのバトンをTAKUROに渡す。TAKUROは「これからも僕らの原点は函館なので東京で煮詰まったら帰ってくるね」と改めて故郷への愛を口にし、さらにTERUと一緒に未発表曲のさわりを披露してファンを喜ばせた。
前向きなメッセージを込めた「YOUR SONG」、GLAY初期のオリジナル曲「CRAZY DANCE」という新旧の楽曲を演奏し終えたあと、4人は初日公演のラストナンバーとして「ACID HEAD」を投下。再び炎の演出を交えながら、メンバーは楽しげにパフォーマンスを披露する。曲の終盤ではTERUとHISASHIがシャウトの応酬でフィールドを揺らした。その後、初日公演はTERUの「素晴らしい時間を過ごすことができました。愛してるぜ!」という言葉をもって終幕した。
2日目は晴天に恵まれ、過ごしやすい環境に。4人は前日とは異なるセットリストをもとにパフォーマンスを行い、オープニングナンバーとして「君が見つめた海」を演奏して観客を驚かせた。その後も「GROOVY TOUR」や「Yes, Summerdays」、ライブの定番曲「彼女の“Modern…”」を青空の下で披露したほか、前日に披露した「HOWEVER」の代わりに「BELOVED」をプレイして穏やかで優しい時間を紡ぎ出した。さらに前日にはなかった演出として「シン・ゾンビ」の曲中に約30年前のライブ映像や写真が投影され、当時作られた「ONE AND ONLY」をプレイするサプライズもあった。
気持ちのいい天候でのライブをメンバーも存分に楽しんでいるようで、TERUは「函館山も一望できるね。この景色を見せたくて函館野外ライブを企画しました」「こうやって函館出身のバンドが、函館で一番大きい野外ライブができるのは誇らしいというか、函館で生まれ育ってよかったと思います」と満足げな表情を浮かべる。なお、この日はTAKUROとHISASHIの出身校である函館稜北高等学校の生徒たちも来場しており、TAKUROは後輩たちに向かって「先輩を敬え!」と冗談を飛ばしつつ、「高校で知り合った仲間と今でもたくさん楽しくバンドやってます。今日はね、音楽とかは大事じゃないの。函館で知り合った4人が、いろんな人に支えられてがんばっていい感じになってる……それだけ伝われば先輩から伝えることはありません」と呼びかけた。
アンコールの選曲も前日とは異なり、まずはTERUの「厳しい冬を歌ってる曲、厳しい愛を歌ってる曲」という紹介に続き「Winter,again」へ。4人は夕暮れの緑の島に、冬の景色を描き出してみせた。さらに「SOUL LOVE」を花道で伸び伸びとパフォーマンスし、ハートフルなサウンドで会場を包み込んだ。またMCではJIROが1999年の20万人ライブ「GLAY EXPO'99 SURVIVAL」を振り返りながら、「ここ函館にこんなにたくさん集まってくれて、あのとき以上にうれしく。たくさんの人に感謝しながら演奏させてもらってます。『GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT vol.4』もこの地でやりたいよね」と抱負を明かす。さらにHISASHIが「音楽を始めた函館の地でライブができてうれしいです。vol.4、vol.5とやっていきたいと思います。(会場まで)橋が1本で来づらいけどね。もう1本作りたかったんだけど、作れなかった」と冗談交じりにつぶやくと、TAKUROが「あと1本橋があればいいよね。もう1本橋をかけるなら、小橋大橋と名付けよう!」と叫んでメンバーと観客を笑わせた。そして、2日間のライブを締めくくったのは「BURST」。ステージ上のメンバーは攻撃的なロックチューンを叩き込み、最後に花道でファンに挨拶をする。JIROはマイクを通さず「みんな愛してるよ!」と叫び、TERUは「行ってきます!」と挨拶する。そして楽しげな余韻を残して「GLAY × HOKKAIDO 150 GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT vol.3」は締めくくられた。
GLAY「GLAY × HOKKAIDO 150 GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT vol.3」2018年8月25日 緑の島野外特設ステージ セットリスト
01. KISSIN' NOISE
02. 疾走れ!ミライ
03. YOU MAY DREAM
04. 4 ROSES
05. 誘惑
06. Freeze My Love
07. PARADISE LOST
08. ALL I WANT
09. HOWEVER
10. BE WITH YOU
11. 3年後
12. 嫉妬
13. AMERICAN INNOVATION
14. シン・ゾンビ
15. COME ON!!
16. SHUTTER SPEEDSのテーマ
17. XYZ
18. SAY YOUR DREAM
<アンコール>
19. グロリアス
20. YOUR SONG
21. CRAZY DANCE
22. ACID HEAD
GLAY「GLAY × HOKKAIDO 150 GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT vol.3」2018年8月26日 緑の島野外特設ステージ セットリスト
01. 君が見つめた海
02. 疾走れ!ミライ
03. GROOVY TOUR
04. 4 ROSES
05. 誘惑
06. Yes, Summerdays
07. PARADISE LOST
08. ALL I WANT
09. BELOVED
10. 3年後
11. 棘
12. AMERICAN INNOVATION
13. シン・ゾンビ
14. COME ON!!
15. 彼女の“Modern…”
16. XYZ
17. SAY YOUR DREAM
<アンコール>
18. Winter,again
19. YOUR SONG
20. SOUL LOVE
21. CRAZY DANCE
22. BURST
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