超特急ユーキ “パフォーマー×演出プロデューサー” 二刀流の挑戦──「EBiDAN THE LIVE 2023」成功の奥にあったもの
EBiDANには“究極のエンタメ”を作れるくらいの能力があるはずなんです
2024年1月2日 17:00 263
スターダストプロモーションの男性アーティスト集団・EBiDAN(恵比寿学園男子部)による一世風靡セピア「前略、道の上より」のカバーが、昨年末の「第65回 日本レコード大賞」で企画賞を受賞した。ミュージックビデオの再生回数が1000万回を突破するなど大きな注目を浴びたこの楽曲で、一糸乱れぬ群舞を披露したEBiDAN。9グループ、総勢62名の集団である彼らは、1月11日よりテレビ東京で冠バラエティを持つことも決まっている。
昨今ますます存在感を強めるEBiDANが毎年行う恒例イベントが「EBiDAN THE LIVE」、通称「エビライ」だ。年に一度、EBiDAN所属の全グループが集まる機会としてファンの間で人気を博している「エビライ」だが、2023年夏に東京・国立代々木競技場第一体育館で全3公演、過去最大規模で行われた「EBiDAN THE LIVE UNIVERSE 2023」(U-NEXTで配信中)は、“新たな演出”によって例年を上回る大きな盛り上がりと一体感を見せていた。
今回の「エビライ」の演出プロデュースを担当したのは、EBiDANの最年長グループ・
取材・
「ユーキに任せたよ、エビライは」
ユーキが「EBiDAN THE LIVE」にもたらした大きな変革。その始まりは、1年前にさかのぼる。2022年8月、東京ガーデンシアターを会場に行われた「EBiDAN THE LIVE 2022」では、それまで超特急と“同期”としてEBiDANをともに牽引してきたDISH//がEBiDANを卒業。ファンにとってもEBiDANメンバーにとっても大きなトピックとなったこの出来事の裏で、ユーキは次の「EBiDAN THE LIVE」の制作チームに入ることを心に決めていた。
「DISH//がEBiDANを卒業するタイミングで、匠海(DISH//の北村匠海)やリョウガ(超特急)から『ユーキに任せたよ、エビライは』と言われていたんです。僕にとってEBiDANはルーツのようなもので、劇団として活動していた初期の頃から見てきているから思い入れもある。せっかく今、後輩のグループもどんどん成長してパフォーマンスのスキルが上がっている中で、『エビライ』はEBiDANという集団が“ドリームチーム”であることを発揮できる、特別なエンタメを追求する場所であるべきだと思っていたんです。これまでの『エビライ』には、僕の中の満足度だけで言うと『もっと力を出せるはず』という思いがありました」
ユーキが所属する超特急を筆頭に、
「僕は気にしいだから、『最近何やってんの?』と声をかけて、みんなが『エビライ』をどうしていきたいと思っているかを聞きました。結果的には『やっぱそうだよな』と思えるような意見が多かった。ステージに立つ側の気持ちは自分もよくわかるし、今後に向けた課題ももちろんあるけれど、みんなの思いは演出に反映できたんじゃないかなと思います」
「アーティスト集団」として証明すべきもの
ユーキの演出の手腕は、8号車と呼ばれる超特急ファンの間では知られたところ。長年自身のグループのライブ演出を手がけている彼は、楽曲の流れにメッセージ性を感じさせるセットリスト構成や挑戦的な企画、なじみの曲にも新たな発見を与えるような斬新な解釈を次々と盛り込むステージで観る者の驚きと感動を誘ってきた。「超特急のライブ演出は“対8号車”。ターゲットがしっかり決まっていて、そこに向かって僕たちがそのときに伝えたい思い、感じ取ってほしいことを素直に届けることを考えているんです」と語るユーキ。では、初挑戦となった「エビライ」の演出プロデュースを手がけるにあたり、彼はどんなことを意識していたのか。
「『エビライ』はそれぞれ別のグループを推す観客の皆さんが集まった空間なので、“知らない人”に対してどうアプローチしていくか?という大きな課題がありました。僕、途中でお客さんが離席してしまうようなイベントが好きじゃないんです。離席させないためにはどうすればいいか、試行錯誤したりだとか……。あとは、グループ関係なくみんなのことを好きになってもらえるように、なるべく品よくEBiDANメンバーの個性を引き立たせてあげられたらなと考えていましたね」
「パンパンパン!とリズムよく見せていきたい」。“離席させないためのテンポ感”という彼のこだわりは、ライブのオープニングパートから発揮された。2022年までの「エビライ」では出演グループが10分前後の持ち時間の中、数曲ずつを順に披露していくという構成が固定化されていたが、2023年の公演では「Communication」「Cool」「Sweet」という全3公演の各テーマに沿う1曲を各グループが持ち寄り、メドレー形式で披露していくという構成に変更。同じテーマのもと、9組がそれぞれの持ち曲を次々とパフォーマンスする流れは、各グループの音楽的な個性をより明瞭にしていた。
