左から渡辺未詩、足立光先生。

目指せ!フィ女子の道 第4回 [バックナンバー]

アップアップガールズ(プロレス)渡辺未詩は筋トレが嫌いだった

「筋肉はコンプレックスじゃない。私を輝かせる個性だと気付いた」

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パーソナルジムの六本木ボディプラント・ラボの代表であり、ももいろクローバーZをはじめとするアイドルや数多くのアスリートの指導実績を持つ肉体改造のスペシャリスト・足立光先生が、ゲストの女性アイドルをフィットネス女子=“フィ女子”の道へ導く連載「目指せ!フィ女子の道」。これまで足立先生がアイドルたちのフィジカルの悩み相談に乗り、オススメのトレーニングを伝授してきましたが、今回は「歌って、踊って、闘える」最強のアイドルを目指しているアップアップガールズ(プロレス)より、渡辺未詩さんが登場する特別編をお届けします。

アイドルとプロレスラー、2つの顔を持つ渡辺さんは、すでに完璧な仕上がりの強靭なフィジカルの持ち主。しかし、アプガ(プロレス)結成時より彼女のトレーナーを担当してきた足立先生いわく、当初は筋トレが嫌いだったそう。渡辺さんに変化が起きたきっかけ、筋トレに打ち込むことで得たものを、足立先生との対談を通して探ります。また、記事の後半では2人がオススメするフィジカルトレーニングを紹介。音楽ナタリーのTikTok公式アカウントではエクササイズの様子の一部を切り取った動画を公開中です。

取材・/ 土屋恵介 撮影 / はぎひさこ

アイドル兼プロレスラー渡辺未詩の自己紹介

アイドル兼プロレスラーとして、毎週リングの上で歌って踊って戦っています。アイドルとしてのアプガ(プロレス)は、2017年8月にステージデビューして、対バンイベントや「TOKYO IDOL FESTIVAL」「@JAM EXPO」などの夏フェスに出演しています。プロレスの大会でも歌を披露していて、ビッグマッチではTOKYO DOME CITY HALL、大田区総合体育館など大きな会場でも歌わせていただいく機会がありました。プロレスラーとしては東京女子プロレスに在籍していて、2018年1月に後楽園ホールでデビュー。2019年11月にプリンセスタッグ王座に就き、2022年10月に初のシングルのベルト、インターナショナル・プリンセス王座を獲りました。会場で言うと両国国技館や東京ドームなどでも試合をさせていただいたことがあり、今年はアメリカ遠征をしたりとたくさんの経験をさせてもらっています。

渡辺未詩

渡辺未詩

アイドルとプロレスラー両方の顔を持つ私ですが、個人的な話をすると、もともと大のアイドルオタクで(笑)。今はOCHA NORMAの筒井澪心さん激推しで、OCHA NORMAさんは現在47都道府県ツアーを開催中なんですけど、予定が合う限り観に行っています(笑)。アイドルを好きになったきっかけは、物心ついた頃から流行っていたモーニング娘。さんです。ミニモニ。とハム太郎を見て育った世代で、初めて買ったCDは月島きらり starring 久住小春 (モーニング娘。)さんの「バラライカ」。そのあとAKB48さんにハマり、乙女新党さんに出会ったところで、自分がアイドルオタクであることを認識しました(笑)。

アイドルの魅力はひと言じゃ語りきれないですが、キラキラした夢を与えてくれるところですね。夢や希望、愛おしさが詰まってます。プロレスとアイドルは似ているところがあると言う人は多いですが、私もプロレスをやり始めてからそれがわかったんです。歌ってるか戦ってるかの違いで、夢や希望を与えてくれる存在であることは共通していますし、応援してくださる方がいるのも同じです。

渡辺未詩

渡辺未詩

体を鍛えることに関しては、本格的にトレーニングを始めたのはプロレスラーになってからなんです。中学生のときはソフトボール部に所属していたんですが、“やらなきゃいけない部活”という感じで、その一環で筋トレをしていました。アイドルらしい細い体が好きだったので、「ホントは筋肉なんてつけたくないのに」と思いながら仕方なく。でも悔しいことに、私は筋肉がつきやすいタイプだったんですよ(笑)。当初は筋肉をコンプレックスに思っていた私ですが、その認識がプロレスを通じて大きく変わりました! 今は試合の日以外は、ほぼ毎日ジムに来てトレーニングをしています。

