サザン初となったNHKホール公演は、彼らが6月25日にデビュー40周年を迎えたことを記念して行われた。本公演に集まったファンは、両日合わせて約7200人。さらに26日公演は130カ所もの映画館でライブビューイングが行われ、全国のファンがライブを楽しんだ。本公演のセットリストはサザンの40周年の軌跡をたどるような内容で、彼らは新旧のヒット曲を交えながらアンコールまで計25曲を披露した。
この日のNHKホールには、サザンのステージを待ちわびるファンたちのウェーブが発生するなど開演前から早くも熱気が漂っていた。まずは会場に有働由美子アナウンサーによるバンドのデビュー当時を振り返るアナウンスが流れ始め、彼女の紹介からいよいよメンバーが登場。しかしX JAPANの「Forever Love」をBGMに「X JAPANの皆さんです!」と紹介されてしまい、メンバーは登場するなりズッコケて会場の笑いをさらった。改めてファンから盛大な拍手で迎えられたサザンは、デビュー前からレパートリーにあったという1stアルバム「熱い胸騒ぎ」収録の「茅ヶ崎に背を向けて」でライブを始めた。1曲目から桑田佳祐(Vo, G)が「ほんとうに今までありがとう うれしいね また会えたね」と歌詞を替え歌したり、メンバーが「おかげ様で40年 いつもいつもありがとう」と美しいコーラスワークを響かせたりと、サザンはライブ序盤からファンに40年の感謝を伝えていく。原由子(Key, Vo)の小気味いいピアノと松田弘(Dr, Vo)の跳ねたドラムビートから「女呼んでブギ」へとなだれ込むと、桑田は「皆さんお元気ですか? どうも!」と手を挙げて観客に挨拶し、続く「いとしのエリー」をじっくりと熱唱した。
最初のMCで桑田は「有働さんも言ってたけど、デビュー当時は浮いてました。『レッツゴーヤング』(NHK総合で1974年から86年まで放送されていた音楽番組)にジョギングパンツを履いた汚いのが出てた」とユーモアたっぷりに当時を振り返り、「おかげさまで、今日ここまで来られました!」と会場、そしてライブビューイング先のファンに感謝の気持ちを表した。彼は「ライブビューイングの時間もあるから早くやらなきゃ」と言いつつ、ボーリングをしたため腫れてしまったという親指をライブビューイング用のカメラに見せて笑いを誘う。6月18日に近畿地方で発生した地震の被災者を見舞う一幕もありつつ、「最後まで“レッツゴーヤング”の精神で楽しんでいただけたら!」とオーディエンスにメッセージを送った。
ここからサザンはさまざまなテイストのナンバーでファンを魅了。本公演で実に14年ぶりのライブ披露となった「SEA SIDE WOMAN BLUES」ではスクリーンに神奈川・サザンビーチちがさきの映像が投影され、たゆたうようなギターサウンドが会場に広がる。「汚れた台所(キッチン)」ではおどろおどろしいオルガンの音色と切れ味鋭いギターリフが響き、野沢秀行(Perc)がマラカスを真上に投げるなど豪快なパフォーマンスを見せた「My Foreplay Music」で会場の熱気はぐんぐんと上昇。このブロックの最後には「私はピアノ」が届けられ、原の美しく切ない歌声がオーディエンスを惹き付けた。
続くMCで桑田は、サザンの4人とサポートメンバーをイジりながら紹介。松田は「やっぱりサザン楽しいねー! 目指せ50周年! 会場のみんな、全国のみんなありがとー!」と笑顔で拳を掲げ、野沢は「40年考えてきたこと……あのね、このバンドってパーカッション必要かな?」と自虐的な発言で客席に笑いを起こし、「でもね、聞いて! (バンドの)最後尾から(メンバーを)押していきます!」と意気込んだ。さらに関口和之(B, Vo)は「40年前、いろいろと悩みました……親の反対を押し切り姉からはなじられ……そして今、ここに立たせてもらってます。その後の僕の人生幸せです!」とコメント。最後に原は「皆様のおかげで40周年迎えられました。還暦過ぎてバンドやってるおばさんは私ぐらいになっちゃったんですけど、サザンが続く限りがんばりまーす!」と茶目っ気たっぷりに展望を語った。そんな挨拶のあと届けられたのは、40周年の記念すべき年に制作された新曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」。曲中にはスーツ姿のダンサーがビル群の映像をバックに力強く踊った。
場内に波の音が流れたのを合図に、サザンは「はっぴいえんど」「真夏の果実」「太陽は罪な奴」「涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~」とサマーソングを連発していく。華やかなホーンの音色が彩った「太陽は罪な奴」では桑田がステージ前方でファンと目を見合わせるように歌い上げ、疾走感のある「涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~」では会場に一体感のある手拍子が発生。浴衣姿の女性ダンサーも登場し、場内は大いに盛り上がった。このブロックを終えると場内は暗くなり、スクリーンに「ご着席のうえしばらくお待ちください」「当バンドはメンバー全員が還暦を超えており、ほどよく呼吸を整える時間が必要です」とお詫びの映像が流れてファンを笑わせる。
