バンドの節目となる公演ということもあり、会場には多くのファンが足を運び、2階席までびっしり埋め尽くした。オーディエンスは、SEとして流れるDOESの歴代のナンバーを楽しみながら、メンバーの登場を今か今かと待つ。薄明かりの中ステージに姿を見せた3人はフロアを見渡したのち、インディーズ時代のナンバー「ステンレス」でライブの幕を明けた。ステージが明るくなると、観客の目の前には笑顔の3人の姿が。彼らは何度も顔を見合わせながら楽器を奏でる。氏原ワタル(Vo, G)は「『Thanksgiving!』イエーイ! DOESの歴史がわかるように2部構成でやるから楽しんでくれよな」と長丁場になることを予告。続けて3人は、10年前にリリースされた1stアルバム「NEWOLD」の1曲目を飾る「ウォークマン」を力強くプレイし、そのまま「戯れ男」「赤いサンデー」と初期の楽曲を連発していく。
赤塚ヤスシ(B)と森田ケーサク(Dr)は1音1音を丁寧に弾き、骨太なグルーヴを作り出しながら、ワタルの歌に合わせてシンガロングする。ケーサクの叩く軽快なリズムに乗せてワタルが「すごい楽しいんだけど、君はどう?」と呼びかければ観客も笑顔で応え、楽しげな空気が場内に広がっていく。ワタルがギターを鳴らした瞬間、「わあっ!」とうれしそうな声が上がったのは「色恋歌」。彼が歌詞の一部を「赤坂の夜」と変えて歌い上げると、ひと際大きな歓声が響いた。間奏ではワタルとヤスが同じポーズを決めながらそれぞれの楽器を鳴らし、オーディエンスを楽しませる。
歌詞に合わせて照明が桜色になった「三月」を経て、DOESの中期ナンバーを披露するブロックへ。ワタルは「メンバーもニコニコしてるし、みんなもニコニコしてるし、たまらんです」とライブを存分に楽しんでいることを語る。そして「中期DOESに外せない人」という紹介と共に、サポートギターのシラサワオサム(G)を呼び込んだ。ひさしぶりの4人編成でのステージとなったが、ブランクを感じさせない息の合ったプレイに観客は見入った。頼もしい助っ人の参加により、メンバー3人の演奏にも熱がこもり、プレイも自由さを増していく。ワタルは「やっぱいいね、4人。悪くない」と満足げに語り、オサムのギターが曲に彩りを添える「わすれもの」につなげた。
天井で回転するミラーボールが星空のような景色を描き出した「ライカの夢」が終わると第1部も終盤へ。ケーサクの踏む力強いビートに合わせてクラップが起きる中で始まった「僕たちの季節」を皮切りに、「S.O.S.O」「紅蓮」とライブの鉄板ナンバーが続いていく。盛り上がり続けるオーディエンスを前にワタルは「10年間いっぱいライブをやってきたけど、今が一番楽しい」と明言し、ヤスとケーサクもその言葉に笑顔になる。その後、彼らは第1部の締めくくりとして「今を生きる」を奏でて一旦ステージをあとにした。
第2部のステージは3人編成で行われ、DOESのライブではおなじみのゲイリー・グリッター「Rock 'n' Roll (Part 2)」に乗せてメンバーが登場する演出からスタートした。ワタルは「後半はパーティで!」と宣言すると、まずは陽気なロックチューン「晴天」をプレゼント。3人はそのまま「カリカチュアの夜」「刹那」などアグレッシブなナンバーを立て続けに披露し、トドメとばかりに「ジャック・ナイフ」で会場の熱狂を煽り立てる。ケーサクのタイトなビートをバックに、ワタルとヤスはフロアにギリギリまで近付き、観客との一体感を楽しむようにしながらプレイを繰り広げた。
ワタル曰く「チルアウトタイム」のブロックで披露されたのは「君の好きな歌」と「ハッピー・エンド」。ワタルはアコースティックギターを弾きながら優しく歌い上げ、ヤスはドラムセットの脇に腰をかけて穏やかな低音を響かせた。またヤスは第1部と第2部の転換中に歴代の写真が上映された際、自分とケーサクの写真が映し出されたところ失笑が起きたと不満を漏らす。「ワタルのときはキャー!なのに」と文句を口にすると、ワタルが「セクシーなことをしたら?」と提案。そこからなぜかヤスとケーサクが抱擁する流れになり、2人がぎこちなく抱き合うと笑い声と共に「キャー!」という歓声が起きた。
