ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390 EPISODE.3(後編) [バックナンバー]
韻にこだわり続ける“RHYME SAVER”:FORK
「フリースタイルダンジョン」で編み出したバトルスタイル
2023年11月22日 19:00 13
ラッパーの
後編では、バトルにほぼ出ていなかった期間のことや、“RHYME SAVER”の異名を持つモンスターとして活躍した「フリースタイルダンジョン」でのエピソードを紹介する。
取材・
般若からの電話で「フリースタイルダンジョン」に参戦
──FORKくんは、2006年の「ULTIMATE MC BATTLE」(UMB)での勝者インタビューで「来年出るかわからない」と話し、実際それ以降はバトルにはほぼ出ていないですね。
FORK 大きな大会だと韻踏合組合の「ENTER」とか、縁の深い友達のやってるイベントに出るくらいで。バトルに関してはずっとやめどきを探してたし、UMBで優勝したときは「よし、これで誰にも文句言われずにやめられる」と思いましたね。
KEN THE 390 音源作りとバトルを全力で両立させるのは負担が大きいですよね。
FORK それに、当時はフリースタイルやバトルに今ほどの可能性はなかったじゃん。「MCバトルで食える」なんて考えられないし、バトルに出ることと労力やプレッシャーの割が合わなかった。賞金の額も今とは全然比べ物にならないくらい少なかったし、バトルの日までの時間の過ごし方が嫌すぎて、これはやってられないな、と。やっぱりライブと音源が“音楽で食う”には一番近かったし、当然そこを目標にするから。
──大きなイベントでは2011年の「B-BOY PARK」(BBP)に出ていますね。
FORK あれはオファーがあったんですよね。あのときに初めてバトルでギャラをもらった。
KEN バトルに出てギャラをもらうなんて概念はなかったですもんね。
FORK 最初は二つ返事で断ったんですよ。
──ははは! “二つ返事”のあとに否定のワードがきた(笑)。
FORK 連絡くれたのはCRAZY-Aさんだったんですけど、なんの可能性も残さず食い気味に断って。そしたら「ダメ」って言われて(笑)。
KEN 拒否に拒否で返すのもすごいな(笑)。
FORK 「ギャラ10万払うから」ということで「じゃあ出ましょう」と。結果、決勝でPONEYに負けたけど、大きいバトルに出たのはそれぐらい。
──だから、MCバトルとは完全に距離を置いたと思っていたので、ICE BAHNとして「フリースタイルダンジョン」に3rd seasonRec3-2(2017年1月18日放送)から登場し、その後はFORKくんが隠れモンスターとして、そして2代目モンスターとして参戦したのには驚きました。
FORK その前に1回審査員として出てるけど(2nd Season Rec 1 / 2016年4月20日放送)、バトルする側として出たのは3rd Seasonが最初。初めはサイプレス上野から「ある人に電話番号を教えていいですか?」って連絡があって、それでOKしたら、般若さんから「隠れモンスターをやってほしい」と連絡があって。
KEN 本当にFORKくんと般若さんのバトルでの縁は深いですね。
FORK それで「般若さんからの連絡だし」と快諾して、番組制作側と折衝していく中で、まずはICE BAHNとしてチームで出ようという話になったんです。
ラスボスまでの最終関門みたいな存在に
KEN モンスターでいえばR-指定は、FORKくんがバトルに積極的じゃなかった時代にUMBを制していたラッパーでしたけど、例えばRみたいな次世代のバトルスターについてはどう思ってました?
FORK 世代全般的なことは言えないけど、Rに関しては俺らの世代がやってきたバトルの延長線上にありつつ、それを自分なりのフィルターを通してアウトプットすることで、着実に進化させた存在だなと。鎮座DOPENESSのような明らかに違う角度の存在というより、これまでのバトルの蓄積上にある、オーソドックスなスタイルを極めた存在だと思った。それは会場や現場じゃなくて、映像を通して彼のバトルを観てたから、余計にそう感じてたのかもしれない。
KEN 現場で観たら感触が違った?
FORK 生で戦ったら「強かった」。画面からはわかりにくかった負けん気がすごく伝わってきた。もともと持ってる天性のものに加えて、経験や練習を重ねる中でそれを補強してきた部分もかなりあると思うし、努力も含めた天才なんだなと感じたね。
──2018年3月から放送された「初代モンスター VS 2代目モンスター」(5th Season Rec3)でのFORK VS R-指定戦は、お互いのストロングポイントが強く出たバトルになったと同時に、「布団が吹っ飛んだ、これはダジャレだ」から始まる一連など、パンチラインも数多く生み出されました。
KEN あの試合も含めて、FORKくんがダンジョンで見せたバトルは、これまでのスタイルをもう一段バージョンアップさせたと思うんですが、本人的にそれは意識的なものだったんですか?
FORK 意識してた。オファーがあってから出演するまで3カ月ぐらいスパンがあったんだけど、その間にあったダンジョンの収録はすべて観に行ってたし、「あの中で自分が出て行って言えることはなんだろう」ということを考えて、そのうえでの答えが、ダンジョンでのバトルだったと思う。ここで俺が見せるべきやり方、言えること、俺だからこその説得力、俺なりの「ダンジョン」へのカウンターの打ち方……それを探しながら、番組の観覧をしてた。実際、チャレンジャーのテンションは高いし、熱いラップになりがちだから、自分のスタイルを対比させるためにも、より平熱で間をしっかり取った、言葉をしっかり落とすラップを心がけてた。そして収録では「自分の持っているスキルの中で、この場には何がハマるのか、どう見せるほうがいいのか」をずっと考えてて。
KEN めっちゃ分析的ですね。それを体現するのにはスキルも裏打ちされなきゃいけないから、普通の人は狙ってできることじゃない。
FORK 「ビビってた」のもあるかな。「俺はこれから何をやるのかな」ということをイメージする作業をしないと怖かったから。
KEN 「なんとかなるだろう」みたいな気持ちはなかった?
FORK ないね、まったく。そんな気持ちでバトルに出たことは一度もないし、「ダンジョン」は特にひさびさのバトルなうえにテレビ放送だから、とにかく不安だった。
KEN でもFORKくんは特に最初の何戦かは無敵だったし、ばっちり当時の「ダンジョン」にハマってましたよね。
FORK 最初が負けなしだったのは大きかったかもね。やっぱりボロは見せたくないし、いいとこを見せたいじゃん。初代のモンスターでいえばR-指定みたいな、ラスボスまでの最終関門みたいな存在になりたいと思っていたし。
バトルも1つの作品
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後編も公開されました!
改めてFORKくんの分析力とストイックさに驚かされました。 https://t.co/dckrSjlG7J