レジェンドたちが熱戦!「10TONES」終幕

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7月27日に東京・日比谷野外大音楽堂で野外イベント「10TONES」が実施された。

「10TONES」に出演したTONE所属アーティストたち。(撮影:ほりたよしか)

「10TONES」に出演したTONE所属アーティストたち。(撮影:ほりたよしか)

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このイベントはLITTLE CREATURES高田漣などのマネージメント事務所TONEの“設立10周年興行”として執り行われたもの。当日はLITTLE CREATURES、高田漣、沖仁、伊賀航、伊藤大地というTONE所属のアーティストがUA、鈴木茂、林立夫、細野晴臣高橋幸宏、渡辺香津美、大貫妙子菊地成孔、野村卓史らゲストアーティストと“対戦”するという体でコラボライブを行った。またイベントはプロレス中継でおなじみの清野茂樹アナウンサーが実況アナウンス、ASA-CHANGがリングアナを務めるなど、プロレス色を強く打ち出したコンセプチャルなものとなった。この日は開場時にゲリラ豪雨に見舞われるも、徐々に雨脚が弱まり夏の野外らしいさわやかな雰囲気に。訪れた観客はみな和やかにレアな“対戦”を見守った。

「伊賀航 vs benzo」のワンシーン。(撮影:ほりたよしか)

「伊賀航 vs benzo」のワンシーン。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

「伊藤大地 vs 野村卓史」のワンシーン。(撮影:ほりたよしか)

「伊藤大地 vs 野村卓史」のワンシーン。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

イベントの口火を切ったのは、TONE所属のベーシスト・伊賀航とbenzoによる対戦。benzoは平泉光司(Vo, G)、佐々木一也(Dr)、キンドー(Key)という布陣で臨み、本来benzoのベーシストでもある伊賀とセッションを行った。対戦とは言え演奏されたのはbenzoの楽曲。彼らは人気曲「Day By Day」などグルーヴィなポップス3曲をさわやかに届け、この対戦の終了時には雨雲が遠のいていた。続いては「伊藤大地 vs 野村卓史」というグッドラックヘイワ同士のカード。赤コーナーから登場した野村卓史はRage Against the Machineの楽曲を入場曲に勇ましく登場した。2人は「遅刻」「長生き」というグッドラックヘイワの楽曲をプレイし、同級生同士の真剣なセッションで観客の喝采を生み出した。

「伊藤大地 vs 林立夫」の様子。左の野村卓史は“セコンド”として出演。(撮影:ほりたよしか)

「伊藤大地 vs 林立夫」の様子。左の野村卓史は“セコンド”として出演。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

「沖仁 vs 菊地成孔」のワンシーン。(撮影:ほりたよしか)

「沖仁 vs 菊地成孔」のワンシーン。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

清野アナをして「“マッチョマン”ことランディ・サベージを思わせるような見事な入場」と言わしめた林立夫は、伊藤大地との「RRWCドラム級選手権試合」を実施。ここでは野村と伊賀が“セコンド”と称したサポートミュージシャンとして参加した。ドラムレジェンドと若手切っての実力派は終始息の合った演奏を見せつけ、観客の体を揺らしていった。第4戦は沖仁の3連戦の初陣となった。対戦相手である菊地成孔がソプラノサックスを手に姿を現すと、2人は「さくら」のフレーズを軸にしたロングセッションを展開。流麗なサックスの旋律と表現力豊かなギターの調べにセミの鳴き声が混じり合い、夏の野外に哀愁が漂った。また2人は菊地のボーカルで「Mr.サマータイム」のカバーを披露するなど見どころを生み出した。

「 沖仁 vs 大貫妙子」の様子。(撮影:ほりたよしか)

「 沖仁 vs 大貫妙子」の様子。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

「沖仁 vs 渡辺香津美」の様子。(撮影:ほりたよしか)