渡辺未詩×足立光先生 対談

筋肉にまつわるすべてに抵抗があった

足立光 2017年にアイドルとプロレスラーの両方を目指すというコンセプトでアプガ(プロレス)のオーディションが行われて、僕は審査員としてそのときから関わっていたんですけど、未詩を初めて見たときに「この子は逸材だな」と思いました。ホントに目立ってたんですよ。テストであえて難しい片手支持の側面プランクをやらせたんですが、1人だけまったく動かなかったんです。バランス感覚もいいし身長も理想的で、将来的にすごくよくなりそうだという予感がありました。ただ、晴れてオーディションに合格したものの、いかんせん筋トレが嫌いで(笑)。

左から渡辺未詩、足立光先生。

左から渡辺未詩、足立光先生。

渡辺未詩 いやー、筋トレは嫌いでした(笑)。細い体型の子がアイドルとしての理想像だし、加入した頃はまだ高校生で、当時の自分としては部活でついちゃった筋肉がコンプレックスでしかなかったんですよ。「どうやってこれを落とそう?」と考えてたのに、筋トレをしてさらに筋肉をつけるのが嫌で。あと、今でこそコンビニなどでもプロテインが当たり前に売ってますけど、プロテインはムキムキの人が飲むものというイメージが世の中的にも強かったと思うんです。プロテインを飲むことも筋トレをすることも、筋肉にまつわるすべてに抵抗がありました。

足立 だから最初の頃は「才能があるから筋トレやりなさい」と言っても、なかなかやってくれなかったんです。僕としては、プロレスデビュー前の段階でメンバー全員のビシッとした腹筋をお披露目したいという思いがあったんですが、みんな乗り気じゃなくて。ごはんを普通に食べちゃうし、「食事制限しなきゃ」と伝えたら泣くし(笑)。

渡辺 ホントその通りでした(笑)。

足立 未詩はジムに来ても、ろくに挨拶せずロッカーからなかなか出てこなかったんですよ。のちのち聞いたら、「ロッカーでよく泣いてた」と言ってましたね。それくらい最初は筋トレに抵抗があったみたいです。

アップアップガールズ(プロレス)加入当初の渡辺未詩。

アップアップガールズ(プロレス)加入当初の渡辺未詩。

渡辺 プロレスデビューの1カ月くらい前はほぼ毎日泣いてました。先生に「もうすぐデビューなのにわかってる?」と何度も言われて。当時は足立先生のことがトラウマでまともに目を合わせられず、挨拶もほぼできない状態でした。

足立 でも、キツく注意しても絶対に練習はサボらないのがすごいなと思いました。1回もサボってないよね?

渡辺 サボってないですね。それは部活で根付いた「嫌でもサボっちゃいけない」という精神と、「デビューするために、がんばってオーディションを受けてここに来た」という思いが自分の中にあったからだと思います。でも、そういう気持ちはありつつ、マイナスな気持ちのままプロレスデビューを迎えたというのが正直なところです。

足立 彼女はもともとプロレスに憧れてオーディションを受けたわけじゃないし、そもそもアイドル活動とプロレスを同時にやるという前例がないから、僕やグループの運営がいくら口で説明しても理解できないんですよ。今の後輩メンバーは、未詩たちが道を作ったから進む先が見えてるけどね。

初期のアップアップガールズ(プロレス)。左端が渡辺未詩。

初期のアップアップガールズ(プロレス)。左端が渡辺未詩。

渡辺 初期メンバーのほとんどは、ホントにプロレスを知らずに入ってきたんです。

足立 アイドルがメインで、プロレスはちょっとだけやるって認識だった?

渡辺 そもそもプロレスが何かもわかってなかったし、「戦うってどういうこと?」って感じでした。当時の私がプロレス関係で知っていたことは、ももクロ(ももいろクローバーZ)さんがプロレスラーの方と絡んだり、AKB48さんが「豆腐プロレス」というプロレスをテーマにしたドラマに出演されたりということくらいで、すごくふんわりした知識とイメージしかなかったんです。「プロレスっていうのはかわいい子でも関われるんだな」くらい。

足立 オーディションを受けるにあたって調べたりはしたの?

渡辺 しました。でも、プロレスについて検索すればするほど余計にわからなくなっちゃって(笑)。そんな状態で、アプガ(プロレス)のオーディションに合格したんです。「やったー! ついにアイドルになれる!」と思っていたら、毎日道場で埃にまみれながら腹筋をする日々で(笑)。「私たちは何してるんだろう?」「ステージでスポットライトを浴びて輝きたかったのに、なんでこんなことになってるんだろう?」と思ってました。それプラス、自分の筋肉のコンプレックスもあり、筋トレに対して前向きになるまで1年かかりましたね。

“プロレスラー渡辺未詩”が生まれた瞬間

足立 最初はホントに抵抗があったけど、どんどん意識が変わっていったよね。

渡辺 プロレスデビューはしたものの、最初の1年は「筋肉はつけたくないけど、つけなきゃいけないな」という葛藤があって。でも、そうしてる間にプロレスの楽しさに気付けたんです。

足立 それはいつ頃?

