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アイドルのセカンドキャリアを考える 最終回 [バックナンバー]

犬山紙子&劔樹人がファン目線で考える“アイドルのセカンドキャリア”(聞き手:レナ)

まず変わるべきはファンのほう? アイドルに休みと学びの時間を

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Negiccoに見る、愛され続けるアイドル像

レナ T-Paletteの立ち上げ時に、Negiccoさんとバニラビーンズの2組がデビューしたんですよ。Negiccoさんのほうが芸歴は長いんですけど、そこでもやっぱり私たちのほうがお姉さんに見られて(笑)。Negiccoさんが売れて今も活動している要因として、いつまで経っても初々しいんですよね。本当にそこが真似できないというか。

犬山 わかるわかる。ほんわかしてるもんね(笑)。

 Negiccoは活動拠点を地元の新潟に置いたことで、東京の大量消費のサイクルにさらされなかったのはよかったですよね。

犬山 ファン層も幅広い印象があります。恋愛感情を持って応援する人もいれば、孫娘を見るように応援している人もいるのかもしれない。

レナ 今はアイドルに限らず地方に拠点を置くアーティストも多いですから、そう考えるとNegicco姉さんはその先駆け的存在ですよね。アイドルシーンの中で戦っていかないといけないんですけど、“すり減らす”と“戦う”は全然違うから、自分たちは時代に合っていない売り方をしていたのかなと思います。

 うーん、あの時代はアイドルの数が多かったというのもあると思う。グループ数に対して、席の数が圧倒的に足りてなかったですから。

左から犬山紙子、劔樹人、レナ。

左から犬山紙子、劔樹人、レナ。

犬山 私は60年代のファッションの自由な空気感が好きなんです。それまでのウエストを絞って足を隠すといった保守的なファッションから、ミニスカートを女性たちが自分たちのものにした時代。バニラビーンズが登場したときはすごく素敵なコンセプトの子たちだなと思っていました。

レナ ありがとうございます。コンセプトやステージパフォーマンスは作り込まれていたと思うんですけど、MCになると「なんでこんなに距離が近いんだろう?」みたいなチグハグ感がファンの方にあったのかもしれないです(笑)。

 当時は“神秘のベールに包まれたアイドル”的な売り方は難しかったですからね。

レナ そうですよね。2010年代からアイドルがテレビの中の存在から、ライブハウスに行けば会える身近な存在になった。私たちはその状況に慣れて、どこかでアイドル活動をこなしてしまっていたのかもしれないです。その中でNegicco姉さんがいつまでも初々しさを持ち続けているのがすごくて。Negiccoさんのように愛され続けているグループと、愛されたけど終わってしまったグループの違いってなんだろうと考えることがあります。

 僕はその答えはD.I.Y.にあるんじゃないかなと思っているんです。

犬山 どういうこと?

 レナさんもフリーになって今は忙しく活躍しているわけじゃないですか。だから自分でどれだけできるか、その現状に合わせた所属先を選ぶことを含めてのD.I.Y.の感覚が必要だと思う。大資本の事務所なら仕事はあるけどバーターのようなものしかないとか、小さい個人事務所なら仕事の量は少ないかもしれないけど自分が好きなことをやれるとか、その時々で自分の立ち位置を把握する感覚は大事かなと思いますね。ただ小さい頃から同じ事務所で活動していると、そこがなかなか見えづらかったりすると思うけど。

劔樹人

劔樹人

広い視野を持って

レナ アイドルって自分がどう画面に映っているかを考えるのはすごく上手なんですよ。ただ女性としての生き方はすごく不器用と言いますか。それはアイドルに限らずすべての女性に当てはまるんでしょうか。

犬山 もちろん多様だとは思いますよ。才能ってたぶん、好きなことに自然と打ち込んですごい集中力を発揮するということだと思うんです。でも芸能の世界だと特殊にはなりますよね。芸能の世界でしか得られない力もあるだろうし、そこから派生する仕事もあるとは思うんだけども、やっぱり私はもう少し学びの機会が保障されていてほしい。

 うん、結局そこに行き着くよね。

レナ 具体的にどんなことを学ぶ機会があればいいと思います?

犬山紙子

犬山紙子

犬山 それは学校での勉強もそうだし、「このことについて知りたい」とか「これをやってる時間が好き」とか微弱な“好き”から始めてもいいと思うんです。アイドル活動を通して得てきたものの中で得意なことを伸ばす方向もありだと思うんですけど、もっと可能性を広げてみてもいいんじゃないかな。たぶんアイドルが普段触れ合うのは事務所の方や雑誌社の方とか芸能ジャンルの人たちじゃないですか。もっと違う職種の大人たちと触れ合ってみると、刺激になって可能性が広がると思う。これは親目線の意見になるんですけど、実際にその仕事をしている人に会ったことがあるかないかで将来の夢に設定する際の解像度が全然違うんですよ。アイドルの子たちはそこが芸能に一本化されてしまっている感じがする。