「沖仁 vs 渡辺香津美」の様子。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

沖の2戦目の相手は大貫妙子。笑顔を振りまき登場した大貫の入場を、清野アナも「今大会の出場者の中で、最強とも言われています!」と煽り盛り上げる。2人のセッションはセコンドとして林と鈴木正人(B / LITTLE CREATURES)が脇を固める豪華な陣容となった。バンドは大貫の「美しい人よ」など3曲をプレイ。沖のギターと大貫の伸びやかな歌声が叙情的な世界観を作り出した。熱戦のうちに菊地、大貫という難敵を退けた沖は、3連戦最後の砦・渡辺香津美との大一番に挑む。ギターを手に対峙するように陣取った2人は「地中海の舞踏」「Scarborough Fair」の2曲をプレイ。互いのテクニックをぶつけ合う圧巻のセッションを繰り広げ、ギターのみとは思えぬ音像にオーディエンスの目と耳は釘付けになっていた。

「高田漣 vs 高橋幸宏 」の様子。(撮影:ほりたよしか)

「高田漣 vs 高橋幸宏 」の様子。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

「高田漣 vs 鈴木茂」の際は伊賀航、伊藤大地、野村卓史がサポート出演。(撮影:ほりたよしか)

「高田漣 vs 鈴木茂」の際は伊賀航、伊藤大地、野村卓史がサポート出演。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

続いては“TONEジムの選手会長”である高田漣の出番。高田の初戦の相手である高橋幸宏は「RYDEEN」をバックに登場し大喝采を誘った。鈴木、伊藤、野村が参加したこのカードは「Helpless」から幕を開けた。夏の夕方にぴったりなゆったりとしたグルーヴで観客の心をつかんだあとは、「Radio Junk」「前兆」と人気曲をプレイ。高田の揺らめくようなギターが楽曲の魅力を引き立てていた。続いて高田を待ち構えていたのは鈴木茂。このカードでは伊賀、伊藤、野村がセコンドを務めた。まずは高田が「絵空事」を歌い弾いて先制攻撃を見舞うと、鈴木も「砂の女」で圧倒的な演奏力を見せる。さらにバンドは“とどめ”とでも言わんばかりにはっぴいえんどの「花いちもんめ」を投下し、その分厚いサウンドで観客を熱狂させた。

細野晴臣(撮影:ほりたよしか)

細野晴臣(撮影:ほりたよしか)[拡大]

清野アナの「プロレスの神様がカール・ゴッチであるならば、音楽の神様はやはりこの人、細野晴臣ではないでしょうか!?」という実況が観客を興奮させた第9戦は、伊賀と細野晴臣による対決。大音量の「ツァラトゥストラはこう語った」が鳴り響き赤コーナーから細野が入場してくると、会場はこの日一番の歓声に包まれた。日本を代表するベーシストである細野と、細野バンドでベースを担当する伊賀という師弟対決となったこの1戦は、セコンドとして細野バンドの一員である高田と伊藤に野村を加えた編成で行われた。バンドは「バナナ追分」「A Cheat」「Ain't Nobody Here But Us Chickens」といったナンバーをタイトにプレイし観客を酔わせると、BPM速めで「Body Snatchers」をクールに届けライブを締めくくる。

「伊賀航 vs 細野晴臣」の様子。(撮影:ほりたよしか)

「伊賀航 vs 細野晴臣」の様子。(撮影:ほりたよしか)[拡大]

大喝采の中退場しようとする細野に対し、突如伊賀が「細野さん、俺と真剣勝負してください!」と対戦要求の声を上げる。観客が驚きの声を上げ展開を見守る中、細野はこの要求を力こぶを作って見せて承諾。急遽時間無制限の1本勝負が行われることが決定した。2人は至近距離で睨み合ったのち、向かい合って着席。突然流れ出したクリック音を合図に演奏を始める。観客は一瞬何を演奏しているのかわからなかった様子だったが、伊賀の歌によってこの曲がSly & The Family Stoneの「Runnin' Away」であることが判明。シュールな光景を生み出したこの対決はクリック音のフェードアウトとともに幕を下ろし、細野の「……勝ったな」というつぶやきで勝敗は決定したようだった。

LITTLE CREATURES(撮影:ほりたよしか)

LITTLE CREATURES(撮影:ほりたよしか)[拡大]

