葉山翔太

私と音楽 第34回 [バックナンバー]

葉山翔太が語る女王蜂

アヴちゃんにはなれないけど、女王蜂の音楽で強くなりたい

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各界の著名人に愛してやまないアーティストについて話を聞く本連載。第34回となる今回は、音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」をはじめとした作品に出演する声優の葉山翔太が登場してくれた。この記事では葉山に、自身のライブ活動において影響を受けているという女王蜂の音楽との出会いや惹かれた理由などについて語ってもらった。

取材・/ 酒匂里奈 撮影 / 後藤壮太郎 ヘアメイク / 仙波夏海

女王蜂の曲とアヴちゃんの声に救われた

僕が女王蜂と出会ったのは「ヴィーナス」(2015年2月発売のシングル)がリリースされた少しあとくらいです。YouTubeでこの曲のミュージックビデオを観て、「ヤバいバンドがいるな」と思いました。

女王蜂『ヴィーナス MUSIC VIDEO (FULL VERSION) 』

そのあとに「催眠術」(2018年10月発売のシングル)を聴いて、「カラオケで歌いたい!」と思ってから、さらにどっぷりハマっていきました。今まで聴いてきた中でも、女王蜂の音楽は特に印象に残ったんです。感情を発散しているというか、自分をさらけ出しているように感じて。僕は東京事変や椎名林檎さんも好きなのですが、昔からがなりに近いようなエッジィな歌声に魅かれることが多いんです。女王蜂の楽曲は歌詞や演奏ももちろん魅力的なのですが、僕はまずアヴちゃんの歌声に魅かれたというか、救われました。おこがましいですが自分の声と共鳴する部分を感じて。

女王蜂 『催眠術(Hypnotize)』Official MV

僕はこの業界に入る前、自分の声がコンプレックスだったんです。変声期で自分の声が変わってしまうことに恥ずかしさのようなものを感じていて、なんとしても元の声を取り戻したかった。そんな頃に志方あきこさんがオペラ発声について話されているのを聞いて、自分で実践していたんです。声に対してのコンプレックス自体は、そうやっていろいろな発声方法を試す中で徐々に解消されました。その一方で、遊び感覚だけど試行錯誤しながら身に付けたこの発声方法をどこかで生かせないかなとフラストレーションを抱えていたのですが、そんなときにアヴちゃんの歌声と出会って。「自分が身に付けてきた発声方法だ……!」と衝撃を受けました。それからカラオケで女王蜂の曲をたくさん歌うようになって。自分が今まで身に付けたものを出すことができて、僕は女王蜂の曲とアヴちゃんの声と言葉に救われました。

歌詞で言うと「催眠術」が特に好きです。普段生きている中で狂気ってなかなか表に出てこないし、触れない感情だと思うんです。僕は芝居の中でそれを表現できるのがいいなと思っているんですけど、同じように「催眠術」ではそういう直接的な感情や言葉が表現されていて、グッときました。女王蜂の歌詞は日頃の鬱憤を晴らしてくれるような力強さがあるものが多くて、そういう部分にも魅力を感じます。強い感情を曲にできる力、音に変えられる力ってすごいなと思いますし、それはお芝居に通じる部分があると思うので、僕にもその力が欲しいなと思っちゃいますね。

蜂モチーフの指輪をつけた葉山翔太。

蜂モチーフの指輪をつけた葉山翔太。

聴いていて好きなのは「Q」。歌詞の内容がアヴちゃんの実体験なのかとか、詳しいことはわからないんですけど、崩壊気味な家庭環境の中で必死に生きようとする主人公の姿が描かれていて。人間のドロドロした部分が細かく描写されているので、聴いていてつらくはなるんですけど、アヴちゃんの荒い吐息が入っていたりして、芝居の音声を聴いている感覚になるんです。それくらい情景が思い浮かびます。

女王蜂「Q」Music Video(Fullver.)

