真空ホロウ、“2つの輪”描いた万感のツアーファイナル

真空ホロウの全国ツアー「真空パックvol.8」の最終公演が、11月30日に東京・UNITで開催された。

このツアーにはサブタイトルが付けられており、彼らは8月に東京・TSUTAYA O-WESTから「W（with/対バン）編とO編」として対バンツアーを開始。そして11月からは「W編とO（ワンマン）編～」として、福岡、大阪、愛知でワンマンライブを行ってきた。再び東京に戻ってきたメンバーは、「被害妄想と自己暗示による不快感」から勢いよくライブをスタートさせると、オーディエンスの顔をうれしそうに眺め回しながら「サイレン」「ホラーガールサーカス」を披露した。

MCでは村田智史（B）が茨城訛りで「今日は……」と話し始めただけでフロアに温かい笑いが起こる。村田はそんな状況に笑顔を浮かべながら、「今日は最高の思い出を一緒に作りましょう。というわけでどんどん飛ばしていきます！」と宣言。バンドは「Highway My way」でライブを再開させると、「週末スクランブル」では大貫朋也（Dr）の繰り出す強靭なビートに乗せて松本明人（Vo, G）が怒気をはらんだ歌声を響かせ、観客を圧倒する。またライブ中盤には浮遊感のあるサウンドが特徴的な「引力と線とは」をじっくりと聴かせ、「娼年A」「perfect circle」でオーディエンスをディープな世界へ誘った。

2度目のMC以降はライブならではの予期せぬ展開に。村田がボーカルを取る、“ジャパネットたかた”ならぬ“ジャパネットむらた”の音楽が流れ、村田が真空ホロウのグッズを紹介を始める。途中で左手の指がつるハプニングに見舞われるも、見事なプレゼンを披露した村田は、来春フルアルバムをリリースすることを告知。ファンから歓声が上がる中、松本はこの作品について「自分の曲を聴いていると心地よくて眠たくなるんだけど、それを自己満足じゃなくて共有してもらえるようなアルバムにできたら」と抱負を語った。

ここで演奏に戻る予定だったが、村田の指が直らないため急遽、大貫のドラムソロコーナーに。さらに松本と大貫が対バンツアーでのエピソードなどを紹介し、ようやく「アナフィラキシーショック」がスタートする。しかし村田は演奏することができず、曲のブレイクのところでそのまま演奏を中断。村田は、「ポカリ飲んで」「マッサージして」といった観客からの指示を実行し、最後は“お詫び”としてメンバー3人で「茨城県民の歌」の歌を届けた。気を取り直して「アナフィラキシーショック」を最初からプレイしたメンバーは「バタフライスクールエフェクト」「闇に踊れ」と畳み掛け、改めて場内の熱気を高めていく。さらに松本は「踊れ！」とオーディエンスを煽りながら「Balance cont(r)ol」「シンデレラコンプレックス」を投下した。

そして「紆余曲折ありましたがこういうバンドです。1年半ぶりの東京ワンマンでしたが、純粋に楽しかったです」と感想を述べた松本は、「言わないとわからないこともあるので」と前置きして、ツアーへの思いを語り始める。彼は今回のツアー「真空パックvol.8」に先駆けてライブ会場限定でリリースした「the◎」のタイトルには、「○」を縦に2つ並べると「8」になるという意味が込められていることや、グッズ販売しているラバーバンドのカラーがこれまでに発表してきた作品のイメージカラーを表していることなどを明かす。さらに「さっき演奏した『perfect circle』っていう曲には“2つの輪”っていうキーワードがあるんです。“1つ”でも生き切れないのに、“2つ”になるとエゴとかいろんなものがくっついたり離れたりして、どうして僕は“2つ”でいることができないんだろうと思っていて……。真空ホロウには“投げつける曲”が多いんですけど、この曲はキャッチできるように“投げかけている曲”で……。それはすごく勇気がいることなんですけど、これからもいろいろつながって、強い固まりを皆さまと作っていけたらと思います」と思いの丈を打ち明けた。そして松本は本編最後に「the◎」の収録曲「回想列車」を壮大に歌い上げ、余韻を残したままステージをあとにした。

アンコールでは村田が、自身の姉の結婚式でのエピソードを披露して「虹」の曲振りへとつなげる。ラストは「スノーホワイト」で会場を一足早いクリスマスムードに染め上げ、ツアーファイナルを締めくくった。