初日は「第I章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6」と銘打ち結成時から2006年までの楽曲を中心に、2日目は「第II章 06-17 極志球業シ終T」と銘打ち2006年から現在までに発表した楽曲で構成したセットリストでライブを行った4人。この記事では、逹瑯(Vo)曰く「エンタテインメントなMUCC」のステージが披露された2日目の様子をレポートする。
事前にアナウンスされていた通り、ライブはバンド名にちなんで午後6時9分ぴったりに開演。4人はゆっくりとステージに足を踏み入れ、全員がそろったところで逹瑯が恭しくお辞儀をする。彼は「20年間出会えたすべての人たちと、まだ見ぬ未来のあなたへ。心から、心からの感謝を。ありがとう」と穏やかに語りライブの幕開けを告げた。
オープニングナンバーを飾ったのは、ミヤ(G)の弾く物憂い旋律で始まる「脈拍」。逹瑯が激しくシャウトすると、夢烏(MUCCファンの総称)はそれに呼応するようにヘッドバンギングを繰り返す。さらに逹瑯の「暴れよう」のひと言から「塗り潰すなら臙脂」が奏でられ、武道館内は急速に熱を帯びていった。4人は「KILLEЯ」や「極彩」でもフルスロットルのプレイを繰り広げ、会場を狂騒状態に導く。「ファズ」ではミヤがセンターでスポットライトを浴びながらエッジィなフレーズを奏で、続いてYUKKE(B)はアップライトベースでダンサブルなグルーヴを生み出す。逹瑯は踊りながら歌声を響かせ、曲中で大きなシンガロングが起きると「最高じゃん」と満面の笑みを浮かべた。
逹瑯が艶かしい歌声と仕草で観客を魅せた「JOKER」のあと、4人は観客に改めて挨拶をする。逹瑯は「雨の中来てくれたのに、最終的にびちょびちょになって帰ってもらえたらと思います」と、この後も激しい展開が続くことを予告。歌詞をスクリーンに投影しながら「JAPANESE」を情感たっぷりに演奏したり、「G.G.」ではSATOち(Dr)が刻む重厚なリズムに乗せてフロントの3人が奔放にステージを動き回ったり、躍動的なパフォーマンスでオーディエンスを魅了する。中盤で夢烏をうっとりとさせたのは今の彼らだからこそ奏でられるAOR的なアプローチの「秘密」や、YUKKEの弾くアップライトベースの音色が映えるジャジーな「ピュアブラック」といったアダルトなミディアムチューン。4人が紡ぐ色気のあるサウンドに、会場は幻惑的な空気に包まれていく。一方で後半戦に入るとバンドは「流星」や「暁」といった、逹瑯のまっすぐな歌声やみずみずしいメロディが光るロックチューンをプレイ。この10年間で生み出してきた多彩な楽曲を惜しみなく届けた。
貫禄あるステージを展開しながらも逹瑯は「結成21年目に入って、気が付きゃちょいちょい偉くなってきたけど、目の前にはもっとカッコよく歳を食ってく先輩ばかりで」とつぶやく。そして「20年やってきてわかったことがあって。20年という時間をかけて(ファンとの)絆みたいなものができて。ともすると先輩たちはもっとすごい絆があって。先輩たちがいなくならないかなって香典包んで待ってるのに……(笑)」と冗談めかし、後輩たちに向かって「すいませんね。まだまだいなくなりませんよ!」と宣言し、ファンに対してさらなる躍進を誓う。そんなMCからなだれ込んだ本編最後のブロックは、「咆哮」や「ENDER ENDER」などのヘビーなロックチューンの応酬に。SATOちは破壊力たっぷりのリズムを叩き、ミヤとYUKKEは縦横無尽に駆け回り、逹瑯は轟くような歌声で観客を圧倒する。しかし「シャングリラ」が始まると幻想的な空気が会場に漂いだす。そして、4人は美しい満月をバックに渾身のプレイを披露。ラストで逹瑯は力を振り絞るように絶唱し、深い余韻を残してステージを去った。
アンコール前にはスクリーンでセルフカバーアルバム「殺シノ調べII This is NOT Greatest Hits」やミュージックビデオ集のリリース、ホールツアーと対バンツアー、東京・日本武道館での自主企画イベントの開催が一気に告知され、夢烏はうれしそうな声を上げる。再びステージに戻ってきた4人は、まずは和やかにトーク。YUKKEは「20年やってるからこそのみんなの笑顔だと思う。5年でも、10年でもこの笑顔は見られないなって思いました」と思いを述べ、逹瑯はしみじみ「やっぱ武道館好きだな」と会場への愛着を口にした。
その後アンコールの1曲目に届けられたのは「優しい歌」。曲のラストでは、観客が照明が落ちたステージに向かってスマホをかざしながら、美しい「ラララ」の大合唱を巻き起こしてメンバーを感激させる。中でも逹瑯は美しい光景に目を細め、「ずっと見てたい」としみじみ口にする。しかしほのぼのとしたムードを壊すように4人は「MAD YACK」を叩き込み、アリーナのスタンディングエリアにサークルモッシュやウォールオブデスを誘う。さらに「フライト」では爽快なアンサンブルを聴かせ、「孵化」では炎が飛び交う中で壮絶な世界を描き出した。バンドはアンコールに入っても手を緩めることなく起伏のあるステージングを見せ、「ハイデ」でクライマックスへ。希望とスケール感に満ちた楽曲を最後に演奏し、20年間でたどり着いた自らの境地を夢烏に示した。そして3時間の熱演を讃えるような大きな拍手を浴びながら、メンバーは1人ずつ舞台を降りていく。逹瑯は「これからもよろしく」と去り際に口にし、2日間のライブがバンドにとって1つの通過点であることを伝えていた。
MUCC「MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~ 第I章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6」2017年6月20日 日本武道館 セットリスト
01. 朽木の塔
02. 蘭鋳
03. 茫然自失
04. スイミン
05. 娼婦
06. 我、在ルベキ場所
07. サル
08. りんご
09. 勿忘草
10. 1979
11. 家路
12. 断絶
13. 9月3日の刻印
14. 666~空虚な部屋
15. 絶望
16. 前へ
17. 夕紅
18. 絶体絶命
19. 大嫌い
20. ズタズタ
<アンコール>
21. ジオラマ
22. オルゴォル
23. 名も無き夢
24. つばさ
25. 脈拍
MUCC「MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~ 第II章 06-17 極志球業シ終T」2017年6月21日 日本武道館 セットリスト
01. 脈拍
02. 塗り潰すなら臙脂
03. KILLEЯ
04. 極彩
05. ファズ
06. JOKER
07. JAPANESE
08. 空と糸
09. G.G.
10. 秘密
11. ピュアブラック
12. メディアの銃声
13. 流星
14. 暁
15. ニルヴァーナ
16. 咆哮
17. ENDER ENDER
18. Mr. Liar
19. TONIGHT
20. シャングリラ
<アンコール>
21. 優しい歌
22. MAD YACK
23. フライト
24. 孵化
25. ハイデ
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