この日のメインマッチはLITTLE CREATURESとUAによる1戦。Europe「The Final Countdown」がスピーカーを揺らす中LITTLE CREATURESの3人がそれぞれの持ち場に立つと、彼らはUAの入場を待たずに「Mosquito Curtain」から演奏を始めた。3人とは思えない多様なサウンドを繰り出しながら「Marky Waters」「Night People」と貫禄あるプレイを続け、会場をワンマンライブのような雰囲気に染め上げていく。しかしその空気を断ち切るように、ASA-CHANGがUAをステージに呼び込んだ。UAは登場するなり青柳拓次(Vo, G)にタックルを見舞ったり、栗原務(Dr)に蹴りを入れたり、実況席を襲撃したりとヒール役をしっかり演じてみせる。清野アナも「まさにデンジャラスクイーン! 誰にも止められない!!」とその暴挙を伝えた。

UA(撮影:ほりたよしか)

UA(撮影:ほりたよしか)[拡大]

ひとしきり騒いだところでステージ中央に陣取ったUAは、LITTLE CREATURESをバックバンドに「情熱」を投下し観客を興奮させると、2組は続けてLITTLE CREATURESのトリビュートアルバムでUAが歌った「Muddy Sky」を披露。栗原の軽快なドラムとムーディな鈴木のベースの上にUAと青柳の声が美しく重なった。そしてバンドは最後にLITTLE CREATURESの「House Of Piano」をプレイ。このセッションは、ミニマルなグルーヴとUAの野趣を感じさせる歌唱が融合し、呪術的とすら思えるほどディープなものに。UAは楽曲の途中でマイクを手放して踊り出し、場内のカオスな雰囲気をピークに誘った。出番を終えたUAがLITTLE CREATURESやTONEの是澤泰志社長を讃え会場を去ったあとは、ステージにTONE所属の出演者がおそろいのシャツを着て登場。会場に詰めかけたオーディエンスに10周年の感謝を伝えたところで、イベントはエンディングを迎えた。

「10TONES」
2014年7月27日 日比谷野外大音楽堂 セットリスト

第1試合 15分1本勝負 エキシビジョンマッチ 伊賀航 vs benzo

01. 真昼
02. 落下ドライブ
03. Day By Day

第2試合 10分1本勝負 エキシビジョンマッチ 伊藤大地 vs 野村卓史

01. 遅刻
02. 長生き

第3試合 10分1本勝負 RRWCドラム級選手権試合 伊藤大地 vs 林立夫

01. Penguin & Camel
02. Chinese Skater
※セコンド:伊賀航(B) / 野村卓史(Key)

第4試合 20分1本勝負 スペシャルシングルマッチ 沖仁 vs 菊地成孔

01. さくら
02. Mr.サマータイム

第5試合 20分1本勝負 スペシャルシングルマッチ 沖仁 vs 大貫妙子

01. 美しい人よ
02. 夢のあと
03. この空の下で
※セコンド:林立夫(Dr) / 鈴木正人(B)

第6試合 20分1本勝負 RRWCアコギ級選手権試合 沖仁 vs 渡辺香津美

01. 地中海の舞踏
02. Scarborough Fair

第7試合 20分1本勝負 スペシャルシングルマッチ 高田漣 vs 高橋幸宏

01. Helpless
02. Radio Junk
03. 前兆
※セコンド:鈴木正人(B) / 伊藤大地(Dr) / 野村卓史(Key)

第8試合 20分1本勝負 RRWCエレキ級選手権試合 高田漣 vs 鈴木茂

01. 絵空事
02. 砂の女
03. 花いちもんめ
※セコンド:伊賀航(B) / 伊藤大地(Dr) / 野村卓史(Key)

第9試合 20分1本勝負 スペシャルシングルマッチ 伊賀航 vs 細野晴臣

01. バナナ追分
02. A Cheat
03. Ain't Nobody Here But Us Chickens
04. Body Snatchers
05. Runnin' Away
※セコンド:鈴木茂(G) / 高田漣(G) / 伊藤大地(Dr) / 野村卓史(Key)

第10試合 30分1本勝負 3対1 変則タッグマッチ LITTLE CREATURES vs UA

01. Mosquito Curtain
02. Marky Waters
03. Night People
04. 情熱
05. Muddy Sky
06. House Of Piano

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フラメンコギタリスト沖仁 JIN OKI guitarrista flamenco @junglejinjin

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