9月23日に京都・梅小路公園芝生広場にて
今年で11回目の開催となる今回の音博はこれまでと趣向が変わり、佐橋佳幸(G)、Dr.kyOn(Key)、高桑圭(B)、屋敷豪太(Dr)からなるハウスバンドならびに京都市立芸術大学卒のメンバーを中心に構成された“京都音博フィルハーモニー管弦楽団”の生演奏に乗せて、出演アーティストが楽曲を披露する“生歌謡ショー”形式に。新たな1歩を歩む音博を楽しもうと、好天の会場には11000人の観客が集まった。
イベントは岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B, Vo)、ファンファン(Tp, Key, Vo)による開会宣言で幕開け。岸田は「いい天気に恵まれて、暑すぎるくらいですね」と空を見上げ、ファンファンは「体調に気を付けて楽しんでいきましょう!」と呼びかけた。トップバッターを務めたのはインドネシアの女性シンガー、ディラ・ボン。「皆さん、初めまして」と日本語で挨拶した彼女は「Ice Cream」でライブをスタートさせ、ギターを爪弾きながら心地よいゆらぎのある甘い歌声を響かせた。3曲目にはくるり「ばらの花」のカバーも披露し、日本語とインドネシア語を織り交ぜながらこの曲を歌い上げる。さわやかなパフォーマンスで4曲を届けると、彼女はくるりへの感謝の言葉を残してステージをあとにした。
岸田の「僕の親友の1人です」という紹介で舞台上に招かれたのはトミ・レブレロ。ギターの弾き語りで初めに「Tucha」を歌うと、続く「Armandolo」からはバンドネオンを手にして熱のこもった演奏を聴かせていく。「松尾芭蕉」というフレーズを情熱的に連呼して観客を沸かせた「Matsuo Basho」、「きっとこの曲は知っているよ」という言葉と共に届けられたくるり「ブレーメン」のカバーなど、サービス精神旺盛なパフォーマンスでオーディエンスを楽しませると、最後には「Michelangelo 70~Medley」をじっくりとプレイして聴衆を魅了した。
2組がアクトを終えるとステージには正装した岸田と佐藤が姿をみせる。彼らはここから、京都音博11年目にして初の試みとなる、管弦楽団およびハウスバンドと出演アーティストとのコラボレーションがスタートすることをアナウンスした。まずスタンバイしたのは京都音博フィルハーモニー管弦楽団で、フィルは岸田が少年時代に初めて買ったCDに収録されていたという「ホルベルク組曲」より「前奏曲」と「2017年の行進曲」を披露する。柔らかな音色が昼下がりの空に響き渡ると、佐藤は「(公園の)SLの汽笛を聞きながらクラシックも聴けるフェスなんて、ここだけでしょう!」と楽しそうにコメントした。続いてアレシャンドリ・アンドレス&ハファエル・マルチニが登場し、彼らは1曲目に「Um som azul」をプレイ。フィルとハウスバンドの伴奏が楽曲に豊かな広がりを与え、3組のコラボレーションに聴衆はじっくりと聴き入る。アレシャンドリの幽玄なフルートの調べが印象的な「Pendulo」、アレシャンドリとハファエルが優しく歌声を重ねる「Macaxeira Fields」を経てラストの「Dual」をドラマティックに演奏すると、彼らは充実感たっぷりの笑みを浮かべ自身のステージを終えた。
くるりのアクトのスタート時間になると、観客は総立ちで彼らを迎える。ゆったりとしたカウントからスタートしたのは「Jubilee」。この曲で華やかにライブの幕を開けた彼らは続けて「コンチネンタル」をドロップし、ハウスバンドの佐橋はエネルギッシュなギタープレイで会場の熱気を一気に引き上げた。ファンファンのトランペットの音色が高らかに響いた「ロックンロール・ハネムーン」ではギターを置きタンバリンを手にした岸田が、流れるようなストリングスの調べに身をゆだねるようにしながら伸びやかなボーカルを聞かせていた。
MCでは岸田が「音博の季節到来、この日を皆様と迎えることができてうれしく思います」と改めてオーディエンスを歓迎。そして「11年目の音博ということでガラッと雰囲気が変わって、感慨深いですなあ……という感じなんですが、去年くるりは(雨天中止の影響で)演奏していないんですよね。2年ぶりにこのステージに立つことができました、ありがとう(笑)」と笑いを誘った。そののち、彼らはジェイアール京都伊勢丹の開店20周年を記念して制作した新曲「特別な日」を披露する。コントラバスの弦をはじく佐藤の横顔を強い西日が照らした「京都の大学生」ではフィルの演奏がストーリー性のある楽曲の世界観を鮮やかに際立たせ、岸田のボーカルにも熱がこもった。イントロのフレーズで歓声が上がった「ワールズエンド・スーパーノヴァ」でバンドが会場を一層熱くさせると、続く「ブレーメン」ではくるりとフィル、ハウスバンド3者による息の合ったタイトなアンサンブルに聴衆が熱狂。ラストの「奇跡」ではオーディエンスがクラップでバンドとひとつになり、岸田は「ありがとう! このあともグランドフィナーレまで楽しんでいってください!」と最後に呼びかけた。