アヴちゃんや女王蜂が発信しているものを自分の中に取り入れたい

「火炎」をカラオケで歌うとき、毎回ミュージックビデオの冒頭シーンで一気に引き込まれるんですよね。自分も一緒にスポットライトを浴びている気持ちになるというか。歌っていると「自分はまだまだできる」「こんなもんじゃ終われない」みたいな、そういう気持ちを燃え上がらせてくれる曲です。

女王蜂 『火炎(FLAME)』Official MV

あと「スリラ」のMVは一時期ずっと観ていました。チアのような衣装が印象的で。最近だとぁゔち(“地獄のアイドル”。アヴちゃんに代わって女王蜂のボーカルを務めたことがある)の衣装も印象に残っています。

女王蜂 『スリラ』(OFFICIAL MUSIC VIDEO)

「THE FIRST TAKE」の「メフィスト」、すごかった……。白背景だから衣装がより映えるのかな。あと「THE FIRST TAKE」では「BL」の衣装も。アヴちゃんが着ていたサイドがカットされたデザインのトップスとグローブがめちゃくちゃカッコよかったです。そういえば「BL」は、僕が大好きなBL作家のはらだ先生がジャケットのイラストを描き下ろしていて、めちゃくちゃテンション上がりましたね。

僕自身、ジェンダーレスな服やメイクが好きですが、ビジュアル面に関してはそこまで女王蜂やアヴちゃんから影響を受けてはいなくて。そういう嗜好は個人のものなのかなと。アヴちゃんはアヴちゃんだし僕は僕だし。でも、僕はアヴちゃんにはなれないけど、アヴちゃんや女王蜂が発信しているものを自分の中に取り入れて、自分自身を強化したいという気持ちはありますね。

女王蜂 - メフィスト / THE FIRST TAKE

心の赴くままに、ハートで歌えば

印象に残っているのが、カラオケに行ったときにたまたま流れていた動画。アヴちゃんが「バイオレンス」の歌い方について話していたんです。この曲の「バイオレンス」という歌詞は、かわいらしく歌うんじゃなくて獰猛に歌うんだというのを実演を交えて説明されていて。そのあと「女王蜂の曲をうまく歌うためにはどうしたらいいですか?」という質問に「心の赴くままに、ハートで歌えばいける」と答えていたのにグッときました。そのあとに大好きな「火炎」を歌ったんですけど、高音パートの声がパッと出たんですよ。アヴちゃんの言葉を素直に受け入れたら、自然と声が出たというか。



アヴちゃんは曲によって歌い方が全然違うので、その引き出しはどこから来ているんだろうと常々疑問なんです。聴いてきた音楽や考えてきたこととか、そういうものから表現されているんだと思いますが……そこに合わせられるメンバーの方々もすごいというか、通じ合っているんだろうなと思います。そういうメンバー同士のつながりがうらやましいですね。僕も「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」という作品で、ナゴヤ・ディビジョン“Bad Ass Temple”のメンバーを演じている竹内(栄治)さんや榊原(優希)くんとライブのたびにおしゃべりしたりごはんを食べに行ったりはしますけど、やっぱりずっと一緒なわけじゃなくて、ライブがある時期に集まる感じなので。バンドは大変なときもうれしいときも一緒に過ごして、さまざまなことを乗り越えていける関係だから、素敵ですよね。

ナゴヤの曲「開眼」はどんどん成長していってるなと思うんです。作ってくれたMOROHAのアフロさんも「ライブのたびにどんどんよくなっていくよね」とおっしゃってくださって。そういうメンバー同士で曲を成長させていく力や、ライブでの引力みたいな部分は、女王蜂から影響を受けている気がします。あとナゴヤの、それぞれの個性は強いけどチームとしてはまとまっているところや、パワフルでギラついている感じは、勝手ながら女王蜂のメンバーと似た雰囲気を感じるというか。アヴちゃんが作る楽曲と相性いいんじゃないかなと思うんですけど、仄仄に先を越されちゃったので……(笑)(アヴちゃんは薔薇園アヴ名義で、「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」のEP「The Block Party -HOMIEs-」に収録されている邪答院仄仄「おままごと」の作詞作曲を担当)。「おままごと」を聴いて、繰り返されるフレーズや仄仄の笑い声が頭の中から離れなくなっちゃいましたね。あとは……アヴちゃんが仮歌を担当されているんじゃないかなと思うので、デモ音源が聴きたい!

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人間を捨ててライブをしている

読者の反応

葉山翔太 @H_shota_axl

僕なりの好きをお話しさせて頂きました!
女王蜂もアヴちゃんも龍宮城も観て聴いて、いろんな刺激頂いています。
叫んで生きてみたい。 https://t.co/KiXh4XnS6y

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