そしてユーキは、“それぞれのグループの個性”を提示するのみならず、EBiDANメンバー1人ひとりのスキルや特性にフォーカスすることにも力を注ぐ。制作チームに入った際、彼がまずスタッフにリクエストしたのは「ダンスと歌をしっかり見せたい」という願望だった。
「『踊れる子と歌える子、それぞれの見せ場を絶対に作りたい』と伝えたんです。どうしてかと言うと、僕らはアーティスト集団だから。『これだけ踊れるぞ、聴かせられるぞ』ということを証明すべきだと思っているからです。それに、こういう場面があるとみんなの気持ちもアガるんですよね。『俺もあの場に立ちたい』と思う子も出てくるだろうし、そうやってバチバチするのは絶対に大事。馴れ合いじゃない、いい意味で刺激し合える環境を作らないと。せっかく年に一度大集合する機会だし、ライブに深み、厚みを持たせてEBiDAN全体を熱くさせる、ということは絶対に忘れちゃいけないポイントとして意識していました」
念願のサイファー実現と「度肝を抜かれた」新星
超特急のダンスリーダーを務めるユーキ自身も参加し、間違いなく2023年の「エビライ」のハイライトの1つとなっていたのが「ダンスサイファー」のコーナーだ。この企画の発端を問うと、ユーキは2017年の「エビライ」で自身が部長を務めたパフォーマンス企画「恵比寿学園 ダンス部」を挙げ、「当時はGANMIの皆さんと一緒に作ったけど、そのときの達成感がすごかったんですよ」と振り返る。「自分たちでクリエイトしていくことこそが僕たちのエンタメだと思うし、『アーティスト活動をしてるな』って思える瞬間なんです。イチからパフォーマンスを作る作業はウエイトが大きいので、これまでの『エビライ』ではなかなか実現できなかったけど、これだけ長い間超特急の演出をしてきたし、EBiDANというものを見てきたし。スタッフの皆さんと意思疎通できる信頼関係も築いてきたから、今回このタイミングでサイファーが実現できたんだと思います。演出面で(周囲が)期待をかけてくれていることも感じたし、とにかく『やってやろう』という気持ちでした」と続けたユーキ。MCにジャン海渡(SUPER★DRAGON)、ダンサーとセッションするヒューマンビートボクサーとして田中洸希(SUPER★DRAGON)を配して行われたサイファーでは、ユーキ、マサヒロ(超特急)、アロハ(超特急)、塩崎太智(M!LK)、志村玲於(SUPER★DRAGON)、HAYATO(ONE N' ONLY)、EIKU(ONE N' ONLY)、長野凌大(原因は自分にある。)、FUMINORI(BUDDiiS)、FUMIYA(BUDDiiS)、荘司亜虎(EBiDAN NEXT)というダンスの精鋭がセンターステージに立ち、個々のスキルを最大限に解放する見応えあるパフォーマンスでオーディエンスを大いに沸かせた。
「みんなヤバいなと思いましたよ。これまでの努力をちゃんと自分のものにしていて、めちゃくちゃ成長を感じられました。その中で自分が最後に出ていく役目だったのですごいプレッシャーだったんですけど(笑)、だからこそ僕にしかできないことをやろうと思って、自分はアクロバットで攻めてみました。なんだか、後輩のああいう姿を見てしまうと『自分は裏方に回ってもいいな、この子たちを精一杯サポートしたいな』と思ってしまうくらい(笑)。それほど刺激がありましたね。中でも、僕は亜虎に一番度肝を抜かれました」
荘司亜虎は未だグループに所属していない13歳の研究生。サイファーに参加するまでは、そのダンスの才は広くは知られていなかった。そんな彼を代々木第一体育館の大舞台にフックアップした采配は「後輩たちの背中を押してあげなきゃいけない」というユーキの思いが如実に現れたトピックだった。
「サイファーのメンバーは、ダンスがうまい子だったら誰でも出てほしいと思っていたんです。そうやって考えたとき『あ、亜虎がいるな』と思い出して。彼がいたら見せ方的にも面白くなるんじゃ?なんて思って声をかけたんですけど、実際やってみたら予想をはるかに超えるくらいスター性を感じる子だったのでうれしくなりました。まだグループに入っていないのにダンスを合わせられるし、個としてはヒップホップもクランプも、いろんなジャンルを踊れるのでモンスター級。マジで世界を目指せるレベルのポテンシャルを持っているので、しっかりトレーニングしていけばこの先明るいな……って、本当にプロデューサー視点で見ちゃう(笑)。亜虎に関してはどうしても、『プロデュースしてあげたい』という目線が拭えないですね」
僕が“この立場”にいる意味
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やな @Ebidan08
超特急ユーキ “パフォーマー×演出プロデューサー” 二刀流の挑戦「EBiDAN THE LIVE 2023」成功の奥にあったもの
後輩チームそれぞれの良さを誰よりも理解していて、自らコミュケーション取って各自やりたいことを汲み取ったり超特急の演出面にも共通する心がけ感じられて最高 https://t.co/Ex3QY7a4Pp