のっちはゲームがしたい! 第17回(後編) [バックナンバー]
「学園アイドルマスター」のアイドルはどうしてこんなに魅力的なの?小美野Pに制作秘話を聞きました
生身の人間を感じるライブシーンができた理由、新たに実装されるアイドルの話も
2024年11月14日 12:30 141
みんなの質問、のっちが代わりに聞いてきますのコーナー!
のっち ここからは読者の方から募集した小美野さんへの質問を聞いていくんですけど、この衣装の話は私も聞いてみたくて。
パラパラ大名(@ppdaimyo)さんの質問
学マスの衣装、ジッパーの噛み合わせや角度や照明によって違う見え方があったり、とても繊細に表現されていて大好きです!いままでのアイマスと比べて、衣装考案で気をつけている点はありますか?
のっち すごい……そんな細かなところまで! ジッパーの噛み合わせ、ってなんですか……?
小美野 どれのこと言ってるんだろう……めちゃめちゃたくさん作ってるんで(笑)。ただ、衣装には本当にこだわってます。どんな衣装も「必ずテーマを持って作る」と決めていて、すべて曲ができてから作っているんです。わかりやすいところで言うと、佑芽ちゃんの「The Rolling Riceball」っていう曲。「おむすびころりん」をモチーフにしているので、チェックの柄がおむすびだったり、イヤリングがおむすび型だったり、そういう細かい部分をデザインしてもらって。
のっち あはは、かわいい(笑)。
小美野 あと、全体曲の「初」は「プロデューサーと出会う前のアイドルたちの現在地」をテーマに衣装を作ってもらったんですが、ソロ曲は「プロデューサーと出会ってどう成長したか」を見せるための衣装になっていて。リーリヤを見てもらうとわかりやすいんですけど、最初は真っ白だった衣装が真っ黒に変わるんですよ。これは、まだアイドルの知識があまりなくて何にでも染まる状態だった彼女が、強い意志を持ってアイドルになると決めて、何も染まらない黒に変わったことを表してるんです。
「学マス」ゲーム内 OPアニメーション(※1分10秒あたりから10人での歌唱シーン)
葛城リーリヤ ライブシーン
のっち はー! ウエディングドレスが白いのと一緒ですね。「あなた色に染まる」っていう。衣装の変化は麻央さんもわかりやすいですよね。
小美野 そうですね。カッコいい路線から、カッコよさだけでなくかわいさもある衣装に変わるという。
のっち 続きまして、こんな質問をいただきました。
チャーリー・ハマー⊿(@CharlieHummer38)さんの質問
見た目やキャラの性格を決めるとき、実在のアイドルを参考にしたりしますか?
小美野 AKB48さんとかが盛り上がっていた世代の人間なので、自分もいっぱいアイドルを観てきましたし、まったく影響されてないことはないと思うんですが、意識して何かを参考にしたことはないですね。ただ、“アイドルらしさ”のイメージは自分が観てきたそういうものの中から拾っているとは思います。例えばアイドルの成長を描くときに、オーディションに受かったモーニング娘。さんがその後どんなレッスンをしてステージに立ったのかとか、ドキュメンタリーチックに撮影したものを中学生くらいのときに観ていた記憶がどこかしら反映されているんじゃないかと。
のっち 「今のアイドルってどんな感じなんだろう?」みたいなことをチェックしたりは?
小美野 あまりしないですね。衣装の参考にちょっと調べることはたまにありますが。このゲームは長ければ10年は続くIPになるのに、今の流行に合わせてしまうと時間が経ったときに古くなってしまうので、できるだけ普遍的なものにしたいんですよ。
のっち いつの時代でも頭に思い浮かぶようなアイドル像のほうがいいんですね。でも、実在のアイドルを参考にしていないとはいっても、「学園アイドルマスター」に出てくるアイドルにはリアリティがあるなと思って。例えば、私もプロデューサーに歌を書いてもらう立場なので、書いてもらった歌から勇気をもらうこともあるんです。だからアイドルたちが、もらった歌を通して自分を知ったり、歌のおかげで強くなれたりするのは「わかるっ!」ってなりました。
小美野 それは意識していますね。曲を作るときも、それを歌うアイドルがどう感じるか意識してますし。そして「どう意識したのか」をゲームのシナリオの中で説明するんですよ。プロデューサーのセリフに曲に込めた思いを入れたり、アイドルのセリフで「こういう曲で背中を押してあげたいんだ」みたいなことを言ったり。
のっち うん、単なるキャラクターソングじゃない感じがしました。
小美野 まさにそうなんです。
のっち 次の質問はこちらです。これは「小美野さんにとってアイマスとは?」みたいな話になるんですかね。
キャッサバ(@gucumatz3)さんの質問
アイドルマスターという歴史あるゲームの新作を製作するうえで、ここは変えよう・ここは変えてはならないといった根幹的なものはどういったものと捉えていますか?