渡辺 2018年6月に新宿FACEで「アップアップ東京女子(プロレス)(仮)~全員一緒にアッパーキック!~」という、ライブとプロレスを一緒にやるイベントに出たときですね。そのときに、当時から圧倒的エースと呼ばれていた東京女子プロレスの山下実優さんとシングルマッチをしたんです。ボコボコに蹴られて負けてしまったんですけど、そのあとライブで披露した「アッパーキック!」が最高に楽しかったんですよ。ものすごい高揚感があって、しかも「とんでもない強さの山下さんをいつか倒したい!」「私はプロレスをもっとがんばりたい!」という気持ちが芽生えました。

足立 “プロレスラー渡辺未詩”が生まれた瞬間だね。そのあとはどうだった?

渡辺 歌って踊って戦う楽しさを知ってプロレスに前向きになれたあと、2018年12月31日に初めての単独ライブ「アップアップガールズ(プロレス) プロレス女祭り」を開催することが決定して。初ワンマンに向けた1カ月、メンバーそれぞれが目標を立てることになったんですけど、そのとき私に与えられた目標が肉体改造だったんです。

左から渡辺未詩、足立光先生。

左から渡辺未詩、足立光先生。

足立 僕と音楽プロデューサーのmichitomoさんがやっていたネットラジオに出て、「筋トレがんばります!」と宣言していたけど、そのときは泣いてたよね。「なんで言っちゃったんだー!」って(笑)。

渡辺 ラジオなのにカメラまで回していて、逃げられない状況だったんです(笑)。それで「肉体改造します!」って宣言しちゃった。ついに筋肉と向き合うときが来たかと思って、その日は泣きながら帰りました(笑)。でも、プロレスを前向きにがんばりたい気持ちはあったし、私が輝くためにはこの筋肉を生かすのが一番だってこともわかってはいたので、宣言した3日後くらいには、とにかく毎日ジムに行こうという意識に変わってました。そこからですね、筋トレを前向きにできるようになったのは。

足立 そのあと、両国で初めて大きな舞台に立ってタッグベルトを取ったじゃない(2019年11月3日に東京・両国国技館で行われた「Ultimate Party 2019~DDTグループ大集合!~」にて、辰巳リカとのタッグ・白昼夢でプリンセスタッグ選手権の王座を獲得)。そこで普通にアイドルをやっていたら得られない、特別な感覚を知ったんじゃないかと思います。

渡辺 確かにそうかも。

足立 そこからさらに1段階意識が変わったと思う。前は事務所にスケジュールとして決められて仕方なくジムに通っている感じだったけど、自分から率先して来るようになった。時間があれば1日2回来るし、試合の翌日でほかのメンバーが休んでいても、遠征帰りで疲れていてもジムに通って。そうして僕との信頼関係も生まれて、今では道場とジムの鍵を持っています(笑)。

渡辺 かなりジムに居座ってますね(笑)。ホント、2019年11月の両国は大きかったです。2018年の暮れのワンマンに向けての期間で意識が変わったとはいえ、まだアイドルとプロレスを両立することの正解がわからない状態が続いていて。でもその1年後に両国国技館という、普通にアイドルをしていたら立てなかったかもしれない場所に立てて、しかもタッグのベルトを取ってチャンピオンになれた。その瞬間に「あー、たくさん受けてきたアイドルのオーディションに落ちたよかった! アプガ(プロレス)でよかった!」と思えたんです(笑)。

足立 アイドルだけじゃなくプロレスラーにもなれてよかったと。

渡辺 はい。「オーディションにいっぱい落ちたのも、ここに至るための運命だったんだ」「最初はプロレスも筋トレも嫌だったけど、それもプロレスラーとしてこの景色を見るための過程だったんだ」ってすべてを前向きに捉えられました。ベルトを持ったからにはもっと極めたいと思いましたし、自分が輝けるのはパワーだなって。より筋肉に磨きをかけて、重いものを上げられる体を作ることを意識し始めました。

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宮本佳林さんに筋肉で認知をもらった

読者の反応

渡辺未詩🎀Miu Watanabe🌷 @uug_p_miu

私の筋トレが嫌いなところから今に至るまでのことを聞いていただきました!!!
ぜひ!筋トレ好きな方も筋トレしない方も筋肉コンプレックスな方もプロレスアイドル好きな方にも!!たくさんの人に読んでもらいたいです!!!🎀💪 https://t.co/hJ6YqFYRiB

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