7月25日、
3月の東京・赤坂BLITZでの無観客ライブ以来4カ月ぶり、衆人環視のもとでは昨年12月の東京・LIQUIDROOM ebisu以来、実に7カ月ぶりとなる忘れらんねえよの東京ワンマンライブのチケットはソールドアウト。当日のQUATTROには超満員のファンが駆けつけた。
開演時刻を少し回った頃、梅津拓也(B)と酒田耕慈(Dr)がステージに現れると、突如「フロアのうしろから失礼いたしますー!」とガナる声が。観客がその「フロアのうしろ」、関係者エリアのさらに奥に目を向けると、そこにはスーツにネクタイ、横分けのカツラというスタイルの柴田隆浩(Vo, G)の姿。その出で立ちと登場の仕方に誰もが呆気にとられている中、柴田は「あああーっ! 大変申し訳ございません!」「ステージに向かわせていただいてもよろしいでしょうかっ!?」と野々村竜太郎元兵庫県議会議員のモノマネをしながら、すし詰め状態のフロアに特攻しステージを目指すも、当然もみくちゃに。結局、ファンに頭上高く担ぎ上げられ、クラウドサーフの要領でステージへと送り込まれてしまう。
いささか不本意だっただろうかっこうで梅津、酒田と合流した柴田だが、ギターを手にするや、フロアに「野々村!」「竜太郎!」のコール&レスポンスを要求。これに超満員の観客が大「竜太郎!」コールで応えると、「上出来です!」と「僕らチェンジザワールド」「戦う時はひとりだ」「だんだんどんどん」「俺を守りたい」と新旧織り交ぜた楽曲群でライブ序盤を盛り上げた。
この日のステージのセッティングは変則仕様。柴田曰く、梅津が「ライブのやりすぎで腰を痛めた」ため、ステージ下手前方に酒田のドラムセット、一般的にはドラムがセットされる中央奥に立ち上がってプレイできない梅津のためのソファとベースアンプ、上手前方に柴田のギターアンプという構成で行われた。「改めまして、SMAPです!」「メンバーの中に梅津だけど『拓也』がいるじゃねえか!」と、さっそくその梅津をイジった柴田は彼らとともに「この高鳴りをなんと呼ぶ」から「あんたなんだ」まで、またも新旧楽曲を立て続けにドロップ。「中年かまってちゃん」では同日、新潟・湯沢町苗場スキー場で「FUJI ROCK FESTIVAL '14」が開催されていたことになぞらえ、本来の歌詞そっちのけで「今さ! フジロックやっててさ!」とフロアを煽り、「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」では真紅のライトに照らされながら「♪けど今も 赤い夕焼けが俺を染める」と高らかに歌い上げてみせる。
その後のMCで柴田はこの日のライブのタイトル「対バン全然決まらんからもうヤケクソでワンマンにしたる」がノンフィクションであることを明かす。対バンが決まらなかったというのはウソ。最初からワンマンを仕組んでいたのだろうと思っていたファンの挙手を求めた彼は、フロアのそこここから聞こえる「はーい!」の声に「You're Liar」とポツリ。さる2バンドに対バンのオファーをするも、どちらにも「スケジュールの都合で」断られたと苦笑いを浮かべていた。
しかしその直後には「せっかくワンマンになったんだから特別なことをしたいじゃないですか」と、2ndアルバム「空を見上げても空しかねえよ」に収録されている「夜間飛行」のプロトタイプ「Happy birthday! とはいえ俺は誕生会に呼ばれていない」をギター1本の弾き語りスタイルで披露。モテないことへのルサンチマンとド下ネタに満ち満ちた歌詞でフロアを笑わせるも、そのまた直後には「せっかくだから本物を聴きたいっスよね!」とバンドセットで“正調”「夜間飛行」を熱くパフォーマンスし、バラード「運動ができない君へ」を優しく、しかし力強く歌うなど硬軟自在のパフォーマンスを見せつけ「今日はなんかスゲー調子いい」と満面の笑みをフロアに向けた。
ところが好事魔多し。続く「そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか」では、明らかにボーカルのピッチがおかしいまま1コーラス目を歌い出し「ちょっと待って! 歌い出しから薄々気付いてたんだけど、オレ今めっちゃ音痴だよね?」と演奏を中断。挙げ句の果てには「(ギターの)チューニング、めっちゃズレてんじゃん! 酒田!!」と逆ギレするも、梅津に「だいぶ前から狂ってたよ」と返され「早く言ってよ。一緒にワンマンのいい空気を作ろうって言ったじゃん」「なんだよー」とボヤく始末。その後も思い出したかのように「っていうかオレ明日33歳になるんですけど!」とフロアをねめつけ「ハッピーバースデイ」の歌を強要するなど蛮行を繰り広げるも、観客の「♪ハッピーバースデイ トゥ ユー」の歌声に気をよくしたか、改めて同曲をプレイした。