小美野 自分の手で育てたアイドルが、成長してステージ上で輝いて、その子から感謝されるという、その一連の体験が「アイドルマスター」の根幹だと思っているので、一番強く意識しています。今回の制作に携わるにあたって、過去のシリーズを遊ばせていただきながらそれを感じたので、その中でも特に成長という部分を抽出して強く描きました。
のっち プロデューサーが“事務所のスタッフ”から“生徒”になったのは変化ですよね。ゲームをやっていて「このプロデューサー、プロデュースがうまいなー」って思ってます(笑)。
小美野 それについては悩んだんですけど、アイドルの成長を見守っていくうえで、プロデューサーとアイドルの距離感をできるだけ近くしたかったんです。大人と子供という関係にしてしまうと、一緒に悩んだり成長したりというのを描くのがどうしても難しくなってしまうので。
のっち 先生という案もあったってことですか?
小美野 ありました。最初は先生という立ち位置のほうがしっくりくると思って進めてたんですが、それだとやや他人事になっちゃうんですよね。できるだけ距離を近付けるためには、2人とも同じ生徒という立場にしたほうがよかったんです。だから同級生という設定も考えたんですけど、いろんなところに相談に行ったら「プロのアイドルを目指している子をプロじゃない同級生がプロデュースするのはあまりにも無責任すぎる。この子たちの人生がかかっているんだぞ?」って言われて(笑)。
のっち あはは、そっか(笑)。
小美野 だから、どちらも初星学園の生徒だけど、アイドルたちは高等部、プロデューサーはめちゃくちゃ優秀な人しか入れない専門大学のプロデューサー科という設定にしたんです。実質プロと変わらないけどアイドルとの距離は近い。
のっち 年齢の話で言うと、こんな質問もあって。
木田太郎@ミン番(@kidatarou)さんの質問
咲季と佑芽を二卵性双生児ではなく年子にしたのは何故ですか?似てないという点を表現するのであれば前者でも可能だと思うのですが
のっち これ私も「あれ?」って思ったんですよ。姉妹なのに誕生日もほぼ一緒だし、2人とも1年生ですよね?
小美野 咲季の誕生日は4月2日で、佑芽の誕生日が1年後の4月1日なので、早生まれで同じ学年なんです。
のっち あー!
小美野 双子にしなかった理由は、咲季と手毬とことねの3人を1年生にしたかったからです。でもそうすると咲季の妹を出そうとなったときに、1人だけ中等部にするのも違うし、双子にするとこの2人の距離感がうまく描けないと思って。咲季はお姉ちゃんキャラであることが重要だから、双子ではなく年の差を付けたかったので、何かいい方法はないかなと考えていたら「年子でも同じ学年にする方法はあるよ」と教えてもらって。
のっち そうだったんですね。「どういうことなんだ?」って思ってました(笑)。今日はいろいろなお話を聞かせていただいたり、貴重な会議も見させてもらったり、どうもありがとうございました。バンダイナムコの皆さんも、やっぱり会社としてゲームを作る以上、ちょっと言い方はアレですけど、お金も稼がなきゃいけないわけで。プレイヤーをどういう気持ちにさせて、どういうモチベーションで遊び続けてもらうか……というのをしっかり考えているところを見られてとても面白かったです。そしてそんな中でも、皆さんが1人ひとりのキャラクターを大事にしているのがよくわかって、それがすごくうれしかったです。
小美野 これからも行く末を見守っていてください(笑)。
のっち はい。トゥルーエンドを見たいのでこれからもがんばります……どうしたら見れますかね?
小美野 とりあえずプロデューサーレベルを20まで上げてください。たぶんプロデューサーレベルを上げていただくのが一番早くトゥルーエンドにたどり着く方法だと思います。実は序盤でガシャを回して手に入れるカードよりも、プロデューサーレベルが上がってから手に入るカードのほうが強いんですよ。そのために、いろんな子をまんべんなくプロデュースするのがオススメです。第一印象だけではなく、いろいろなアイドルの中から自分の担当するアイドルを決めてほしかったので!
のっち 私のやり方は間違ってなかった!(笑)
のっちさんの取材後記
こんにちは、ほっかほかのアルバムできました!のっちです。
2024年10月30日にPerfume 2年ぶりのアルバム「ネビュラロマンス 前篇」をリリースしました!!
ん?前篇?
そう。"前篇”なんです。という事はもちろん! “後編”があります! 2025年に出ます! 作ってます!
なんと今回のアルバムは、前後編に分かれたコンセプトアルバムです。
「ネビュラロマンス」という3人を中心とした架空のSFロマンス物語の、架空のサウンドトラックとして、我々Perfumeの音楽プロデューサー「中田ヤスタカ神」が作ってくれました。
レコーディングスタジオに行くと「ネビュラロマンス 前篇」の候補曲10曲がもう完成していて、手元の資料には中田さんの想像するジャケットや世界観のリファレンスイメージと、10曲分の歌詞。こんなん初めて!