メンバーの息が整ったところで届けられた「栄光の男」をきっかけにライブはいよいよ終盤へ。ミラーボールの光が場内を照らした「東京VICTORY」でメンバーは右手を掲げてユニゾンしオーディエンスを圧倒。桑田は開放感のある歌声で前向きなメッセージを客席に届け、これを受けたファンもかけ声と共に拳を力強く突き上げた。「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」や「匂艶THE NIGHT CLUB」といったアッパーチューンが続き、ライブが終わりに近づくにつれて桑田はよりパワフルな歌声を披露し、CO2が吹き上がった「HOTEL PACIFIC」でライブはクライマックスへと差しかかる。ステージには水着姿のダンサーが登場し、会場はひと足早く真夏のような空気感で包まれた。そんなモードを一変させたのは原のしっとりとしたピアノから入ったラストナンバー「みんなのうた」。桑田はピアノに乗せて「6月25日にデビューしたサザンオールスターズ みんなの応援があり ここに立っていられるのさ」と歌って改めてファンに感謝の気持ちを贈る。バンドアンサンブルへと変化すると金の紙吹雪がステージに舞い落ち、桑田が関口とサポートギタリスト・斎藤誠と肩を組んで歌ったり、メンバーとファンが左右に手を揺らしたりと会場は祝祭感で満たされた。
アンコールは1950年代ふう衣装のダンサーが踊った「DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~」でスタート。船の汽笛が鳴ると桑田が「横浜行こうか」と口にし、サザンはみなとみらいの夜景をバックに「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」を演奏する。この映像にはMCにも上がったボーリングをする桑田の様子も映し出され、観客を大いに沸かせた。「ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~」が華やかに届けられたのち、桑田は野沢の叩くコンガのリズムに乗せてコール&レスポンスを実施。勢い付いたところで会場には金テープが放たれ、ライブはこの日のラストナンバーでありデビュー曲の「勝手にシンドバッド」へとなだれ込む。ステージや客席にはサンバ衣装のダンサーが入り乱れ、場内はお祭り騒ぎに。スクリーンに若かりし頃のサザンのライブ映像が映り「40年間ありがとう! これからもよろしく!」というメッセージが映し出されると、桑田はさらにコール&レスポンスでこれでもかとファンのテンションを引き上げていった。「勝手にシンドバッド」からつなげるように「蛍の光」が演奏されたところでこの日のライブは終幕。サザンとサポートメンバー、そしてダンサーはステージで手をつないで観客に挨拶した。最後に桑田は「本当にありがとうございました。サザンオールスターズ、これからもよろしくお願いします。また会いましょう!」とファンとの再会を誓った。
なおサザンは8月1日に“プレミアムアルバム”「海のOh, Yeah!!」(海のオヤー)をリリース。来春にはドームおよびアリーナツアーを行うことを発表しており、詳細は追ってアナウンスされる。
サザンオールスターズ「キックオフライブ 2018『ちょっとエッチなラララのおじさん』」2018年6月26日 NHKホール セットリスト
01. 茅ヶ崎に背を向けて
02. 女呼んでブギ
03. いとしのエリー
04. さよならベイビー
05. せつない胸に風が吹いてた
06. 愛の言霊 ~Spiritual Message~
07. SEA SIDE WOMAN BLUES
08. 汚れた台所(キッチン)
09. My Foreplay Music
10. 私はピアノ
11. 闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて
12. はっぴいえんど
13. 真夏の果実
14. 太陽は罪な奴
15. 涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~
16. 栄光の男
17. 東京VICTORY
18. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
19. 匂艶THE NIGHT CLUB
20. HOTEL PACIFIC
21. みんなのうた
<アンコール>
22. DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~
23. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
24. ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~
25. 勝手にシンドバッド
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Tetsuya Chihara / 千原徹也 @thechihara
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