T-Pablow「Super Saiyan1 The EP」ジャケット

ドラゴンボールラップ名曲ガイド

RZAからBAD HOPまで……ラッパーたちに愛された「ドラゴンボール」ネタの曲を一挙紹介

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「Dr.スランプ」や「ドラゴンボール」シリーズなどで知られるマンガ家の鳥山明氏が先日、惜しくもこの世を去った。その訃報には国内外から多くの悲しみの声が上がり、彼の功績が改めて称えられた。

代表作「ドラゴンボール」シリーズは、ラッパーやビートメイカーなどのヒップホップアーティストにも根強く愛されている作品だ。近年アニメ好きを公言してリリックに入れるラッパーは非常に多いが、ドラゴンボールネタはアニメの中でも使われる機会が突出している。その中でも特に「ドラゴンボールZ」の人気が高く、ゲーム系ブログ「Kotaku」の指摘によると、アフリカ系アメリカ人の男性は同作でのルーツをたどるエピソードや、「落ちこぼれ」が努力して成長するストーリーに共感を覚えるのだという。そしてそれがアフリカ系アメリカ人中心のカルチャーであるヒップホップに反映されているのである。

そこで今回はドラゴンボール関係のラインがリリックに登場するヒップホップの曲を紹介する。これらはすべて、鳥山明氏がいなかったら生まれなかったものである。

/ アボかど ヘッダ画像 / T-Pablow「Super Saiyan1 The EP」ジャケット

やはり引用機会が多い主人公

主人公である孫悟空は、やはりリリックにも引用される機会が多い。強くなるためにひたすら修行を続ける悟空の姿は、大量の曲を制作し続けるアメリカのラッパーたちの姿と重なる部分もあり、姿勢の部分でも影響を与えているのかもしれない。そんな悟空ネタのリリックをいくつか紹介する。

RZA「Must Be Bobby」

Wu-Tang ClanのRZAは、2009年に刊行した著書「The Tao of Wu」でドラゴンボールZのストーリーとアメリカの黒人男性の経験の共通点を指摘している。そんなRZAはリリックにドラゴンボールネタを入れるのも比較的早かった。2001年のアルバム「Digital Bullet」に収録されたこの曲では、「Sit in the sun six hours then I charge up like Goku(太陽の下に6時間座り、ドラゴンボールZの悟空のように力をチャージする)とラップしている。カンフー好きのRZAらしい、ドラゴンボールの「修行」と「成長」の側面に着目したラインだ。

Soulja Boy「Goku」

トレンドセッター、ソウルジャ・ボーイはやはりドラゴンボールネタを入れるのも早かった。タイトルに悟空を冠したこの曲が発表されたのは2010年。「Bitch I look like Goku(ビッチ、俺はまるで悟空みたいだろ)」「Super Saiyan swagger(スーパーサイヤ人スワッガー)」など多くのラインが飛び出す、まるでドラゴンボールネタのバーゲンセールのような曲となっている。なお、この2010年前後はドラゴンボールに限らずアニメ関連のサンプリングやリリックが増えていた時期だ。ドラゴンボールネタもやはりこの頃から増加している。

mgk「Wild Boy(feat. Waka Flocka Flame)」

マシン・ガン・ケリーことmgkが2010年に放った名曲。シングル「Hard in da Paint」のヒットで当時勢いに乗っていた、ワカ・フロッカ・フレイムとそのプロデューサーのレックス・ルーガーのコンビを迎えて制作されたパワフルな曲だ。この曲ではワカ・フロッカ・フレイムが「Suck my dragon balls, bitch, call me Goku(俺のドラゴンボールをしゃぶれ、ビッチ、俺を悟空と呼べ)」といくらなんでもワイルドボーイすぎるリリックを披露している。絶対に筋斗雲には乗れない。

Dreamville, Bas & JID「Costa Rica(feat. Mez, Buddy, Jace, Reese LAFLARE, Ski Mask the Slump God, Smokepurpp & Guapdad 4000)」