 だからこそファンも「アイドル活動に打ち込んでいてほしい」という気持ちをもう少しマイルドにするべきだよね。アイドル本人はファンの思いに縛られて「アイドル活動以外のことに興味を持つと、応援してくれるファンが離れちゃう」と心配になると思うから。そうすると自然と将来を見る視野は狭くなる。僕としては完全に引退されるよりも、休み休みでいいから何かしらの活動を続けてもらえるほうがありがたいんですよ。レナさんの周りにいる今人生の岐路を迎えているアイドルたちも、ファンの方々は何かしらの活動を続けてほしいと思っている人が多いと思います。

しっかりと休めて学べる環境作りを

レナ 私がすごくうらやましいなと思ったのがBiSHの解散だったんですよ。どういう経緯かはわからないけど、メンバーそれぞれが得意なこと、やってみたい道に進むというのをグループに所属しながら実現することができた。しっかりと事務所と会話をして卒業する姿に「これこれ!」と思ったんです。

 BiSHの場合、モモコさん(モモコグミカンパニー)が小説を書いたり、アユニ・DさんがPEDROとして活動したりということをグループ所属時からやっていたのはよかったですよね。グループに所属しながらその先のことをやり始めるのがすごく大事だと思います。元アンジュルムの竹内朱莉さんがグループを卒業する前に、書道の個展を開催していたんですね。これが仮にグループを卒業してから始めるのだとスタートダッシュが違いますから。やっぱりグループ在籍中に自分の人生の筋道をつけておくのは大事だと思いました。BiSHはまさにその成功例ですよね。

犬山 私はつるちゃんのその話、けっこう厳しいことを言ってると思う。もちろんグループ活動をしながら新しいことに挑戦することも大切だけど、それも時間と休みがないと無理じゃない? まずはそこの解決が先だと思う。セカンドキャリアを具体的に考える前に、アイドルがちゃんと休めて学べる環境を確保しなきゃ。

 確かにそうだね。その環境を作るためにファンも事務所も考え方を変えなきゃいけない。

左から犬山紙子、劔樹人。

左から犬山紙子、劔樹人。

犬山 レナさんはバニラビーンズ時代も忙しかったでしょう?

レナ まったく身動き取れなかったですね。自分たちのグループは利益を出せていなかったので、当然お給料もなかなか上がらなくて。休みの日にアルバイトをして、売れてもいないのに1カ月休みがないこともありました(笑)。今思うと自分もその状況に甘えていたのかもしれないけど。

犬山 いやいやいや、甘えじゃないですよ! これは周りやファンが声を上げるべきことだと思います。アイドルに「自分たちで声を上げろ」というのは責任を押し付けすぎだし、周りが言わないと何も変わらない。

レナ 私は声を上げられなかった側なので、もしファンの方からそう言っていただけるとうれしいですね。

 今はアイドルの恋愛スキャンダルについてとやかく言うのは時代遅れという声もありますよね。でも、実際にそういう報道があると人気が落ちたり、結果的に収入が減ってしまうという現実もある。事務所も社会の流れで少しずつ変わってきているとは思うけどビジネスの部分もあるから、希望としてはまずはユーザー、ファンの側から意識が変わってほしいという気持ちはあります。

レナ ファンの中には「俺が育ててやってる」という考え方の人もいますけど、そのあたりの意識は変化してきているんですかね?

 もちろん変わってきてるとは思いますよ。ただ、変化のスピードは遅いですよね。

犬山 女性アイドルに同性のファンがつき出したのはいい流れですよね。それによって同じ女性として、人として見て「おかしいよね」という視点がファンの中により生まれてくるんじゃないかな。

「推しの人生を丸ごと応援したい」という気持ち

レナ 例えばアイドルが結婚して家族を持つ、ということが当たり前になればアーティストとしての息は長くなるわけじゃないですか。それってファンの方にも返ってくることですよね。

犬山 うんうん。新しい潮流を作っていけたらいいですよね。私もこんな偉そうにインタビューに応えるだけじゃなくて、SNSでもなんでも発信していかなきゃいけない。ハッシュタグ「推しを休ませろ」を付けて(笑)。

レナ それも1つの応援の形ですね(笑)。

犬山 その結果アイドルが自分の“好き”を見つける時間につながれば、セカンドキャリアにも生かすことができる。ファンの「推しの人生を丸ごと応援したい」という気持ちが大事なのかなと思います。

レナ 趣味や家庭が充実していればアイドル活動にもいい影響が出てきそう。アイドル活動だけ、となると逃げ場がなくなって心も疲れてくるだろうし。

犬山 例えば趣味で園芸を始めたら楽しくなって、将来園芸の仕事につながったりしたらいいですよね。売れる、売れないはもちろん捉われてしまうものだとは思うけれど、それよりも自分がしっくりくる働き方をするのが一番大切だと思う。

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もっと寛容になれる可能性はある

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Megu@Negicco @Megu_Negicco

インタビュー読んでいたら、Negiccoの事も話してくださっている😭✨ありがとうございます🙇‍♀️✨ https://t.co/ZVPLmXfrsz

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