このライブは、アーバンギャルドが2008年4月にアルバム「少女は二度死ぬ」でCDデビューしてから10周年を迎えたことを記念して行われたもの。彼らを祝うべく全国からたくさんのアーバンギャル&アーバンギャルソン(アーバンギャルドファンの呼称)が駆けつけ、バンド史上最大規模の会場は“KEKKON SHIKI”の参列者で埋め尽くされた。
公演が始まると、EDM調にアレンジされたメンデルスゾーンの「結婚行進曲」が爆音で流れる中、まずは松永天馬(Vo)が1人でステージに登場。彼はメンバーを1人ずつ呼び込みながら、結婚式の神父さながら、アーバンギャルドと一生を共にすることを誓うか、メンバーや観客に問いかけた。そして最後に、血で染まったウエディングドレスのような衣装を着た浜崎容子(Vo)がステージに。彼女は松永の問いに「誓いません……なんて嘘です」と答え、メンバー後方の大きなスクリーンに「血痕式」という文字が映し出された。「ワンピース心中」でライブがスタートすると、客席はアーバンギャルドのグッズである真っ赤な“血の丸”フラッグでいっぱいに。さらに「スカート革命」「水玉病」といった人気曲が惜しげもなく繰り出され、会場は一気に興奮に包まれた。
それまでステージ上に設置された階段の上で歌っていた浜崎だが、「自撮入門」からはステージに降りてパフォーマンス。「自撮入門」間奏の撮影OKタイムでは松永とおおくぼけい(Key)が広いステージを駆け回り、観客が掲げるスマートフォンに向かってポーズを決める。その後もスクリーンに映像や歌詞を映したり、レーザーやカラフルな照明でステージを彩ったりと、彼らは普段の公演とは違ったホールならではの派手な演出でライブを展開。直前の4月4日にCDデビュー10周年記念アルバム「少女フィクション」をリリースしたばかりの彼らだが、この日は新作からの曲ばかりでなく、バンドが歩んできた10年間のさまざまな楽曲をバランスよく配置したセットリストが組まれた。
「平成死亡遊戯」「キスについて」としっとり聴かせるバラードが続いたのち、おおくぼのピアノ演奏をバックに松永が詩を朗読。真ん中に穴が空いた直径12cmの丸い鏡、つまりCDの中にいる少女についてのポエトリーリーディングを披露した彼は、最後に切々と「アーバンギャルドはフィクションです。10年かけてつき続けてきた嘘、ペテンまがいのフィクションです。このバンドはフィクションであり、登場するメンバーやファン、楽曲は実在のものではりません」と言い、これを合図にアルバム「少女フィクション」のリード曲である「あたしフィクション」に突入した。
「ベビーブーム」では、10年間続けてきた「皆さんは、セックスがお好きですか!?」「大好きです!」というコール&レスポンスをホールいっぱいに集まったオーディエンスと行った後、2011年にバンドを脱退したクラフト担当の藤井亮次がバンドのマスコットキャラクター的な存在である巨大なキューピー・都市夫となってステージに登場。都市夫が暴れる中、浜崎はシャボン玉を吹き、松永は客席にコンドームをばらまき、大きなホールに似つかわしくないほどに会場はカオスな空気に包まれた。松永がダンボール箱をかぶって歌うことでおなじみの「箱男に訊け」は、この日は4人の女性ダンサーも箱男となってステージに登場。キレのあるダンスでライブを彩った箱男ダンサーたちは、続く「あくまで悪魔」ではダンボールを脱いでセーラー服姿になった。
ライブが終盤に差し掛かる頃、浜崎が観客に「本日はお集まりいただきありがとうございます!」と言うと、それを遮って松永は「『ありがとうございます』じゃないんですよ。『おめでとうございます』ですよ。今日参列されたここにいる方は全員結婚したんですから」とコメント。2人は10年前にmixiで出会ったときのことを振り返り、浜崎は「昨日思い出したんだけど、アーバンギャルドに加入して初めてmixiに書いた日記のタイトルが『結婚します』だったんです」「上京するときに母親から『アーバンギャルドと結婚するんだね』って言われたんですよ」と語って観客を驚かせた。そして彼らは「さよならサブカルチャー」「大破壊交響楽」「少女にしやがれ」をパフォーマンスし、ライブ本編を終えた。
アンコールではセーラー服に着替えた浜崎が、同じくセーラー服姿のダンサーを率いて「都会のアリス」を歌唱。その後、メンバーは1人ずつ来場者に挨拶した。おおくぼはピアノを弾きながら「俺が入ってから3年が経ち、サポートから数えると6年目……意外と10年の中の3分の2くらいいるんだなと思った……これからも、よーろーしーくーねー!」と熱唱。瀬々信(G)は18年前に同志社大学で松永と初めて会ったときのことを振り返りつつ、一番印象に残っている出来事として浜崎が加入して初めてMVを撮った日のことを挙げ、「4月とはいえ雪が降ってて寒い日だったのに、あんなに血糊はバシャッてかけられて、撮影の合間に寒くて震えてて『この人、初めての仕事でこんなことやらされて、絶対辞めるよな』と思った。ホントによく続けてくれたなと思う」と語った。
続いて松永は「アーバンギャルドの歌詞には実は青春って言葉がたくさん出てくるんです。どう考えても一般的な明るい青春を送れてる人が聴くような音楽ではないし、僕自身もまったく青春らしい青春を送ってこなかったのに。青春って、その渦中にいるときは気付かないものなんですよね。『今、青春してるな』と感じるものではなくて、振り返ったときに『ああ、青春だったんだな』と思うものなんです。僕はいつのまにやら35歳になってしまったんですけど、10年を振り返るライブを今日やってみて、初めて『アーバンギャルドが青春になった』と思いました。ありがとうございました」と吐露。感極まる彼の様子を見た浜崎が「えっ、天馬泣いてんじゃん」と驚きの声を上げた。
そして最後に浜崎が「死ぬときに絶対アーバンのことを一番に思い出すと思うんですよね。天馬も言ってたけど、青春そのものです。何かを始めたりやめたりするのは簡単だけど、続けるのが一番難しいと思います。メンバーが変わったりレコード会社を移籍したり、アーバンギャルドはいろんなことがあって続けるのが難しいこともあったけど、今日という日を迎えられてよかったです」と挨拶。ラストに「堕天使ポップ」と「セーラー服を脱がないで」を歌い、10周年記念公演はある意味アーバンギャルドらしからないとも言える幸福感に満ちたフィナーレを迎えた。ライブを終えた松永はオーディエンスに「アーバンギャルドを青春にしてくれてありがとう」と感謝の言葉を贈って退場。浜崎は観客に「またこの場所に戻ってきます」と宣言してステージを去った。
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18. さよならサブカルチャー
19. 大破壊交響楽
20. 少女にしやがれ
<アンコール>
21. 都会のアリス
22. 堕天使ポップ
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