キニナル君が行く!

キニナル君が行く! 第6回 [バックナンバー]

印税ってどうやったらもらえるの?

JASRAC広報部の岩根茉佑さんに突撃取材!

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ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。

はぁ~南の島のビーチでトロピカルカクテルを飲みながら優雅な印税生活を送りたい……。みんなもそんな妄想を膨らませたりしない? でも印税ってどうやったらもらえるのかな。考えてみたらよくわからなかったので、JASRAC広報部の岩根茉佑さんに音楽業界の印税について詳しく聞いてきたよ。目指せ、夢の印税生活……!

取材・/ キニナル君 撮影 / 山崎玲士 イラスト / 柘植文

印税には3つある

──今日はよろしくお願いします! あのー僕、南の島で優雅な印税生活をするのが夢なんですけど、印税ってどうやったらもらえるんですか?

元気よく挨拶するキニナル君

元気よく挨拶するキニナル君

いい夢ですね(笑)。印税には著作権印税、アーティスト印税(歌唱印税)、原盤印税の3つがあります。ただ印税という単語は法律用語ではないんですね。著作権法に印税という言葉は出てきません。権利周りでもらえるお金の通称として印税と呼んでいるだけで、印税の明確な定義は実はなくて。なので人によって違う意味で使っている可能性のある、曖昧な言葉なんです。

──著作権印税のことを印税と言っている人もいるかもしれないし、アーティスト印税のことを指している人もいるかもしれない?

そうですね。3つをまとめて印税と呼んでいる人もいるかもしれません。その中でJASRACでは著作権印税に関する仕事をしています。

──実は僕、著作権も何かよくわかってなくて……。

思想や感情を創作的に表現したものを著作物といい、音楽に限らずマンガや小説、絵画なども該当します。また、著作物を作った人を「著作者」といい、音楽であれば作詞者と作曲者などが著作者です。そして、著作者に与えられる権利が著作権になります。例えばキニナル君が苦労して制作した曲を知らない人が勝手に使ってお金もうけをしていたらどう思いますか?

──めちゃくちゃ嫌だ! 普段温厚な僕だって怒るよ!

ですよね。著作権は自分が作った作品を無断で使われないようにするための権利なんです。「著作権は権利の束である」と言われているんですが、利用方法ごとに権利が定められていて、それぞれの権利に対して利用のたびに著作者の許諾が必要になります。

──どんな権利があるんですか?

演奏権や複製権、公衆送信権など、たくさんの権利があります。演奏権はコンサートや発表会などで公衆に向けて著作物を演奏したりBGMとして流したりする際の権利、複製権はその名の通り著作物のコピーを作成することに関する権利──楽譜をコピーすることやCDを別メディアにコピーすることも該当します。そして公衆送信権はインターネットなどを通じて著作物を公衆に送信するときの権利ですね。

著作権一覧

著作権一覧

著作権とは別に著作隣接権がある

──こんなにたくさんの権利があるんですね! これらの権利に関わる方法で楽曲を利用するときに発生するお金が著作権印税かあ。アーティスト印税や原盤印税というのは?

一般的に曲を作っただけだと何も生まないですよね。その曲を広くみんなに届ける役割の人、例えば、実際に歌ったり演奏したりする人、レコーディング業務を行ってレコード(CD)などに音源を固定する人や会社には著作隣接権という権利が与えられます。アーティスト印税とか原盤印税はこの著作隣接権に関わるものなんですよ。

──へえ、著作権とは別に著作隣接権という権利があるんだ。

この著作隣接権には「実演家の著作隣接権」「レコード製作者の著作隣接権」「放送事業者の著作隣接権」「有線放送事業者の著作隣接権」があり、さらにこれらの著作隣接権も録音権・録画権や送信可能化権などたくさんの権利の束になっています。

──うーん、ややこしいなあ……。

著作隣接権一覧

著作隣接権一覧

図で説明すると、このような形になります。「実演家の著作隣接権」がアーティスト印税に関わる部分です。諸説あるんですが、「実演家の著作隣接権」と「レコード製作者の著作隣接権」を合わせて原盤権と呼ぶことが多いようです。実演家は曲を歌ったり演奏したりする人──アーティストのことが多く、レコード製作者はレコーディング費用を出した人──最近はDTMで制作してアーティスト個人が保有するケースもありますが、レコード会社が多いのかなと思います。

──あれ? アーティスト印税と原盤印税はお金が発生する場所がかぶってますよね。利用したい人は二重に支払わなきゃいけないんですか?

例えばレコード会社Aから出ているCDの曲を利用したい場合、著作権はJASRACに、原盤権は実演家やレコード製作者に許諾を取っていただく必要があるんですね。でも、利用希望者が実演家=アーティスト本人に連絡を取るのは現実的ではないですよね。なのでアーティストは「実演家の著作隣接権」をレコード会社に譲渡して一任し、その代わりにレコード会社からアーティスト印税として受け取るという契約が多いようです。諸説あると言ったのは、原盤権も印税と同様に法律用語ではなく業界慣習として使われている言葉なので、解釈が人によって違う場合がありまして。

──質問です! 「およげ!たいやきくん」の歌唱を担当した子門真人さんはアーティスト印税が支払われなかったって聞いたことがあるんですけど、それはどういうことなんですか?

元気よく質問するキニナル君。

元気よく質問するキニナル君。

「実演家の著作隣接権」をレコード会社に譲渡するときに買取契約を選択してギャランティを受け取り、印税契約をしなかったということだと思います。例えばシンガーソングライターがレコーディングする際のバックミュージシャンも実演家にあたりますが、業界慣習的に買取契約になることが多いようです。

──へえ。それにしてもいつ曲がヒットするかわからないから、アーティスト印税が支払われないのはキツいよなあ。

CDや配信などで作品をリリースした際、作詞作曲も自分で行っていればアーティスト印税や原盤印税のほかに著作権印税も入ってくるんですよ。マネジメントやレーベルがしっかりついていれば大丈夫だと思いますが、個人で活動している音楽家の場合、私たちのような管理団体に著作権を預けていないと著作権印税をもらい損ねている可能性もあるので注意が必要です。

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パテサロ® @patesalo

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