「ラストに向けて怒涛の展開行くけどいい?」というワタルの宣言通り、第2部の後半は「陽はまた昇る」を皮切りに激しいナンバーの応酬に。「修羅」では、ケーサクがイントロのビートを刻み出した瞬間、一気に場内の空気が高揚する。ワタルが「最高の夜には僕の修羅が騒ぐ」と叫べば、ヤスはマイクをフロアに向け、オーディエンスにシンガロングを求める。狂喜乱舞するオーディエンスをさらに興奮させるように、3人は第2部のラストナンバーとして「KNOW KNOW KNOW」を叩き込んだ。
もちろんライブはこれで終わらずアンコールへ。ケーサクは登場するなり「超気持ちいいです。こんなにDOESって愛されてたんですね。感無量です」とうれしそうに語る。ワタルはこの10年間で115曲の楽曲をリリースしたことについて触れ、「すべての曲に思い入れがあるんだけど、その中でも思い入れの深いのをやるから」と観客に告げる。そんな言葉から、ノイジーで陽気なサウンドがさく裂する「サブタレニアン・ベイビー・ブルース」、「いつかまた会える そうつぶやく時 終わりが始まる」というこの日を象徴するようなフレーズが印象的な「世界の果て」がプレイされた。
その後、ワタルは「10年前の9月にデビューして……」とこれまでの活動を振り返り、「俺はまた違う未来に進んでいきます。新しいバンドをやります。メンバー2人も新しい未来に進みます。ロックンロールが死なないように、僕らも死ぬわけじゃないので、今後とも応援よろしくお願いします」と口にする。3人は真っ直ぐに前を見据え、ロックンロールの未来を歌った「ロックンロールが死んで」を奏でた。
再び起こったアンコールに応えてステージに戻ってきた3人は、口々に感謝の思いをオーディエンスに伝える。そして初期の代表曲の1つである「曇天」を渾身のプレイで届け、勢いのままに「バクチ・ダンサー」になだれ込む。フロアは再び狂乱状態となり熱気が立ち上っていく。ワタルは「これで終わりなんて、なんとなくつまんないけど、最後はこの曲で終わりだ。10年間本当にありがとうございました。またどっかでみんなに会えることを信じてがんばります。ホントにありがとう。DOESでした」と告げると、2006年9月にリリースされたデビュー曲「明日は来るのか」のイントロを奏で出した。
ヤスは口を固く結び、観客1人ひとりの顔を見つめながら楽器を奏で、ケーサクはスティックを力強く握り締めドラムを叩く。ワタルは「つまんない なんとなくつまらないよ これで終わりなんてさ」と叫ぶように歌い、ライブの終わりを惜しむ。全36曲を演奏し終えた瞬間、ワタルはステージの中央でギターを抱えたままひざまずく。するとベースを降ろしたヤスが近付き、労うようにその頭を軽くなでた。3人はそのままステージ中央に並ぶと、肩を組み頭を深く下げ、観客にお礼を伝える。最後に残ったワタルは、去り際に「ちゃんと生きてて待っててくれよな。最高の夜でした。ありがとう」とDOESとしての再会を誓い、3時間半におよぶライブに幕を下ろした。
DOES「DOES 10th Anniversary Live『Thanksgiving!』in AKASAKA BLITZ」
2016年9月18日 赤坂BLITZ セットリスト
<第1部>
01. ステンレス
02. ウォークマン
03. 戯れ男
04. 赤いサンデー
05. バスに乗って
06. ダンス・イン・ザ・ムーンライト
07. ワンダー・デイズ
08. 色恋歌
09. 三月
10. 黒い太陽
11. ユリイカ
12. 夜明け前
13. わすれもの
14. ライカの夢
15. 僕たちの季節
16. S.O.S.O
17. 紅蓮
18. 今を生きる
<第2部>
19. 晴天
20. カリカチュアの夜
21. 刹那
22. ロッカ・ホリデイ
23. ジャック・ナイフ
24. 君の好きな歌
25. ハッピー・エンド
26. 陽はまた昇る
27. ヘイヘイヘイ
28. レイジー・ベイビー
29. 修羅
30. KNOW KNOW KNOW
<アンコール>
31. サブタレニアン・ベイビー・ブルース
32. 世界の果て
33. ロックンロールが死んで
<ダブルアンコール>
34. 曇天
35. バクチ・ダンサー
36. 明日は来るのか
リンク
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ひろ @Hiro_rock009
「ちゃんと生きてて待っててくれよな」DOES、活動休止前ラストライブで約束 - 音楽ナタリー https://t.co/lD9iWsy5Mj