この日QUATTROに遊びに来ていた「『爆弾ジョ』から始まって『ニー』で終わるバンド」のりょーめー(Vo, G)を紹介し、10月から「ツレ伝ツアーファイナル ~そして伝説へ~」を開催することをアナウンスした柴田は「こっからね、中盤折り返しですよ」とライブが佳境を迎えつつあることを伝える。そして「ちょっとオレもドキドキしてるんだけど速い曲がほとんどなんだよね」「オレ途中で老衰するかもしれないけど、みんなも死ぬなよ」と笑い「この街には君がいない」「体内ラブ」「バンドやろうぜ」というアップリフティングな3曲を連発。「体内ラブ」ではミニアルバム「あの娘のメルアド予想する」収録バージョン同様、
高いパフォーマンスと持ち前のエンタテインメント性でハプニングやトラブルを乗り越え、突入したライブ終盤でもバンドはサプライズを連発する。これまでの「ツレ伝ツアー」を振り返るMCののちには、ツアーで競演したKEYTALKの「パラレル」とキュウソネコカミ「ビビった」をカバーするその名も「ツレ伝メドレー」をプレイ。ラストナンバー「ばかばっか」では梅津のベーストラブルにより再び演奏を中断するも、またも巻き起こった「酒田」コールに酒田がグダグダに応えたのち、柴田がハンドマイク片手にフロアに突撃する。目が合った男性ファンとキスし、周囲の黄色い悲鳴をさらった柴田は、自身をリフトしてバーカウンターまで運んでくれとシャウト。ファンに担ぎ上げられた状態で「ばかばっか」を歌いながらまんまとバーカウンターに到達するとパンツのポケットから汗みずくの1000円札を取り出し缶ビールを買い求め、再びクラウドサーフに乗ってステージに戻ると、そのビールを一気に煽ってみせた。
アンコールの実質的な1曲目はB'z「ultra soul」。アンコール代わりの「酒田」コールが起きると、どこからともなく同曲が流れ出し、フロアの後方からは競泳用水着に水泳帽姿の柴田が登場する。「北島康介ですっ!」と叫んだ彼はライブ開始直後と同じくフロアに突進。観客をかきわけステージへと歩を進めるも、今度はファンから水泳帽を脱がされ、「勃っちゃうから!」「触るなボケ!」という絶叫の中、乳首と股間をイジられる事態に見舞われてしまう。しかし「♪そして輝く ウルトラソウル」「♪Hey!」のコールとほぼ同時にステージに復帰するミラクルを巻き起こすと「バンドワゴン」と「忘れらんねえよ」を連続投下。フロアのファン、りょーめー、玉屋2060%、MAXとともに大合唱を繰り広げた「忘れらんねえよ」のアウトロを梅津、酒田、MAXがプレイする中、りょーめー、玉屋を引き連れ再びフロアに降り、ステージはおろかQUATTROそのものをあとにして、ひさびさの東京ワンマンライブを締めくくった。
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忘れらんねえよ「対バン全然決まらんからもうヤケクソでワンマンにしたる『ヤケ伝』」
2014年7月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTROセットリスト
2014年7月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTROセットリスト
01. 僕らチェンジザワールド
02. 戦う時はひとりだ
03. だんだんどんどん
04. 俺を守りたい
05. この高鳴りをなんと呼ぶ
06. 中年かまってちゃん
07. 青年かまってちゃん
08. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
09. あんたなんだ
10. Happy birthday! とはいえ俺は誕生会に呼ばれていない
11. 夜間飛行
12. 運動ができない君へ
13. そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
14. タイトルコールを見ていた
15. この街には君がいない
16. 体内ラブ
17. バンドやろうぜ
18. ツレ伝メドレー(パラレル~ビビった)
19. CからはじまるABC
20. 僕らパンクロックで生きていくんだ
21. 北極星
22. ばかばっか
<アンコール>
23. バンドワゴン
24. 忘れらんねえよ
リンク
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