長めの休憩時間を挟み日も暮れかけた17時頃、今年の音博のクライマックスとなる「京都音博“生”歌謡ショー」が幕を開けた。フィルとハウスバンドがスタンバイするステージに最初に登場したゲストシンガーはGotch(
その言葉通り、彼は続く「Taxi Driver」でもゆったりと音に乗って体を動かしながら、気持ちよさそうに歌声を響かせる。「最後1曲、カッコつけていきます」という言葉と共にラストの「迷子犬と雨のビート」を歌うと、Gotchは満足げな笑顔とともにピースサインを掲げた。
2番手・田島貴男(ORIGINAL LOVE)のアカペラで「ウイスキーが、お好きでしょ」がスタートすると、その歌声に会場からは「わあっ」と歓声が上がる。オーケストラとバンドがムーディに彼の艶やかな歌声を彩れば、ステージは紫色の光に包まれ、直前に展開していたGotchのさわやかなステージとはがらりと趣の変わった光景がオーディエンスの眼前に広がった。彼は「曲の入り、間違えちゃった」とおちゃめに告白し「僕にとっても初めての経験で、非常にぜいたくなライブですね。こういうイベントを企画したくるり、素晴らしいです」と語る。2曲目の「プライマル」を終えると、彼は「非常に斬新なアレンジの『接吻』です。なかなか歌うのが困難ですが、一発勝負でいきます」と曲を紹介する。彼のラストナンバー「接吻」はストリングスによる冒頭パートからドラム、ベースと次々に音が重なっていくドラマチックなアレンジが施されており、田島のボーカルも終盤に進むにつれてぐんぐんと熱を帯びていく。ソウルフルな歌声で観客を魅了すると、彼はさっそうとステージをあとにした。
黄緑と赤、ツートンカラーのドレスに身を包んだ
圧巻の歌声で観衆を圧倒したのは
歌謡ショーのトリを務めた
大きな一体感の中で歌謡ショーが結ばれると、くるりの3人が舞台上に戻る。岸田は「楽しかったですね。出て頂いたゲストの皆さんに大きな拍手を」とシンガーたちを称える。そして「また来年、お会いしましょう。この言葉がお約束みたいになっていますが……また来年も、お会いしましょう。お待ちしています」とまっすぐなまなざしで観客に呼びかけた。3人とフィルは、毎年このイベントのラストを飾る「宿はなし」をプレイ。岸田は1つひとつの言葉に思いを込めるように力強い歌声を響かせて、新たな一歩を踏み出した11年目の音博を締めくくった。
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京都音楽博覧会2017 IN 梅小路公園
2017年9月23日 梅小路公演芝生広場 セットリスト
ディラ・ボン
01. Ice Cream
02. Puncak Pohon Bandung
03. Bara no Hana
04. Make me Fall in Love
トミ・レブレロ
01. Tucha
02. Armadolo
03. Matsuo Basho
04. Bremen
05. Anaguitay
06. Yanazus
07. seven days
08. Michelangelo 70~medley
京都音博フィルハーモニー管弦楽団
01. ホルベルク組曲より「前奏曲」
02. 2017年の行進曲
アレシャンドリ・アンドレス&ハファエル・マルチニ
01. U som Azul
02. Pendulo
03. Macaxeira Fields
04. Ala Petalo
05. Dual
くるり
01. Jubilee
02. コンチネンタル
03. Remember me
04. ロックンロール・ハネムーン
05. everybody feels the same
06. 特別な日
07. 琥珀色の街、上海蟹の朝
08. 京都の大学生
09. How Can I Do?
10. ワールズエンド・スーパーノヴァ
11. ブレーメン
12. 奇跡
京都音博“生”歌謡ショー
Gotch(01. 小さなレノン
02. Taxi Driver
03. 迷子犬と雨のビート
04. ウイスキーが、お好きでしょ
05. プライマル
06. 接吻
07. 悲しみジョニー
08. AUWA
09. いとおしくて
10. 君は薔薇より美しい
11. シクラメンのかほり
12. My Way
13. いてもたってもいられないわ
14. いのちの記憶
15. お別れの時
16. 宿はなし
※Penduloのeはサーカムフレックス付きが正式表記
※Ala Petaloのeはアキュートアクセント付きが正式表記
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リンク
- 京都音楽博覧会2017 in 梅小路公園
- くるり / QURULI
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