J・コール率いるレーベル、ドリームヴィルが2019年にリリースしたアルバム「Revenge Of The Dreamers III」」に収録。外部からの客演も多く迎えてセルフボーストを繰り広げるマイクリレー系の曲で、客演のスキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッドが「I feel like Goku, bitch, I need your energy(まるで悟空みたいな気分だ、ビッチ、お前のエネルギーが必要だ)」とラップしている。ライブの熱狂を元気玉の気集めに見立てた名ラインだ。

定番トピックとなった超サイヤ人

超サイヤ人はラップにおける定番のトピックの1つだ。先述した通りヒップホップにおけるドラゴンボール人気の理由は、自分のルーツを知らずに育った悟空がそれを知って覚醒するというストーリーにある。超人化したラッパーたちの名パンチラインを紹介する。

Earl Sweatshirt「Kill」

現行ブーンバップシーンをリードするラッパーの1人、アール・スウェットシャツのデビューミックステープ「Earl」より。オッド・フューチャーの正式名称がオッド・フューチャー・ウルフ・ギャング・キル・ゼム・オールだったことを再確認できるようなダークで攻撃的な1曲で、アールは自身を「Super Saiyan with ruthless slayings(無慈悲な殺戮を行う超サイヤ人)」に見立てたバトルライムを聴かせる。サイヤ人の凶暴さから生まれたラインだ。

Childish Gambino「My Shine」

俳優としての活動やオルタナティブな音楽性で知られるチャイルディッシュ・ガンビーノだが、ラッパーとしてのキャリア初期はダブルミーニングを巧みに用いたパンチライン職人として高い評価を集めた。この曲では「Everything I'm sayin', I'm super sayin' like Goku(俺が言うことは全部、悟空みたいに超言っている)」とラップしている。「Saiyan」の発音が「sayin(言う)」と近いことから紡いだスーパーなパンチラインだ。

Big Sean「Paradise」

チャイルディッシュ・ガンビーノと同時期に登場し、やはりパンチライン職人として人気を集めたビッグ・ショーン。2015年のアルバム「Dark Sky Paradise」に収録されたこの曲では、「I hit the booth and I just went Super Saiyan(ブースに行って超サイヤ人に変身)」というラインがすさまじい切れ味で飛び出す。ここで聴かせる超人的ラップスキルはまさに超サイヤ人だ。

あの地球人のように

悟空とともに修業した親友であるクリリンは、やはりラッパーのリリックにもよく登場する。悟空とは違い超人化せず、努力のみで地球人最強となった男はどんな文脈でメタファーとして使われているのか見ていこう。

Chance the Rapper「Blessings(feat. Jamila Woods)」

BLMや娘の誕生に言及したチャンス・ザ・ラッパーの名曲。ここでは「Dying laughing with Krillin saying something ‘bout blonde hair. Jesus' black life ain't matter, I know, I talked to his daddy(クリリンとともに金髪がどうのと言いながら笑って死んでいく。黒人のジーザスの命は重要じゃない、わかっている。彼の父と話した)」とラップしている。作中で何回も命を落としているクリリンをBLM運動と接続するようなラインだ。

Offset「Made Man」

Mike WiLL Made-It「Hasselhoff(feat. Lil Yachty)」

この2曲は同じ文脈でクリリンの名前が登場する。オフセットは「Laser, beam on your head like Krillin(レーザー、ビームがクリリンみたいにお前の頭を狙っている)」、リル・ヨッティは「Put red dots on his head like his name was Krillin'(ヤツの名前がクリリンだったみたいに、赤い点をヤツの頭を合わせる)」とラップしており、クリリンの頭にある赤い点を狙撃のレーザーサイトに見立てている。

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「悟空の仲間たちと血縁者」「個性豊かなヴィランたちが生んだユニークな表現」など

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