1曲目から通して聴きながら、中田さんが「この曲はこういった場面で流れる曲で~友達や恋人だと思ってた人たちが実は~実は自分が~この曲で驚愕の事実が発覚してガーンてなってその後エンドロールが流れてシーズン2どうなっちゃうの~て感じで~」。と、口調がこんなだったかは不確かですが、こんな感じで、考えたストーリーの説明を聞かせてくれました。その時間は本当に特別で、ちょーワクワクしました。
過去にも、SF要素のあるPerfumeの楽曲は何曲もあるし、堪らなくかわいくてかっこよくて好きです。
それが今回、色んな作品に詳しくて恐らくSF作品も好きであろう中田さんが、曲と曲の隔たりを越えてストーリーを仕立てて、そして才能をPerfumeの作品に注いでくれたことがめっちゃめちゃに嬉しかった。
中田さんとPerfumeは、21年くらいになります。えっ! 長い!(笑) ほんとに? 計算あってる? びっくりしちゃった。
まだまだ新しいことができるんだ!と、挑戦できる喜びを感じます。
中田さんが私たちにくれる曲は、その歌詞達は、その時その時の私たちを本当に優しく救ってくれるし、背中を押してくれる。いつかの言葉が今を救ってくれる時もあれば、新しい曲があの時の私を救ってくれる時もある。
目まぐるしく変化していく世界の中で、どんなムードで活動していこうかという指針にもなる。
わたしの人生です。
中田さんの曲の世界観を、チームで力を合わせて実体Perfumeに落とし込み、作られたのがアルバム「ネビュラロマンス 前篇」です。
初回限定盤には、映画のパンフをイメージして作られたパンフレットがついていて、登場人物の紹介だったり、キャラクター設定画だったり、前篇のストーリーのカケラが書かれていたりします。
こんなん堪らん。わたし、ゲームの設定資料集みたい!って思って。そこでしか読めない文章とかあるの堪らん。
是非手に取って読んでみて欲しい。
ぜひ自分なりのストーリーを想像しながら聴いてみてください!
ライブも楽しみ絶対来て欲しい。待ってます!
さて! 宣伝も終わったところで!
今回は前後編にわたり、アイドル育成シュミレーションゲーム「アイドルマスター」シリーズの新作スマホゲーム「学園アイドルマスター」のプロデューサーを務める小美野日出文さんに会いにゆきました!
アイマスです!
間違いなくPerfumeを世の中に押し上げてくれた足を向けて寝られんもののひとつです!
ただ当時私たちは知らなかった……。
何故か「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」という曲の認知度が高いんだよなあなんでだろう?の答えの一つがここにあったと気づいたのもここ数年のことです。
いつの時代も、Perfumeを素材に何か作ろうと思ってくれる誰かがいてくれることが、とっても幸せです。
今回は、お話の他にもガチな会議を見せていただいて、ほんとに、「のっちが口固くてよかったね!」って感じです(笑)
ほんとにスッスッスッと、でもじっくりじっとりと進む、その不思議なスピード感に驚きました。
貴重な機会をありがとうございます。
アイドル科のみんな面白くて夢があって愛おしい。
誰か自分に期待している人がいるのか、何ができるのか、何になれるのかもわからないそんな時に、プロデューサーは真っ直ぐ言葉にして自分の魅力を伝えてくれる。
その言葉に少しずつ背中を押されながら、一緒に成長するプロデューサーとアイドルの姿が気持ちがいいです。
みんなほんとにかわいいです。
これからも見守らせてください!!!!
ひとつひとつ真摯にお話してくださって、例え話も交えてわかりやすく説明してくださったり、ありがたかったです。学マス愛がバシバシ伝わりました!!
お世話になりました「学園アイドルマスター」の企画開発に携わる皆さま、本当にありがとうございました!
次回予告
当連載を書籍化した「のっちはゲームがしたい!の本」が12月6日にKADOKAWAより発売されることが決定しました!
この本は連載バックナンバーの対談パートをまとめたもので、書籍限定の企画として「星のカービィ」シリーズや「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの生みの親・桜井政博さんとの対談も掲載。さらに購入者限定特典として、ゲーム実況者のジャック・オ・蘭たんさんとの対談動画も観ることができます。
次回はこのジャック・オ・蘭たんさんとの対談動画の収録レポートを掲載する予定です。こちらもご期待ください!
Perfume最新情報
前後編に分かれたコンセプトアルバムの前編「ネビュラロマンス 前篇」発売中。12月から全国ツアー「Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1」を開催します。
バックナンバー
Perfumeのほかの記事
関連商品
タグ
はやぽん @Hayaponlog
「学園アイドルマスター」のアイドルはどうしてこんなに魅力的なの?小美野Pに制作秘話を聞きました(2/3) | のっちはゲームがしたい! 第17回(後編) - 音楽ナタリー コラム
これは面白い https://t.co/Wpzi8HFft0